日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

郵政近づく上場(下)金融界、実利求め接近 地銀先行、大手も連携探る

2015年08月22日 | 34.IPO銘柄
(日経8/22:経済面)
 8月15日、大分県の豊和銀行は取引のある高齢者が郵便局のATMを無料で使えるサービスを始めた。

 大分県内には「銀行もコンビニATMも車で20分かかる。あるのは郵便局だけ」(60歳代女性)といった過疎地もある。豊和銀行も1市1店が基本で「車に乗れない高齢のお客さんが増えていく時代にどう対応するか」との懸念が行内からあがっていた。

 長く敵対してきた日本郵政グループと民間金融界の関係に微妙な変化が生じている。九州はその先行地域で2007年には最大手の福岡銀行がゆうちょ銀ATMの無料化に先鞭をつけた。ゆうちょ銀行によると、ATMの無料化に踏み切った地銀は全国で10程度に増えたという。



人口減で危機感
 地銀の経営は厳しい局面だ。人口減に伴う内需縮小で融資需要は先細りの懸念が強い。高齢化に対応した顧客サービスには新たな投資が必要になる。「ATM1台でベンツが買える」と皮肉られるほど高額なATMを並べる今の仕組みは限界にきている。「正直言うと、採算の合わない店舗やATMはすべて郵便局と共同運営したい」。ある有力地銀頭取の本音だ。

 地域金融機関だけではない。7月22日、郵政グループと三井住友信託銀行、野村ホールディングスは個人向け資産運用で共同出資会社を作ると発表した。伏線は約1年前から敷かれていた。

 「ゆうちょ銀行を『第4のメガバンク』にしたら上場は失敗する」。金融庁幹部は日本郵政幹部に度々直言した。低金利で収益が伸び悩むゆうちょ銀の事業モデルの先行きを懸念したためだ。

 00年に上場したドイツポスト傘下のポストバンク(郵貯)。ドイツ銀行が子会社にしたものの最初の出資発表から7年目の今年4月27日に売却すると発表した。コストのかさむリテール(個人向け金融)事業の維持は難しいと判断した。

 「投資商品を増やす手数料ビジネスを考えたらどうでしょうか」。郵政の新事業進出に難色を示してきた金融庁幹部がこう日本郵政に水を向け始めた。その動きに三井住友信託銀行が敏感に反応した。

警戒感は拭えず
 ゆうちょ銀との提携は、3メガバンクと距離を置く三井住友信託にとって絶好の巻き返しのチャンスだ。

 ゆうちょ銀の貯金の1割にあたる20兆円弱が投資信託市場に流れるだけで公募投信(15年7月末、純資産残高)の2割のお金が市場に流入する。三井住友信託は「勉強会」と称した会合をゆうちょ銀と重ね、証券最大手の野村ホールディングスも参画する資産運用の新会社構想を半年で練り上げた。

 国が育てた「巨鯨」への警戒と反発は残っている。資産運用の提携発表の会見に出席したトップは長門正貢ゆうちょ銀社長ら郵政側だけだった。三井住友信託と野村のトップがいない発表会見のぎごちなさは雪解けの裏にある微妙な緊張を映し出す。「規模縮小を」。4日に全国銀行協会がまとめた意見書も日本郵政グループの肥大化にクギを刺した。

 だが、実利を探る金融界と日本郵政の接近は止まりそうにない。上場を機にどこまで進むのだろうか。金融市場の評価がその道筋に大きな影響を与えそうな雲行きだ。


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