(国際2面)
【ニューヨーク=山下晃】米主要企業の2015年4~6月期の決算発表が本格化する。市場予想では前年同期に比べ3%の最終減益となりそうだ。米経済は安定成長の軌道に復帰したとみられるが、海外事業を展開する米企業ではドル高に伴う収益の目減りが広がっている。
8日の非鉄大手アルコアを皮切りに、主要企業の決算発表シーズンが始まる。調査会社トムソン・ロイターの集計によると、4~6月の主要500社の1株当たり利益は前年同期から3%減る見通し。増益だった1~3月期(2.2%増)から一転、減益に沈む。
(右写真:原油安の恩恵が行き渡るには時間がかかりそうだ(ミズーリ州のガソリンスタンド)=ロイター)
金融のみ2桁増
米国経済は寒波の影響などで1~3月にマイナス成長に陥ったが、4月以降は雇用統計など底堅さを示す指標の発表が続いている。企業業績の回復がこれに比べて遅れている理由は為替と原油相場の影響にある。
米主要企業が国外で稼ぐ売り上げの比率は30%前後で、ドル建ての決算数値に対しては幅広い業種で通貨高の逆風が吹く。IBMやマイクロソフトはわずかながら減益となると予想されている。2桁の高い増益率が見込まれるのは「金融」の1業種のみだ。
日欧の中銀が金融緩和を継続する一方、米連邦準備理事会(FRB)は実質ゼロ金利政策の解除のタイミングを探る。こうした金融政策の方向の違いを背景に、外為市場でドルはユーロや円に比べ底堅く推移している。
4~6月期の米企業の業績の足を大きく引っ張るのはエクソンモービルなどの石油メジャーだ。足元の原油先物相場は指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で1バレル60ドル台程度で推移する。前年同期には同100ドルの水準を維持していた。エクソンの純利益はおよそ5割減り40億ドル(約4900億円)程度になると見込まれている。
好転は年後半か
15年の年間では1%増とわずかな増益が見込まれる。ただ、年初の予想(8%増)からは大幅な下方修正になりそうだ。
原油安は消費者にとっては恩恵が大きく、米経済全体としては中長期的な追い風になる。しかし、今のところは賃金の伸びが鈍いため積極的に消費を増やす動きにはつながっていない。主要企業の業績が再び2桁近い増益となるのは、原油安やドル高が前年比で一巡してくる15年後半から16年前半とみられている。
企業収益の順調な拡大は米国の株式相場を過去最高値水準に押し上げる大きな力となってきた。収益の伸びが鈍ってきたこともあり、足元のダウ工業株30種平均は節目の1万8000ドルを下回り、昨年末の水準を下回って推移している。ギリシャ情勢の混乱や年内に想定されるFRBの利上げを控え金融市場が神経質な展開となるなか、企業収益の動向に改めて注目が集まりそうだ。
【ニューヨーク=山下晃】米主要企業の2015年4~6月期の決算発表が本格化する。市場予想では前年同期に比べ3%の最終減益となりそうだ。米経済は安定成長の軌道に復帰したとみられるが、海外事業を展開する米企業ではドル高に伴う収益の目減りが広がっている。
8日の非鉄大手アルコアを皮切りに、主要企業の決算発表シーズンが始まる。調査会社トムソン・ロイターの集計によると、4~6月の主要500社の1株当たり利益は前年同期から3%減る見通し。増益だった1~3月期(2.2%増)から一転、減益に沈む。
(右写真:原油安の恩恵が行き渡るには時間がかかりそうだ(ミズーリ州のガソリンスタンド)=ロイター)
金融のみ2桁増
米国経済は寒波の影響などで1~3月にマイナス成長に陥ったが、4月以降は雇用統計など底堅さを示す指標の発表が続いている。企業業績の回復がこれに比べて遅れている理由は為替と原油相場の影響にある。
米主要企業が国外で稼ぐ売り上げの比率は30%前後で、ドル建ての決算数値に対しては幅広い業種で通貨高の逆風が吹く。IBMやマイクロソフトはわずかながら減益となると予想されている。2桁の高い増益率が見込まれるのは「金融」の1業種のみだ。
日欧の中銀が金融緩和を継続する一方、米連邦準備理事会(FRB)は実質ゼロ金利政策の解除のタイミングを探る。こうした金融政策の方向の違いを背景に、外為市場でドルはユーロや円に比べ底堅く推移している。
4~6月期の米企業の業績の足を大きく引っ張るのはエクソンモービルなどの石油メジャーだ。足元の原油先物相場は指標のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)で1バレル60ドル台程度で推移する。前年同期には同100ドルの水準を維持していた。エクソンの純利益はおよそ5割減り40億ドル(約4900億円)程度になると見込まれている。
好転は年後半か
15年の年間では1%増とわずかな増益が見込まれる。ただ、年初の予想(8%増)からは大幅な下方修正になりそうだ。
原油安は消費者にとっては恩恵が大きく、米経済全体としては中長期的な追い風になる。しかし、今のところは賃金の伸びが鈍いため積極的に消費を増やす動きにはつながっていない。主要企業の業績が再び2桁近い増益となるのは、原油安やドル高が前年比で一巡してくる15年後半から16年前半とみられている。
企業収益の順調な拡大は米国の株式相場を過去最高値水準に押し上げる大きな力となってきた。収益の伸びが鈍ってきたこともあり、足元のダウ工業株30種平均は節目の1万8000ドルを下回り、昨年末の水準を下回って推移している。ギリシャ情勢の混乱や年内に想定されるFRBの利上げを控え金融市場が神経質な展開となるなか、企業収益の動向に改めて注目が集まりそうだ。