「プロポーズ大作戦」の“ソクラテス”はどんな存在？

山下智久・長澤まさみ主演の「プロポーズ大作戦」が迎えている終わりのとき。
誰もが心の奥に持つノスタルジーを刺激する内容です。
過去には２度と戻れないけれど、もしやりなおせたら……。
そんな空想をドラマ化し、
ある種カタルシスを埋めてくれる内容かもしれません。

好きな人に気持ちをずっと伝えられない主人公“岩瀬健”（山下智久）。
かつては健に恋心を抱いたけれど、
“多田”（藤木直人）と結婚する“吉田礼”（長澤まさみ）。
何ら難しい問題は含んでいません。
足を投げ出して郷里の運動会を眺める太宰治のごとく、
何も構えず物語を見ることができます。
要は、健が過去に戻って多田から礼を奪えばいいだけ。
ノスタルジックに描くこのドラマに共感を覚える人も多いでしょう。

ただひとつ、謎めいているのは「ソクラテス」と呼ばれる男（渡部豪太）。
彼の立ち位置はよくわかりません。
なぜ作者はこの人物を出したのでしょう。
健や礼たちが組む「仲間」の対局として、
孤高のソクラテスを登場させたのか……。
出番も５分あるかないかで、健たちと密接に絡んでくるわけでもなく、
かと言って遠すぎるわけでもなく、独特の存在感を放っています。
その立ち位置は“妖精”（三上博史）に似ているかもしれませんが、
何の役割をになっているのか不可解です。

一方、サブキャラで独特の存在感を持っているのは、
彼らの元担任の伊藤先生（松重豊）
彼は“先延ばし”を象徴している人物。
陶芸家を目指していますが、
いつも先延ばしして別のことばかりをしています。
この伊藤先生は毎度おもしろ可笑しく描かれていますが、
ドラマの中では重要なメッセージ性を持つ人物です。
いつまでも先延ばしにしていると、
肝心なことはやらないままいつか人生が終わってしまう、と……。
「いつでも明日が来ると思うな」
礼の祖父（夏八木勲）はこう警告するわけです。
ここにもこのドラマの持つ対立構造が見られます。

結婚式を目前にして、「奇跡の扉」を探す“健”。
多田の新人賞受賞パーティから“礼”を連れ出しました。
奇跡の扉を開ける鍵となるのは、
２人が共有する過去とその重さでしょう。
過去は変えられないから永遠になります。
パーティ会場から駆けていく２人を包んでいた夕焼け色は、
昔から続いていたひとつの物語が終焉を告げているかのようです。