日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

コラム:中国は米国に送り込む「完全なスパイ」つくれるか (ディープパンダ)

2015年06月24日 | 国内:外交・安全保障・防災
[17日 ロイター]
 米国の情報コミュニティーはひどい1週間を経験した。米政府職員の情報を管理する連邦人事管理局(OPM)のコンピューターが大規模なサイバー攻撃を受け、元職員を含む約400万人分の個人情報が流出したのだ。「ディープパンダ」と呼ばれるハッカー集団による犯行で、中国政府が背後にいるとみられている。

 それから数日後、米政府はサイバー攻撃を再び受けたことを明らかにしたが、こちらの方がもっとひどかった。ディープパンダは連邦職員約1400万人の個人情報を盗んだのだ。盗まれた情報のなかには、軍や情報機関などに所属する職員によって詳細に記された質問票も含まれていた。

 専門家が懸念するのは、中国がこうした情報を、米国のスパイを暴いたり政府職員を脅迫したりするのに使うことだ。また、米国家安全保障局(NSA)の情報収集活動を暴露したエドワード・スノーデン容疑者が所有する暗号化されたファイルを、中国とロシアが解読したとする英紙サンデー・タイムズの報道も、このような懸念に拍車をかけている。

 ディープパンダによる米政府職員の情報流出は、恐ろしい結果を暗示する。

 米連邦職員は安全を保証するためのセキュリティー・クリアランス審査を受けるが、その最初の窓口がOPMであり、盗まれた記録は35年前までさかのぼる。そのなかには、職員が記入しなければならない「Standard Form 86」という127ページに及ぶ質問票も含まれている。

 メディアに登場する評論家たちは、ディープパンダが「黒幕」とみられる中国のために、米国のスパイを脅迫するデータベースをいかに構築するかについてばかり語っていた。しかし、それは浅はかだ。中国はもっと賢い。

 スパイ活動は長期戦であり、短距離レースではない。そして、国家は忍耐強い。

 スパイはターゲットの弱み(ギャンブルや逸脱した性行動など)に付け込み、そこに誘導して溺れさせ、暴露すると脅迫する。しかし、目先の利益のために、これは大した手間だと言える。ターゲットが攻撃してきたり、命を狙ってきたりすることもある。そのようなデータベースの有効活用は、脅迫のためではなく、完全なスパイの経歴を作成するうえで参照することにある。

 例えば、中国が米国務省にとって魅力的な候補者をスパイにしたいと考えているとしよう。その場合、高い語学力と中国と文化的つながりはあるが、中国共産党とは近過ぎない人物が適任だろう。

 中国の情報当局はディープパンダのデータベースを使い、中国語が話せて本土に家族のいる、過去に採用された候補者たちを検索することが可能となる。

 米情報機関と情報交換するため、外国の反体制派の人物がしばしば求められていることも一助となるかもしれない。故国の兄弟と政治について口論したなどという巧みな話を持つスパイは、偽の反体制的人物を本物らしく見せるだろう。

 しかし、一部の家族的つながりは不安視される。軍や党の幹部の子息は、いくら父親と反目していても審査に通る可能性はないだろう。

 先週までは、中国はその「線引き」について知る由もなかった。だがディープパンダが得た情報のおかげで、今では恐らく、米国が審査で却下するより先に、中国共産党との関係の限度を知ることができる。

 セキュリティー・クリアランス審査には、うそ発見器による検査も含まれている。うそ発見器は外国のスパイである可能性を排除するためにも使われるが、この検査は最新の注意を必要とする。検査を行うのも、結果を解釈するのも人であり、経験豊富なスパイは検査官を操ることも可能だ。そうしたことは実際、過去に起きている。

 カレル・ケヘルは1960年代、チェコスロバキアで旧ソ連と共産党を批判する風刺ラジオ番組で名をはせた。その後、ケヘルと妻は母国を後にし65年に米国に移り住んだ。コロンビア大学で博士号を取得し、71年には市民権を得た。そして、73年から米中央情報局(CIA)で働き始めた。

 ケヘルには高レベルのセキュリティー・クリアランスが与えられ、機密情報の翻訳や分析に従事し、計10年間CIAに勤務した。その間ずっと、彼はソ連にリポートを送り続けていた。

 ソ連の情報当局は、米国が疑わないように、ケヘルが反体制的なラジオパーソナリティーであり、共産党から逃れたい意思の持ち主であるというように、彼の人生を入念につくり上げていた。

 ケヘルはうそ発見器による検査に落ちたが、検査官に数々の言い訳をしてうまいこと切り抜けた。CIAはケヘルのうそを信じ、ケヘルはおよそ10年もの間、CIAの機密情報をソ連に渡していたのだ。

 冷戦時代にソ連のスパイがうそ発見器を切り抜けられたのなら、高度な訓練を受け、盗んだ情報を手にしている中国のスパイが現在、同じことができないわけがないだろう。

 外国の国家機密を得るために個人の人生をささげるというのは、ばかげているように思えるかもしれない。しかしスパイがもたらす情報は、決定的に重要である場合が多い。中国版ケヘルが登場するのも時間の問題だろう。

*筆者・Matthew Gaultは、ツイッター創業者らによるブログサービス「Medium.com」の防衛担当記者。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。


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