(投資情報面)
鹿島が復活に向けて動き出した。国内外で抱えていた不採算工事がほぼ一巡したことを踏まえ、連結経常利益(2015年3月期に213億円)を21年3月期に850億円に引き上げる目標を打ち出した。大幅な増益をどうやって達成するのか。6月に就任した押味至一社長に聞いた。
――前期決算は大手ゼネコン4社で唯一、連結経常減益となりました。
「(工事代金が未回収となっている)アルジェリアの高速道路工事で損失引当金を計上したほか、首都圏で完工した大型工事が赤字となった。不採算工事は前期までにほぼ終わり、今期から利益率が上向くとみている」
――不採算工事が相次いだ建設事業ですが、どうてこ入れしますか。
「再開発が進む都内と復興需要が続く東北の両地域に、全国の支店から施工管理の担当者を100人規模で集めて振り向ける。これまでは各支店の裁量が大きく、利益率の高くない案件でも受注していた。現在は東京や東北に利益率が比較的高い工事が集中している。本社が主導する形で他地域の支店の工事量を減らしてでも、都内と東北での工事に集中したい」
「受注高で700億~800億円の大型工事は現場が地方にあっても、すべて本社が管理する体制に改めた。支店長だけでは目配りに限界がある。対象となる工事は手持ちだけで10件ほどある。本社が人員や資材調達を中心に管理を徹底することで、より利益率を高めたい」
――中長期目標では連結経常利益で前期より600億円以上の利益積み増しが必要です。
「増益額のうち500億円強を本体、残りを国内外のグループ会社で稼ぐ計画だ。本体の売上高はほぼ横ばいを見込む。規模は追わずに工事採算を重視した受注を徹底して利益率を改善し、増益につなげる。グループ会社の前期からの増益額は100億円程度だろう。北米やアジアの現地法人の収益を伸ばす計画だが、海外の開発事業は投資回収に時間がかかる。業績拡大のけん引役はやはり本体の建設事業だ」
――20年の東京五輪後は建設需要の減少が見込まれています。
「都内の再開発は五輪後も続く。地方は病院や介護施設を除くと、新設工事は望めない。維持補修が主体になる。国内事業の需要落ち込みを補うのは海外だ。海外事業の売上高比率は前期でまだ2割にとどまるが、五輪後は5割に近づけたい」
「今年3月にはオーストラリアでマンション用地の取得から設計・施工までをまとめて手がける地元建設会社を買収した。インドやミャンマーといった需要拡大が見込めるアジアを中心にこうした買収や資本提携を進め、収益源に育てる。業績回復が軌道に乗る18年3月期には、買収のための投資枠も示したい」
(聞き手は上月直之)
<市場の声>相次ぐ下方修正、信頼回復が急務
不採算工事が一巡したとして今期は業績の急回復を見込むが、市場には懐疑的な見方も少なくない。なぜなら前期まで9期連続で期初の営業利益予想を達成できなかったからだ。繰り返される下方修正で経営陣への信頼も揺らいでいる。
今期は経営陣を刷新。6年ぶりに中期目標を公表するなど、「下方修正の常習」の汚名をそそぐ決意は感じられる。新社長にとって、まずは今期の予想を達成することが急務である市場の信頼回復への一歩となる。
鹿島が復活に向けて動き出した。国内外で抱えていた不採算工事がほぼ一巡したことを踏まえ、連結経常利益(2015年3月期に213億円)を21年3月期に850億円に引き上げる目標を打ち出した。大幅な増益をどうやって達成するのか。6月に就任した押味至一社長に聞いた。
――前期決算は大手ゼネコン4社で唯一、連結経常減益となりました。
「(工事代金が未回収となっている)アルジェリアの高速道路工事で損失引当金を計上したほか、首都圏で完工した大型工事が赤字となった。不採算工事は前期までにほぼ終わり、今期から利益率が上向くとみている」
――不採算工事が相次いだ建設事業ですが、どうてこ入れしますか。
「再開発が進む都内と復興需要が続く東北の両地域に、全国の支店から施工管理の担当者を100人規模で集めて振り向ける。これまでは各支店の裁量が大きく、利益率の高くない案件でも受注していた。現在は東京や東北に利益率が比較的高い工事が集中している。本社が主導する形で他地域の支店の工事量を減らしてでも、都内と東北での工事に集中したい」
「受注高で700億~800億円の大型工事は現場が地方にあっても、すべて本社が管理する体制に改めた。支店長だけでは目配りに限界がある。対象となる工事は手持ちだけで10件ほどある。本社が人員や資材調達を中心に管理を徹底することで、より利益率を高めたい」
――中長期目標では連結経常利益で前期より600億円以上の利益積み増しが必要です。
「増益額のうち500億円強を本体、残りを国内外のグループ会社で稼ぐ計画だ。本体の売上高はほぼ横ばいを見込む。規模は追わずに工事採算を重視した受注を徹底して利益率を改善し、増益につなげる。グループ会社の前期からの増益額は100億円程度だろう。北米やアジアの現地法人の収益を伸ばす計画だが、海外の開発事業は投資回収に時間がかかる。業績拡大のけん引役はやはり本体の建設事業だ」
――20年の東京五輪後は建設需要の減少が見込まれています。
「都内の再開発は五輪後も続く。地方は病院や介護施設を除くと、新設工事は望めない。維持補修が主体になる。国内事業の需要落ち込みを補うのは海外だ。海外事業の売上高比率は前期でまだ2割にとどまるが、五輪後は5割に近づけたい」
「今年3月にはオーストラリアでマンション用地の取得から設計・施工までをまとめて手がける地元建設会社を買収した。インドやミャンマーといった需要拡大が見込めるアジアを中心にこうした買収や資本提携を進め、収益源に育てる。業績回復が軌道に乗る18年3月期には、買収のための投資枠も示したい」
(聞き手は上月直之)
<市場の声>相次ぐ下方修正、信頼回復が急務
不採算工事が一巡したとして今期は業績の急回復を見込むが、市場には懐疑的な見方も少なくない。なぜなら前期まで9期連続で期初の営業利益予想を達成できなかったからだ。繰り返される下方修正で経営陣への信頼も揺らいでいる。
今期は経営陣を刷新。6年ぶりに中期目標を公表するなど、「下方修正の常習」の汚名をそそぐ決意は感じられる。新社長にとって、まずは今期の予想を達成することが急務である市場の信頼回復への一歩となる。