(日経8/12:総合2面)
【シリコンバレー=小川義也】米グーグルは10日、持ち株会社の新設を柱とする大がかりな組織再編を発表した。持ち株会社のトップに就く創業者の2人が事業子会社となるグーグルの経営を事実上離れ、ここ数年投資を拡大してきた自動運転車や先端医療など新規事業の立ち上げに専念する。1998年に生まれたインターネットの巨人は、検索と広告で築き上げた自らの殻を破る「第2の創業」に挑む。
「革命的なアイデアが新たな成長市場を生み出すテクノロジー業界で存在感を保つには、居心地の良い状態からあえて抜け出す必要がある」。ラリー・ペイジ最高経営責任者(CEO)は10日、再編を決断した理由をブログでこう説明した。
再編は年内にも完了。現在のグーグルは検索と広告を中核とする事業会社とし、新設する持ち株会社「アルファベット」の傘下に入る。自動車や医療などの新規事業もアルファベット傘下で別会社として運営する。
■トロイカ維持
グーグルが「ムーンショット」と呼ぶ長期的な新規事業を巡っては、研究開発など増え続ける費用を懸念する声があった。米ゼネラル・エレクトリック(GE)のような複合企業に形態が近づく新体制では、グーグルとそれ以外の会社の決算を分けて開示する方針。透明性を高めることで、成長投資への投資家の理解を得る狙いがある。
上場会社はグーグルからアルファベットに変わるが、共同創業者のペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏、会長のエリック・シュミット氏の3人による経営の「トロイカ体制」は維持する。アルファベットの会長にはシュミット氏、CEOにペイジ氏、社長にブリン氏がそれぞれ就任する。
大きく変わるのはスンダル・ピチャイ上級副社長がCEOに昇格するグーグルだ。位置づけは子会社に変わるとはいえ、アルファベットの収益の大半をグーグルが稼ぐ構図は当面変わらない。だが、ペイジ氏は中核事業のかじ取りを思い切ってピチャイ氏に委ね、「セルゲイと自分は新規事業の立ち上げに本気で取り組む」と宣言した。
新体制ではこれまでグーグルの社内にあった研究機関「グーグルX」を独立させる。自動運転車や気球を使ったネット接続サービス、小型無人機(ドローン)を使った配送サービスなど「X」が主体となってきた新規事業の開発が加速する見通し。事業のスピンオフやM&A(合併・買収)など選択肢も広がる。
■成長下の決断
「グーグルは従来型の会社ではない。そうなるつもりもない」。今回の再編を説明したブログの冒頭で、ペイジ氏は2004年の上場時に公開した株主への手紙の言葉を再び持ち出した。
創業から17年。昨年の売上高は上場した04年の21倍、純利益は36倍に増えた。時価総額はアップルに次ぐ規模で4400億ドル(約55兆円)を超す。
驚異的な成長を遂げたにもかかわらず大胆な組織再編を決断した背景には、社員数が5万人を超えるなか、兆しがみえはじめた「大企業病」への懸念がある。シリコンバレーのエンジニアの間では、巨大化して動きの鈍ったグーグルを「ビッグG」と呼び敬遠する声もある。マイクロソフトも組織が巨大化し革新性が失われた時期があった。
新体制で再び「フリーハンド」を得る格好の創業者2人が思惑通り、創業当初の勢いと輝きを取り戻せるかどうかは、シリコンバレーの今後の勢力図をも左右する。
【シリコンバレー=小川義也】米グーグルは10日、持ち株会社の新設を柱とする大がかりな組織再編を発表した。持ち株会社のトップに就く創業者の2人が事業子会社となるグーグルの経営を事実上離れ、ここ数年投資を拡大してきた自動運転車や先端医療など新規事業の立ち上げに専念する。1998年に生まれたインターネットの巨人は、検索と広告で築き上げた自らの殻を破る「第2の創業」に挑む。
「革命的なアイデアが新たな成長市場を生み出すテクノロジー業界で存在感を保つには、居心地の良い状態からあえて抜け出す必要がある」。ラリー・ペイジ最高経営責任者(CEO)は10日、再編を決断した理由をブログでこう説明した。
再編は年内にも完了。現在のグーグルは検索と広告を中核とする事業会社とし、新設する持ち株会社「アルファベット」の傘下に入る。自動車や医療などの新規事業もアルファベット傘下で別会社として運営する。
■トロイカ維持
グーグルが「ムーンショット」と呼ぶ長期的な新規事業を巡っては、研究開発など増え続ける費用を懸念する声があった。米ゼネラル・エレクトリック(GE)のような複合企業に形態が近づく新体制では、グーグルとそれ以外の会社の決算を分けて開示する方針。透明性を高めることで、成長投資への投資家の理解を得る狙いがある。
上場会社はグーグルからアルファベットに変わるが、共同創業者のペイジ氏とセルゲイ・ブリン氏、会長のエリック・シュミット氏の3人による経営の「トロイカ体制」は維持する。アルファベットの会長にはシュミット氏、CEOにペイジ氏、社長にブリン氏がそれぞれ就任する。
大きく変わるのはスンダル・ピチャイ上級副社長がCEOに昇格するグーグルだ。位置づけは子会社に変わるとはいえ、アルファベットの収益の大半をグーグルが稼ぐ構図は当面変わらない。だが、ペイジ氏は中核事業のかじ取りを思い切ってピチャイ氏に委ね、「セルゲイと自分は新規事業の立ち上げに本気で取り組む」と宣言した。
新体制ではこれまでグーグルの社内にあった研究機関「グーグルX」を独立させる。自動運転車や気球を使ったネット接続サービス、小型無人機(ドローン)を使った配送サービスなど「X」が主体となってきた新規事業の開発が加速する見通し。事業のスピンオフやM&A(合併・買収)など選択肢も広がる。
■成長下の決断
「グーグルは従来型の会社ではない。そうなるつもりもない」。今回の再編を説明したブログの冒頭で、ペイジ氏は2004年の上場時に公開した株主への手紙の言葉を再び持ち出した。
創業から17年。昨年の売上高は上場した04年の21倍、純利益は36倍に増えた。時価総額はアップルに次ぐ規模で4400億ドル(約55兆円)を超す。
驚異的な成長を遂げたにもかかわらず大胆な組織再編を決断した背景には、社員数が5万人を超えるなか、兆しがみえはじめた「大企業病」への懸念がある。シリコンバレーのエンジニアの間では、巨大化して動きの鈍ったグーグルを「ビッグG」と呼び敬遠する声もある。マイクロソフトも組織が巨大化し革新性が失われた時期があった。
新体制で再び「フリーハンド」を得る格好の創業者2人が思惑通り、創業当初の勢いと輝きを取り戻せるかどうかは、シリコンバレーの今後の勢力図をも左右する。