日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

企業の本音映す内部留保 積極投資 信頼感カギ

2014年12月28日 | 国内:経済政策
〔14.12.28.日経新聞:総合・経済面〕


(↑ブログ主補記:13年度はアベノミクス初年度。いくら円高是正でも一気に設備投資までは即決し難いかと)

 日本企業は内部留保を抱え込み動かないとの指摘が、挨拶代わりとなっている。実際はどうか。

 内部留保とは、毎年の利益から税金と配当を差し引いたおカネのこと。企業の貸借対照表では負債の側に、利益剰余金として計上されている。

 日本企業全体の内部留保は、2013年度末時点で328兆円にのぼる。以下、資本金1億円以上の企業に絞ると、その金額は206兆円。リーマン・ショックに見舞われた08年度末以降、5年間で34兆円増えた。

 対する資産の側は? 13年度末時点で、土地・建物などの有形固定資産が241兆円、長期保有の有価証券が220兆円、現預金と短期保有の有価証券が88兆円だ。

 08年度末との対比では、設備投資を抑制したことで有形固定資産が9兆円減ったのに、株式など長期有価証券は65兆円も増えている。一方、現預金と短期有価証券は21兆円増にとどまる。

 企業は従来型の株式の持ち合いを増やしたのではない。海外の生産・販売拠点を強化し、M&A(合併・買収)を本格化した結果、株式の保有が増えたのである。

 一方で、国内の設備投資は06年度と07年度の44兆円台をピークに、08年度に27兆円台に急減した。その後、持ち直したとはいえ、13年度まで30兆円台で推移している。

 リーマン破綻に続き震災、超円高、電気代上昇に見舞われた企業が、生き残りを賭けて海外展開を急いだのだ。内部留保の積み上がりがあぶり出すのは、そんな光景である。

 ならば国内は設備投資の場として、見捨てられてしまったのか。実は14年度に入り、国内投資は上向きだしている。為替が大きく円安に振れたからだ。政治の場で、国内投資を促す声が強まったことも見逃せない。

 「日産自動車は米工場に移そうとしていたエンジン生産を、福島県のいわき市に決めました」「キヤノンは国内生産比率を5割まで戻すと決めました」。衆院を解散した11月21日の記者会見での安倍晋三首相の発言だ。

 首相が個別の社名を挙げるのは異例。発言はこの2社にとどまらない。街頭演説でも東芝、トヨタ自動車、東レ、神戸製鋼所などの社名を挙げ、国内回帰の流れを強調しているのが印象的だ。投資先を内にするか外にするか迷っている経営者に、にらみを利かす。そんな狙いもうかがえる。

 ある大手企業トップは「押しつけがましい」という。政労使の3者会議による賃上げ要請も含め、政府の姿勢に反発する企業も存在する。そんな反発を承知のうえで、政府はデフレ脱却と好循環実現に必死なのだ。日本経済を思う気持ちに偽りはあるまい。

 企業の国内回帰を加速させるには、2階に上ったハシゴを外さないとの安心感が大切だ。日本企業は06~07年度に積極投資をした後で、円急騰で経営難に陥った。残るトラウマをどう払拭するか。政府と企業が信頼し合える環境を醸成してこそ、アベノミクスに弾みがつく。

(編集委員 滝田洋一)

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