日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

郵政上場秒読み(下)300兆円資産どう生かす 政治との均衡点探る

2015年10月11日 | 34.IPO銘柄
(日経10/11:1面)
 JR大阪駅前の一等地。野球グラウンド並みの広場にはいすやテーブルが並び、昼休みには近隣の会社員の憩いの場となる。旧大阪中央郵便局跡地だ。

下:駅前一等地などの活用が問われる(旧大阪中央郵便局の跡地)

収益力は低く
 郵政グループ上場を控えた今年夏、この跡地にオフィスや商業施設が入る40階建てビルをつくる再開発計画が一歩前進した。共同で再開発を手掛ける西日本旅客鉄道(JR西日本)が隣接ビルの解体工事に着手。郵政グループも「高騰する建設工事費などをにらみながら着工の時期を見極めている」(幹部)。

 郵政グループの総資産は約295兆円。国内総生産(GDP)の6割にあたる。だが、持ち株会社である日本郵政の2015年3月期の自己資本利益率(ROE)は3.4%。上場企業平均の8%を大きく下回る。上場後の郵政3社は、眠れる資産を生かし収益力を底上げできるかが焦点だ。


 「がんに対する備えは万全ですか」。今年7月、全国に2万ある直営郵便局で米アメリカンファミリー生命保険(アフラック)のがん保険の販売が始まった。ゆうちょ銀は三井住友信託銀行、野村ホールディングスと新型の投資信託を開発。高齢者を中心とする郵便局の顧客向けに来年2月から販売を始める。

 収益底上げののりしろは大きい。全国2万4000の郵便局網が扱う荷物は年4億8000万個。1拠点あたり2万個ほどだ。一方、16億個の荷物を4000拠点で処理するヤマト運輸は1拠点あたり40万個の荷物をさばく。「郵便局網(という資産)で色々なサービスを提供できるようになる必要がある」と西室泰三日本郵政社長は言う。

 生産性改善に向けどう踏み込むかは漠としている。

 「将来は生活できる空間じゃなくなる」。高松空港から車で15分。香川県高松市の山間部でスーパーを営む大家通利さんは上場が郵便局閉鎖につながる懸念を口にする。郵政民営化法は全国一律のサービス維持を義務付けるが、収益強化をめざせば赤字の郵便局をどうするかが焦点になる。

 香川県では農協再編が進み過疎地からJAバンクが相次ぎ撤退した。「郵便局まで撤退したらタンス預金しかなくなる」と地元出身の瀬戸隆一衆院議員。ゆうちょ銀行の預入限度額を上げる自民党提言は人口減に悩む地域の焦燥も映す。

 日本郵政グループ3社の上場は今後10年以上にわたって続く株式売却の第一歩にすぎない。民主党政権で株式の売却が一時的に凍結されたように、売却の長いプロセスは時の政治情勢に振り回されやすい。金融市場の評価と政治的な要請をバランスさせながら、どう収益力を高めていくか。

市場の力テコに
 ヒントは世界にある。00年に上場したドイツポストは物流業界の再編を主導。米大手DHLの買収をテコに国際物流で世界首位にのしあがった。世界で収益を稼げれば国内の郵便局網をある程度維持できる。日本郵政も豪物流大手の買収に乗り出した。

 上場後の試行錯誤は避けられない。ドイツの場合、傘下のポストバンク(郵貯)がドイツ銀行の子会社になったものの、相乗効果をあげられず今年4月、再び身売りする方向になった。日本郵政でも市場の力をテコに高コスト体質を洗い直し、政治との新たな均衡点を探るしかない。

 1990年代以降の「失われた20年」で日本経済の構造改革は停滞した。ドイツから15年遅れで実現する郵政グループの上場の行方は日本経済の命運とも重なってくる。

 田口良成、横田祐介、剣持泰宏が担当しました。


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