日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

インタビュー:「頑張る農業」支える流通必要=高島宏平オイシックス社長

2015年06月21日 | インバウンド・クールジャパン
[東京 18日 ロイター]
 有機野菜など食品ネット通販大手・オイシックス(3182.T)の高島宏平社長は18日、ロイターのインタビューで、農業が変わるためには、農産品を扱う流通業も変わらければならない、と述べ、「頑張る生産者」を支援する流通業の進化に意欲を示した。

 今後はネット通販の特性を生かし、買い物が困難な国内顧客向けや日本産の安心・安全な食品を求める海外での市場拡大に期待する。

 同社は2015年3月期決算で、売上高が180億円と14期連続で過去最高を記録した。そのうち約4割を野菜・果物が占める。16年3月期の売上高見通しは、200億円。

 いち早く輸出にも取り組み、09年から香港向けに日本産野菜や果物中心のネット販売を始めた。15年2月の旧正月に過去最高売上となる約4000万円を達成、急激な円安で多少の影響は受けたものの、直近の15年1─3月期は黒字となっている。

 高島社長とのインタビューの概要は以下の通り。

――なぜ野菜の宅配ビジネスを始めたのか。

「もともと、インターネットを使って何かをしようというところから入り、ネットを使って世の中を良くするとしたら、食品流通業界が面白いのではないかと。矛盾や無駄が非常に多い(ため改善の余地がある)だろうと思ったから」

「流通に関係している業者が川下から川上まで多く、そういう点が、ネットの力を使って問題を解決する親和性が高いだろうと感じた。中でも、賞味期限管理や鮮度管理など、野菜が一番難しそうだというところでスタートした」

──農家から直接作物を仕入れているが、農協など、既存の流通システムとのあつれきはなかったか。

「事業がまだ小さいので、障害はない。農協も当社を気にするようなことはないし、当社も農協の存在を感じないとならない規模にはなってない。われわれと取引している農家は、もともと直接取引を前提とした生産をすでにされていた人がほとんど」

「過去にいろいろなあつれきがあったのかもしれないが、そういうことを乗り越えてきた人と取引している。直接的な影響はあまりなかった」

「農業が競争力を持つためには、流通業も変わらないといけない。今までの流通業だと、農業が競争力を持とうと思って頑張っても、付加価値として認識しないので、無駄な努力になってしまうことがかなりある」

「われわれは、より競争力の高い、付加価値の高い農産物を優先的に届けたいし、一方でインターネット流通業であるという特殊性を生かしたい、そのためには流通のスタイルもどんどん進化させていかなければならないと思っている」

──神奈川県に製造拠点と物流センターを新設すると最近発表したが、それもその一環としてあるのか。

「流通業にどういう進化が必要か、と考えると、農家と直接やっているので、農協が持っていた調整機能がない。採れ過ぎたとか、こっちの産地で足りないからあっちの産地から持って来いなどという機能を、自社でやっていく必要がある」

「ある作物が、突然先週の2─3倍採れるということはよくあるが、その分客の胃袋が増えるわけではない。それをうまく調整したい」

「そのため、一時的な素材として売るだけでなく、多少、またはかなり手を加えたりして、カット野菜にしたりサラダにしたり、惣菜にしたりということをできるようにすることで、農業の不安定さというものに対応しようと思った」

「新たな施設では、キッチン・ダイニング用キット商品の工場を増設する。投資規模は5000万円─1億円程度を考えている」

──日本全体の消費が停滞するなか、食品宅配事業の見通しは。

「リアル(店舗販売)と戦っているという感じはしない。多くの人がアマゾンと本屋を併用している。食品に関しても、そういうことが起きて、マーケットが増えていく分は非常に多いと思う」

「買い物難民で、ちゃんとした物が食べられていなかった、新鮮な青果を食べることができなかった人が、宅配で食べれらるようになるとか、マーケット全体を豊かにしていく部分も大きい」

「何らかの不都合があって豊かになりきれていない、思うような生活を送ってない方が豊かになるということは、マーケット自体が大きくなること。そういう可能性がいっぱいある。われわれは実店舗の事業もやっている。実店舗の事業はなくならない。それはそれで両立していく」

