日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

IT化進む医療機器ビジネス 使い勝手改善、欧米勢先行

2014年12月30日 | 8.医薬品
〔14.12.30.日経新聞:グローバルBiz面〕

 米シカゴで12月上旬まで開催された全米最大の医療機器展示会、RSNA(北米放射線学会)に足を運んだ。各社が一押しの医療技術を披露する場でもあり、今年は医療機器ビジネスのIT(情報技術)化の潮流が一段と鮮明となった。

 医療機器の花形といえば、価格が億円単位ともいわれる磁気共鳴画像装置(MRI)やコンピューター断層撮影装置(CT)だ。臓器の内部まで画像化することで、がんをはじめ異常の発見に大きな役割を果たす。

 「検査時間短縮」(東芝メディカルシステムズ)や「放射線被曝(ひばく)低減」(日立メディコ)など最新機の性能を巡っては、日本勢も世界大手の米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスと互角の戦いを繰り広げていた。

 しかし、会場をくまなく歩いてみると、世界大手が競争の軸足を「機器」から「機器も含めた医療現場全体」に移していることがよくわかる。

 会場の真ん中、GEの広大なブース中央部に、ディスプレーとキーボードのセットだけがずらりと並ぶ一角があった。

 「クリック3回だけで見たい画像にたどりつけます」。GE担当者の話に医療関係者が耳を傾けていたのは、CTやMRIで撮った画像を管理する新発売のシステムだ。

 画像を診断する医師の画面レイアウトや解析手順などのクセなどを学習し、常に最適なレイアウトを瞬時に再現する。売りは簡単・短時間だ。

 GEによれば、病院の画像データは増える一方で、読影と呼ぶ画像診断にかける時間の19%がデータを取り出すのに割かれ、コスト上昇や誤った診断につながっている。「医療現場での画像診断は完璧というにはほど遠いが、ITで状況を改善できる」(GEヘルスケアのフラナリー最高経営責任者=CEO)

 そのGEに張り合うように大ブースを展開したシーメンス。ヘルスケア部門のソレンセン北米CEOは2014年の展示テーマの一つに「医療の生産性改善」を打ち出した。ITを使い、診療からベッド管理まで、医療機関の運営コストの半分ともいわれる人件費の削減に照準を合わせる。

 ひるがえって日本勢のブース。ある日本メーカーの幹部は「GEやシーメンスでやっていることは、うちでもやっていること」と話したが、展示内容はモノ(機器)頼みの印象を拭えなかった。

 海外大手は医療機器というハード類を中核に据えながらもITを用いてソフト、サービス、コンサルタントへと事業領域を着々と拡大しており、世界中で顧客の囲い込みを急いでいる。

 医療機器シェアの首位争いはGEとシーメンスの激戦が続き、CTや超音波診断装置では東芝も食い下がってはいる。ただ、収益性に目を向けると、GEやシーメンスは医療分野の利益率(13年度)が約16%と東芝の医療部門の倍以上あり、欧米メジャーと日本勢の差が埋まらない。

 今年のRSNAでは韓国サムスン電子の医療機器の品ぞろえ充実も話題になった。日本勢が世界で医療機器ビジネスを拡大できるか、正念場に来ているようだ。

(ニューヨーク=稲井創一)


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