クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

夜の森から“ガッカラ”と音が響く? ―我空薬師―

2016年06月21日 | 奇談・昔語りの部屋
行田市長野に“ガッカラ薬師”と呼ばれるお堂がある。
「ガッカラ」に漢字を当てると「我空」。

お堂の中には元禄14年の薬師さまが祀られているが、
元は何もなかったという。
というのも、弘法大師がこの地にやってきたとき、
大師は1本の木を植えられた。
そして、その木の中に薬師さまがお祀りされている、と話した。

大師が去ったあと、大師が植えた木は煌々と光り輝いていたという。
木の中に祀られた薬師さまである。
誰もそのお姿を目にしたことはない。
仏画に描かれることも、仏像に現わされることもなかった。

現在は住宅街となっているが、かつては雑木林が広がっていたらしい。
夜になると、どこからともなく「ガッカラ、ガッカラ」と石臼を引く音が聞こえた。
そのため、いつしか“ガッカラの森”と呼ぶようになった。
そして、その森に祀られている薬師さまは、
“ガッカラ薬師”と言われるようになったという。
これが「我空薬師」と呼ばれる所以である。

ちなみに、このお堂のそばには“薬水の井戸”がある。
木の根元から湧き出た水で、これを使って入浴すると病気が治ると言われた。
そのため、江戸時代には遠方から長野村まで足を運ぶ者が後を絶たないほどだった。

いまもその井戸は現存している。
しかし、衛生面からか、飲料には利用しないでほしいとの立て札がされている。

現在、かつて石臼の音が聞こえたという森はない。
お堂の周囲は住宅が林立し、少し行けば工業団地もある。
経済成長による時代の移り変わりは凄まじい。

しかし、ガッカラ薬師に足を運べば、
参拝者はいまも後を絶たないことを感じさせる。
地域でも厚く信仰され、守られているのだろう。

ぼくは生まれつきのものがある。
「薬水の井戸」の傍らにあるポンプで水を汲む。
それを手にすくうと、生まれつきのところにそっと当てた。


埼玉県行田市

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2 コメント

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Unknown (林区自治会長 高島茂夫)
2023-06-22 13:55:44
 令和5年8月13日 今まで、コロナ禍で中止しておりましたが、4年ぶりに我空薬師祭礼が、行なわれます。
 是非、皆様のお越しをお待ちしております。
返信する
高島茂夫様 (クニ)
2023-06-23 23:37:22
コメントありがとうございます。
また、我空薬師の祭礼の再開、おめでとうございます。
コロナが収束に向かったのは、薬師様のご霊験のおかげかもしれません。
薬師様が人々に親しまれ、また末永く地域を守ってくださることをご祈念申し上げます。
返信する

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