日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

P&G転機のトップ交代  「中興の祖」退任、体質改善にメド 次の成長戦略、具体策示せず

2015年09月08日 | 外資:米国・カナダ
(日経9/8:グローバルBiz面)
 米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)のアラン・ラフリー氏(68)が10月末で最高経営責任者(CEO)職から退く。2000年代に同社の隆盛をもたらしたラフリー氏は13年、金融危機で悪化した業績立て直しのため再登板。ブランドを6割減らすリストラを断行し、体質改善にメドをつけた。ただ、再成長のための具体策は打ち出せておらず、道半ばでの退任となる。

    
改良した「パンパース」を米中市場に投入する(米の量販店)

 「今がCEO交代にふさわしい時期だと確信している」。7月下旬、ラフリー氏はこう述べ、化粧品を扱う美容部門、ひげそりや歯磨き用品などのグルーミング・ヘルスケア部門の2つを統括するデビッド・テイラー氏を次期CEOに指名した。ラフリー氏は会長としてテイラー氏の指南役を務める。

 ラフリー氏は00年にCEOに昇格し、P&Gを経営危機から救った「中興の祖」だ。「消費者がボス」を経営理念に、事業を組み替えた。カミソリ大手ジレットをはじめ美容・化粧品やヘアケア製品も次々と買収。売上高を約2倍に増やした。

 09年にCEO職をマクドナルド氏を譲ったが、13年に復帰した。マクドナルド氏は美容品や新興国事業を膨張させたが業績や株価は伸び悩んだ。投資家から経営手腕を疑問視する声が上がり、ラフリー氏が呼び戻された。

 2度目の登板はショートリリーフ。事業を立て直し後継者を決めたら退くとラフリー氏は当初から心に決めていたようだ。

 電池事業「デュラセル」やヘアケア製品の「ウエラ」など、収益への貢献度が低下しているブランドの売却や打ち切りを進めた。今年7月にはヘアケア製品など美容関連の43ブランドを米香水・化粧品大手のコティに総額125億ドルで売却すると発表。165程度あったブランドを65に絞る。ブランド数を約6割減らしても売上高の85%、税引き前利益の95%は維持できるという。

 人件費や広告費も圧縮し、無駄をそぎ落とす作業が一段落したところで、テイラー氏にバトンを渡す。ラフリー改革への評価は高い。「P&Gは正しい方向への一歩を踏み出した」(業界アナリスト)との声が多い。

 とはいえ、課題は山積みだ。投資家の最大の不安は成長加速へ向けた戦略が見えない点にある。メドを付けたのはリストラまで。これからどうやって売り上げを増やしていくかについては道筋を示さずじまいだった。

 7月末の4~6月期決算発表に伴う電話会議。「いつまで待てばよいのか」「いまの施策で改善が見られない場合の代替策は?」。市場アナリストらはいら立った様子でラフリー氏に質問を浴びせた。

 14年7月~15年6月通期の売上高は前年比5%減の763億ドル。ドル高の影響を除くと1%増だが、前年までの伸び率(3~4%)と比べて鈍った。純利益は70億ドル強と同4割減。減収に加え事業分離などの費用がかさみ利益を圧迫した。

 稼ぎ頭のブランドである乳幼児用紙おむつ「パンパース」では機能や品質を改良した商品を米中市場で投入する。だが、競合製品との違いを消費者にわかってもらうのは難しくなっている。

 米ニュージャージー州の量販店。紙おむつを買いに来た30代女性は「パンパース」派だが、競合キンバリー・クラークの「ハギーズ」などがずらりと並ぶ棚を眺め、「ブランドの名前以外、値段も質も似たり寄ったりで違いなんてよく分からない」と本音を漏らす。

 苦戦する中国についてラフリー氏は「我々は価格を下げる方向で進めたが、消費者はより高級な商品を求めた」と語った。乳幼児用向け紙おむつで、同社の照準と消費者の需要がかみ合っていないと認めたのだ。最も大切にしていたはずの「消費者を理解する力」が鈍ったともとれる。

 ラフリー氏はP&Gが「長期的な価値向上ではなく、短期的な売り上げ増を追求する戦略に走っていた。これからは競合他社ではなく消費者に焦点を当てる」と、原点回帰を強調した。だが、次期CEOのテイラー氏は戦略の抜本的な見直しが必要だとの厳しい指摘も出ている。

▼「生え抜き」後継、難局打開に挑む 2部門を統括、求心力に定評 
 ラフリー最高経営責任者(CEO)の後継者となるデビッド・テイラー氏(57)は、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の主要部門4つのうち、グルーミング・ヘルスケア部門と美容部門を率いる。今年1月にテイラー氏が美容部門を兼任する人事が決まった時点で、米市場アナリストからラフリー氏の後継レースの「本命」と目されていた。

 P&Gは「生え抜き主義」が伝統だ。テイラー氏も大学卒業とほぼ同時に入社し、内部昇進してきた。米国のパンパース事業を皮切りに、中国・香港のヘアケア事業を経験。その後は欧州と米国で家庭用品部門を担当するなど、主要事業・地域を歴任した。巨大で複雑な組織をまとめる手腕を買われた。

 求心力の高さを評価する声もある。「難しい局面だからこそ、テイラー氏が選ばれたのではないか」。同氏をよく知る米デューク大経営大学院のビル・ボールディング学部長は話す。多様な人々をまとめあげ、全体を良い方向に導く環境づくりがうまい。高いハードルを課せられれば、さらにその上をめざす意欲的な人物だという。

 次期CEOにはP&Gを低迷から脱却させる重責がのしかかる。テイラー氏が示す次の一手に、業界の関心が集まっている。

 ニューヨーク=蔭山道子


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