日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

中国「反腐敗」の衝撃(下)追及の手、経済閥で拡大 国有企業改革の試金石に

2014年12月28日 | 中国
〔14.12.28.日経新聞:国際面〕



 12月10日、河北省廊坊市中級人民法院。収賄罪に問われた中国国家発展改革委員会(発改委)の劉鉄男元副主任(次官級)に無期懲役の判決が下った。2カ月半に及んだ公判で明るみに出たのは、日本企業も巻き込んだ腐敗の実態だった。

「口利き料」懐に
 法廷に立った証人の一人は劉被告に渡した「口利き料」の具体的な内容を明らかにした。

 2005年8月。トヨタ自動車と広州汽車集団(広東省)の合弁会社、広汽トヨタの販売店を北京に出店しようとしていた証人は広州汽車幹部に相談を持ち込んだ。だがトヨタ正規店は出店希望者が多く、なかなか話は進まない。

 焦った証人らは自動車業界を管轄する発改委の工業局長だった劉被告を頼る。劉被告は即座に広州汽車トップの張房有董事長に働きかけ、トヨタ正規店の営業認可取得を取り付けさせた。報酬は現金だけで1000万元(2億円弱)だった。

 「被告人が受け取った金品は特別巨大で悪質だ」。検察が語気を強める前で、劉氏は終始うなだれていたという。裁判所が認めた企業からの「口利き料」は合計3558万元にも及んだ。

 12年11月の発足以来、習近平指導部は「反腐敗運動」を旗印に掲げ、共産党や省庁、国有企業の幹部を次々と摘発してきた。最大の標的だったのは、国有企業のエネルギー利権を握る周永康前政治局常務委員に連なる「石油閥」だ。追及の手はさらに、国有企業を核とする様々な経済閥に広がりつつある。

 自動車大手の第一汽車や東風汽車、送電大手の国家電網、電力事業も手掛ける華潤集団……。いま最大の標的になっているのが、自動車に代表される「機械工業閥」と、電力や金属関連大手で構成する「電力閥」だ。いずれも背後には党の長老や実力者が控える。

 「一部の幹部の摘発では終わらない。狙いは石油閥同様の閥族解体だ」(関係者)。独フォルクスワーゲン(VW)や日産自動車の合弁幹部が摘発されるなど、影響は外資にも及び始めた。

省幹部の登竜門
 中国では国有企業大手の幹部人事は共産党組織部が握っており、政府の要職から国有大手に異動したり、逆に国有企業から党の幹部に昇進したりすることも多い。劉被告の事件の舞台となった広州汽車は広東省政府系で、同社の幹部職は省幹部へ駆け上がるための「登竜門」とされる。

 党・政府の幹部とつながる人脈と利権は国有企業改革を進めるうえで大きな障害となってきた。鉄鋼やセメントでは非効率な国有企業の淘汰が進まず、民営企業を圧迫する「国進民退」という問題も引き起こす。中国各地で深刻化する大気汚染も、ガソリンを独占販売している国有石油大手が環境投資を出し渋り、硫黄分の多い粗悪な燃料を流通させてきたからだとの批判は多い。

 「大型国有企業を主戦場とし、反腐敗を不断なく推し進める」。中央規律検査委員会トップの王岐山政治局常務委員が力を込めるのも、経済成長が減速するなかで、国有企業の経営効率化が急務になっているからだ。

 実際、石油業界では石油閥解体と歩調を合わせ、初の民営ガソリンスタンドが登場する見通しで、成果も出始めている。

 「嵐が過ぎ去れば再びあしき慣習が復活し、習氏自らが新たな経済閥のドンになる」――。こんな見方を覆し、国有企業改革を断行できるか。反腐敗の評価は習氏の今後の行動にかかっている。 (北京=阿部哲也) 

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