(日経7/23:国際2面)
【シリコンバレー=兼松雄一郎】米アップルが、スマートフォン(スマホ)「iPhone」の売れ行きが好調な中国市場への依存度を強めている。21日発表の4~6月期決算は中国での販売がけん引役となり、6四半期連続で増収増益となった。ただ、7~9月期の業績見通しは市場予想を下回る水準で、中国の先行きへの不安もにじませた。
クックCEOは中国事業に強気の見方を貫いている(6月、サンフランシスコ)=ロイター
「我々は中国について極めて強気だ。戦略を変えるのはばかげている」
決算後の電話会見で中国の景気減速の影響について聞かれたティム・クック最高経営責任者(CEO)は強気の発言を連発した。「高速通信網の整備によりスマホの利用はさらに拡大する。中間層も増え続け、大きな商機がある」「中国がいずれ米州を抜いて最大の市場になる」といった具合だ。
投資もはっきり継続すると表明した。中国には現在22の直営店があるが来年半ばまでに倍の40とする計画は変えない。
4~6月期の売上高は前年同期比33%増の496億500万ドル(約6兆1440億円)、純利益は38%増の106億7700万ドルとなった。市場が失望したのは7~9月期の業績予想だ。売上高は490億~510億ドルと最大でも21%増にとどまる。画面を大きくした「iPhone6」の本格的な発売後から6月末までの9カ月間は3割前後の成長が続いてきただけに、慎重な数値と受け止められた。22日の米株式市場でアップル株は前日終値から約7%値下がりして取引が始まった。投資家の失望から売りが優勢となっている。
市場の懸念は、中国の株価下落が中国人富裕層や中間層の消費活動に冷や水を浴びせるシナリオだ。クック氏は「株式売買をする層の割合は低い。今の不安はおそらく過剰だ」と説明した。
アップルのビジネスは中国頼みの構造を強めている。4~6月期の中国の地域別の売上高は2.1倍の132億ドルとなり、ソフトの販売は倍以上となった。iPhoneの売り上げは87%増と市場全体の5%増を大幅に上回った。初めてiPhoneを買う層も増え、そのまま新モデルに買い替えるパターンが機能している。
中国の伸びに支えられ、売上高に占める新興国の割合は3割以上に達し、全体の4割を占める米州に迫る。
▼中国景気の減速/スマホ供給過剰 アップルに2つの逆風
【北京=阿部哲也】2014年に合計で4億2千万台のスマートフォン(スマホ)が販売され、世界の3分の1を占める最大市場となった中国。だが、足元では異変も起きている。
米調査会社IDCによると、アップルの15年1~3月の中国シェアは14.7%で、1年前から6ポイント伸ばし、小米(シャオミ)や華為技術(ファーウェイ)を抑えて首位に躍進した。だが、そこには2つの大きな逆風が吹いている。
第一は中国景気の減速だ。
「必要のない買い物は当面しない」。北京市の外資系企業に勤める32歳の男性は肩を落とす。iPhoneを買おうと、今年に入って株式投資を始めたが、6月中旬以降の急落で大きな損が出た。
一般的な大卒初任給が4千元(約8万円)程度とされる中国では、iPhoneは主に富裕層が持つ高級ブランドの位置づけだった。だが購買力のある中間層が台頭し「少し無理してでもいい物を持ちたい」というニーズをうまく取り込んだのがiPhone6だった。株安はこうした中間層の消費者心理を冷え込ませる恐れがある。
2つめの逆風はスマホの供給過剰問題だ。
北京の繁華街、王府井にあるアップル店近くの携帯ショップ「手機広場」。アップルの展示コーナーは隅に追いやられ、代わって大々的に営業しているのが広東歩歩高電子工業の「vivo」などの新興スマホだ。vivoの主力モデルは2999元とiPhone6の半額だ。
中国ではこうした新興メーカーが60社も乱立するとされる。普及率が9割に達する中、いずれもiPhoneに似せたデザインや性能の新型機を次々発売し、飽和感が強まっている。1~3月には中国全体のスマホ出荷が4.3%減り、6年ぶりのマイナスとなった。人気のあった小米も販売が急速に鈍るなど、消耗戦の様相を呈し始めた。
