クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

栗橋の八坂神社は“コイ”が神使?

2016年07月10日 | ふるさと歴史探訪の部屋
旧栗橋町(現久喜市)の夏祭りは“八坂神社”の祭りだ。
天王さまとも呼ぶ。
八坂神社は利根川に架かる利根大橋のそばに鎮座している。

この神社に足を運び、まず目に付くのは神使だ。
神社というと、本殿前の“狛犬”が参拝者を出迎えるのが多い。
が、八坂神社の場合は“コイ”になっている。

魚のコイだ。
それが2体、本殿前におわしている。

狛犬のようないかめしさはない。
このコイは霊験あらたかなもので、無病息災に効くという。
コイに触れ、自分の体をなでるよい。
そのほかに家内安全、商売繁盛、縁結び、
学業成就といった幸も運んでくれるそうだ。

なぜ、神使がコイなのだろうか。
これは八坂神社の創建に由来する。
旧栗橋町は利根川沿いに位置し、しばしば大水に襲われていた。
近くに横たわる宝治戸池は、
大水によって決壊したおっぽり(落堀)と言われる。

慶長年中のことだ。
降り続いた雨によって利根川は満水状態となり、
村人は堤が決壊しないようその補強工事に追われていた。

するとそのときだった。
神輿とおぼしきものが悠々と流れてくることに気付く。
村人たちは覚えず目を見張った。
神輿の周囲を泳ぐコイとカメに視線を釘づけにされた。

1匹や2匹どころではない。
あまたのコイとカメが神輿を囲むように泳いでいたという。
これは霊験あらたかな神輿に違いない。

村人たちは神輿を引き上げ神として祀る。
これが八坂神社の興りとなった。
元は牛頭天王社と名乗ったが、明治期となって現在名に変わった。
ゆえに、八坂神社の神使はコイというわけだ。

利根川沿いの地域ならではの逸話と言える。
漂着したものを祀り、神社となるパターンは多い。
現在は色々な幸をもたらしてくれる八坂神社だが、
以前は疫病退散に最も効いていたのかもしれない。

コイは貴重なたんぱく源でもある。
釣り上げたコイはキャッチアンドリリースはせず、
おいしくいただいていた。

しかし、八坂神社の氏子にとってコイは尊い神使。
食することには抵抗があったのだろう。
とはいえ、貴重なたんぱく源。
そのため八坂神社の祭り月にコイを食すのを避けた。
以前は6月が祭り月だったため、
年齢性別を問わず、氏子たちは誰もコイを食さなかったという。


八坂神社(埼玉県久喜市)


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