日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

岐路に立つ宇宙戦略(下) 民間の海外開拓進まず 小型衛星シフトが出遅れ

2015年10月05日 | 宇宙・飛行機・ドローン
(日経10/5:科学技術面)
 「宇宙産業の海外競争は民間単独では厳しい。政府開発援助(ODA)などの後ろ盾が必要だ」。海外からのロケット打ち上げや衛星などの受注を目指して官民で組織した「宇宙システム海外展開タスクフォース」の初会合が今年8月に東京・霞が関で開かれ、メーカーなど宇宙産業関係者から悲痛な声が上がった。

 海外市場では、早くから商業打ち上げに取り組む欧州のアリアンスペースや、低価格路線を走る米宇宙開発ベンチャーのスペースXなどが、世界の打ち上げ受注を取り込んでいる。人工衛星では、米ボーイングやロッキード・マーチン、欧州のエアバス・グループなどが約7割を占める。

大型が99%以上
 日本の宇宙産業は官需だけで大型人工衛星とロケットの受注が転がり込む。一般社団法人の日本航空宇宙工業会によると、2013年度の国内顧客への売上高の99%以上を宇宙航空研究開発機構(JAXA)など政府機関向けの大型人工衛星とロケットが占めた。日本政府は海外からの受注拡大でこうした状況を打開し、宇宙産業育成を狙うが、官民の会合の出だしからその難しさを実感させられた形だ。

 海外では近年、重さ1トン以下の小型人工衛星の利用が急速に進む。米調査会社によると、16~20年の間に世界で40基の小型衛星の需要が見込まれている。1トン以上の中・大型衛星は計16基にとどまる見通しだ。6月には、世界的な衛星通信網の整備を目指す米ワンウェブの小型通信衛星約700基の打ち上げをアリアンスペースが請け負った。ロシアのソユーズロケット計21機を使う予定だ。

 そうした中、JAXAも海外から受注した人工衛星の打ち上げ機会増大に備え基幹ロケット「H2A」を改良し、搭載した衛星の寿命を長期化できるようにする取り組みを始める。JAXAは小型ロケット「イプシロン」の活用も模索するが、まだ時間がかかりそうだ。小型市場の開拓が世界の宇宙産業での生き残りに不可欠になりつつある中で、日本の出遅れ感は強い。

 日本政府はまた、アジアの新興国などの宇宙機関に対して打ち上げや運用などのシステムの提供も目指しているが、議論を始めた段階だ。一方、国内の小型衛星メーカーも、東京大学発ベンチャーのアクセルスペース(東京・千代田)などが目立つ程度だ。

 日本が得意とする科学探査でも新興国が勢いづいている。9月、インドが本格的な天文衛星を初めて打ち上げた。小型衛星輸送の実績も豊富で、今回初めて米の小型衛星が相乗りした。

画像管理に懸念
 さらに、重要な宇宙産業の一つである人工衛星で撮影した画像の利用拡大でも、業界関係者が懸念を強める事態が起きている。原因は、政府が来年の通常国会に提出予定の「衛星リモートセンシング法案」だ。

 「厳しい規制だけでは、事業をやっていくのはつらい」。9月に自民党本部で開かれた勉強会で、衛星画像の販売などを手掛ける一般財団法人リモート・センシング技術センターの池田要理事長はこう訴えた。

 法案は安全保障上の観点から、国内の民間企業が扱う人工衛星が撮影した画像の活用を管理する内容だ。これに対し、気象情報会社ウェザーニューズの山本雅也執行役員は「衛星産業が成熟していない中で、法規制は時期尚早だ」と話す。

 今年1月に政府が策定した宇宙基本計画は、安全保障利用の成果を「産業振興につなげる」と記した。戦略がちぐはぐなまま進めば日本の宇宙産業を大きく伸ばすのは一層難しくなる。

 矢野摂士が担当しました。

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