クニの部屋 -北武蔵の風土記-

郷土作家の歴史ハックツ部屋。

髪を切った“小西真奈美”の影響力は? ―日本人女性像―

2006年11月26日 | レビュー部屋
女優の「小西真奈美」がデビュー以来初のショートカットになったと、ヤフーニュースで報じられていました。
小西真奈美と言えばフジテレビの「ココリコミラクルタイプ」をはじめ、映画『天使の卵』『UDON』などに出演し、
お酒好きな人には“ぐびなまの女”のイメージが強いかもしれません。
長い黒髪が素敵な小西さんでしたが、今回髪を切ったのは、
来年スタートするドラマ「きらきら研修医」の役作りをするためなのだとか……
来月放送の韓国映画「私の頭の中の消しゴム」の声優も務め、
今後の活躍が最も期待されている女優です。

さて、女性が髪を切るというのはとても意味深に思えますが、
世の男たちは女性の髪をどのように見てきたのでしょうか?
つい先日、とある女性に、
「あなたの描く女はみな髪が長い」という指摘を受けました。
男が連想する女のイメージは、おおかた髪が長いのだそうです。
「つまりあなたも髪の長い女性が好きなんでしょう?」
そう言ったその人はとても髪の短い人。
男と女の描く女性像はまるで違うのだと言います。
確かにそうなのかもしれません。
好みで言ったらぼくはどちらでもよく、
髪の長い人にも短い人にも両方に恋をしてきました。
しかし、イメージする女性像は“長い黒髪”だったと思います。
これはいわゆる紋切型で、古い固定観念の何ものでもありません。

日本文学においても、日本人男性が描く女性はほとんど“長い黒髪”です。

 姉様はこちらへ背なかをむけて髪をとかしているところだった。
 長い髪がさわりとほどけて、
 肩から豊に波うって後ろへすべっている。(中勘助『銀の匙』)

 丈にも余る緑の黒髪後にゆりかけたる様は、舞子白拍子の媚態(しな)あるには似で、
 閑雅(しとやかに)臈長(ろうた)けて見えにける。(高山樗牛『滝口入道』)

 彼女の紺色のハーフコートの上にもつれるようにたれた髪は、
 彼女の豊かな背を飾っていた。(野間宏『顔の中の赤い月』)

 髪のいと黒く艶かなるを、元結かけて背に長く結びて懸けつ。(泉鏡花『照葉狂言』)

ここに引用しなかった谷崎潤一郎や川端康成、夏目漱石にしろ、
表現の違いはありますが、おおよそ“長い黒髪”が前提となっています。
当時の女性の髪型にもよるのでしょうが、
男のイメージする“女性像”は、文学がその一端を担いでいたとも言えるでしょう。
この固定観念は、現代もどっしりと根を下ろしているのかも知れません。

今回、長い黒髪を30㎝ほどバッサリ切ったという小西真奈美と、
それを報道する各メディア。
髪が短くなったことで、彼女のイメージは変わるのでしょうか?
男はどう捉え、女はどう見るのか……
話題の人である所以に、その影響力も大きそうです。

参考資料
中村明編『人物表現事典』筑摩書房

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