【シリコンバレー=兼松雄一郎】米アップルが、スマートフォン(スマホ)「iPhone」の売れ行きが好調な中国市場への依存度を強めている。21日発表の4~6月期決算は中国での販売がけん引役となり、6四半期連続で増収増益となった。ただ、7~9月期の業績見通しは市場予想を下回る水準で、中国の先行きへの不安もにじませた。
クックCEOは中国事業に強気の見方を貫いている(6月、サンフランシスコ)=ロイター
「我々は中国について極めて強気だ。戦略を変えるのはばかげている」
決算後の電話会見で中国の景気減速の影響について聞かれたティム・クック最高経営責任者(CEO)は強気の発言を連発した。「高速通信網の整備によりスマホの利用はさらに拡大する。中間層も増え続け、大きな商機がある」「中国がいずれ米州を抜いて最大の市場になる」といった具合だ。
投資もはっきり継続すると表明した。中国には現在22の直営店があるが来年半ばまでに倍の40とする計画は変えない。
4~6月期の売上高は前年同期比33%増の496億500万ドル(約6兆1440億円)、純利益は38%増の106億7700万ドルとなった。市場が失望したのは7~9月期の業績予想だ。売上高は490億~510億ドルと最大でも21%増にとどまる。画面を大きくした「iPhone6」の本格的な発売後から6月末までの9カ月間は3割前後の成長が続いてきただけに、慎重な数値と受け止められた。22日の米株式市場でアップル株は前日終値から約7%値下がりして取引が始まった。投資家の失望から売りが優勢となっている。
市場の懸念は、中国の株価下落が中国人富裕層や中間層の消費活動に冷や水を浴びせるシナリオだ。クック氏は「株式売買をする層の割合は低い。今の不安はおそらく過剰だ」と説明した。
アップルのビジネスは中国頼みの構造を強めている。4~6月期の中国の地域別の売上高は2.1倍の132億ドルとなり、ソフトの販売は倍以上となった。iPhoneの売り上げは87%増と市場全体の5%増を大幅に上回った。初めてiPhoneを買う層も増え、そのまま新モデルに買い替えるパターンが機能している。
中国の伸びに支えられ、売上高に占める新興国の割合は3割以上に達し、全体の4割を占める米州に迫る。
▼中国景気の減速/スマホ供給過剰 アップルに2つの逆風
【北京=阿部哲也】2014年に合計で4億2千万台のスマートフォン(スマホ)が販売され、世界の3分の1を占める最大市場となった中国。だが、足元では異変も起きている。
米調査会社IDCによると、アップルの15年1~3月の中国シェアは14.7%で、1年前から6ポイント伸ばし、小米(シャオミ)や華為技術(ファーウェイ)を抑えて首位に躍進した。だが、そこには2つの大きな逆風が吹いている。
第一は中国景気の減速だ。
「必要のない買い物は当面しない」。北京市の外資系企業に勤める32歳の男性は肩を落とす。iPhoneを買おうと、今年に入って株式投資を始めたが、6月中旬以降の急落で大きな損が出た。
一般的な大卒初任給が4千元(約8万円)程度とされる中国では、iPhoneは主に富裕層が持つ高級ブランドの位置づけだった。だが購買力のある中間層が台頭し「少し無理してでもいい物を持ちたい」というニーズをうまく取り込んだのがiPhone6だった。株安はこうした中間層の消費者心理を冷え込ませる恐れがある。
2つめの逆風はスマホの供給過剰問題だ。
北京の繁華街、王府井にあるアップル店近くの携帯ショップ「手機広場」。アップルの展示コーナーは隅に追いやられ、代わって大々的に営業しているのが広東歩歩高電子工業の「vivo」などの新興スマホだ。vivoの主力モデルは2999元とiPhone6の半額だ。
中国ではこうした新興メーカーが60社も乱立するとされる。普及率が9割に達する中、いずれもiPhoneに似せたデザインや性能の新型機を次々発売し、飽和感が強まっている。1~3月には中国全体のスマホ出荷が4.3%減り、6年ぶりのマイナスとなった。人気のあった小米も販売が急速に鈍るなど、消耗戦の様相を呈し始めた。