日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

(大岡山通信) (26)誤報や訂正のあり方 記者、歴史を刻む自負を

2014年12月29日 | non-category


 このところ、新聞社の誤報や訂正のあり方などが問われています。その渦中に巻き込まれた私が考えていることがあります。それは、記者とは歴史を刻む職業なのだということです。

 一般に新聞記者や放送局の記者などは、ジャーナリストと呼ばれます。ジャーナリストには、フリーランスで仕事をする人もいます。この人たちの仕事の場は新聞やテレビ、ラジオに限らず、書籍や雑誌の世界にも広がっています。インターネットの世界で活躍するジャーナリストも登場しています。

◇ ◆ ◇


 もともと「ジャーナル」とは日記のこと。ジャーナリストとは「日記をつける人」です。この場合の日記は、個人的なものではなく、社会のさまざまな日々の記録です。

 世の中の動きを記録する人。これがジャーナリストです。ジャーナリストの特ダネによって、人々の目から隠されていた世の中の動きが明らかになることもあります。

 これはやがて、歴史書に記載されることになるでしょう。

 華々しい特ダネでなくても、市井の人の日々の生活を記録しておくことで、後になって、その時代を調べる貴重な資料になることもあります。

 ジャーナリストとは、やがて歴史になることを記録する職業なのです。

 日々の記録は、やがて歴史になる。

 そう考えると、自分の仕事に真剣にならざるを得ないでしょう。誤報を書き、それが訂正されないでいたら、間違った歴史が残ってしまうかもしれないからです。

 誤報を書くこと。訂正しないでいること。これは、歴史に対する犯罪行為になりうるのです。

 その一方、自分が書いていることや自分の見方が、後世の検証に耐えうるのか、不安になることもあるでしょう。その時点では「正しいこと」と思って書いていても、後に「間違い」と断罪されることもあるのです。ジャーナリストとは、厳しく辛(つら)い仕事なのです。

 新聞記事を書いたり、テレビに出たりしていると、権力者とも気軽に会食できるようになったりもします。かくして、自分は特別な存在だと勘違いしてしまう。ジャーナリストとは、こんな危険な職業でもあるのです。

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 さらには、本当に命の危険を冒してでも、事実を人々に伝えたいと努力している人もいます。米国・ワシントンには「ニュージアム」という「ニュースの博物館」があります。この一角に、取材中に命を落とした人たちの名前が刻まれています。シリアで取材中に殺害された日本人ジャーナリスト・山本美香さんの名前もあります。

 この一角を見て、息を呑(の)む思いをしたことがあります。それは、まだ多数の氏名を刻むことができるスペースが、あらかじめ空けてあることでした。

 これからも、ジャーナリストたちは、命を賭して仕事をし、ここに名前を刻まれるのです。そこには、「自分は歴史を刻んでいるのだ」という自負と矜持(きょうじ)があります。

 駆け出しのジャーナリストも、ベテラン記者も、これを胸に刻んで仕事をしてほしいのです。



 大岡山は池上教授の活動拠点である東京工業大学のキャンパス名に由来します。日経電子版に「大岡山通信」「教養講座」を掲載しています。
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