──宅配事業参入による生産者側のメリットは。

「力のある生産者にとっては、流通の適性によって使い分ける選択肢が増えてくる。付加価値の高いものを高コストで作って、高プライスで売りたいという生産者もいれば、合理化を徹底して、機械化を導入して、非常に安定的な作物をかなりの低コストで作っていきたい人もいて、それぞれに適した売り先、流通業が増え、使い分けがやりやすくなっている」

──やり様によっては、「攻めの農業」は十分成り立つと。

「農業については、なぜかエモーショナルに語られがち。後継者不足の問題が言われるが、人口当たり農家数は、日本の方がオーストラリアやアメリカよりずっと多いということが、ファクトとして認識されていない」

「攻めの農業というのも、それ自体はいいと思うが、Jリーグがない時代の日本のサッカーが、ワールドカップに出たいと言っているのに近い。出たいと思うことがまず第一歩だとしても、出ると言い切ったら出られるか、というとそうではなく、ちゃんと国内でプロのリーグを作り、切磋琢磨し、技術が上がり、数年かけて出られるようになったという話だ」

「攻めの農業だと言い切るのはすごく大事な一歩だが、言ったら勝てるかというとそんなことはなく、言ってから勝てるようになるまで、相当な時間と正しい戦略が必要で、その間、実行のリーダーシップが必要だろう」

──実行のリーダーシップを政治に求めるか。

「それを政治に求めている限り、強い産業などできない。日本のゲーム業界やアニメは政治のおかげで伸びたのか。政治の仕事じゃなく、産業界の仕事だ」

──環太平洋連携協定(TPP)に対しても同様のスタンスか。

「TPP参加は、ワールドカップに出るぞ宣言のような意味はあるかと思う。それ以上の意味はあまりない。TPPだけで日本の農業がすごく大きく変わるとも思わないが、変わり始めるきっかけにはなる。当社の取引先の農家では、2011年の段階で、過半数がTPPに賛成だった」

「TPPをやると言い切ることに意味があるので、後は自分たちでチャンスを探していけばいい。われわれが、チャンスをつかもうとする農業・生産者の人たちが伸びるような流通業に進化していくことも大事。さきほど政治の仕事ではないと言ったが、がんばりやすい環境を作るという部分で言うと、政治の仕事も残っている」

──具体的になくすべき規制、変えるべき制度は。

「農地取得の問題は大きいと思う。農地を取得する難しさもあるが、今持っている人たちにとって売却するインセンティブがないことが問題。早く売るよりはちょっと持っていれば補助金がもらえたり、そのうちいつかマンションが建つと値が高くなるなど、持っていたいというインセンティブが働いている」

「(耕作放棄地に課税を強化するという)ムチと、税減免などのアメを一緒にやればいい。2年以内に売ると売却益に対する税金かからないなど、期間限定でもいい」

──すでに農産物の輸出を手掛ける香港向けネット販売が好調だが、顧客層は。

「8割は香港の人で、2割が現地に住んでいる日本人。安心安全な食材を食べたいというニーズと、お取り寄せの感覚で、日本のフルーツを定期的に食べたい、という2つのニーズがある。香港には関税がないが、輸送コストがかかるため、価格は日本国内の1.5─2倍となっている」

「将来的には、made in Japan だけでなく、made by Japan、Checked by Japan というのも考えたい。いま、香港で現地作物を私たちが目利きして現地で届けるということをやっている。品質管理や、商品の目利きをオイシックスがやる。今までの輸出は作物中心だったが、作物を作るプロセス、あるいは管理するプロセスで生まれてきたさまざまな技術というものも、輸出品になっていくようにしたい。そうでないと、中国など検疫が厳しい国に作物を輸出するのは難しい」

──海外を含め、他社との資本提携、M&Aも検討対象か。

「事業提携を前提とした資本提携は、これまでもやっているし、これからもウェルカム。米国と比べ、日本の有機作物、自然食品のマーケットは小さい。その要因のひとつに、似て非なる業者が多いこともある。可能性があれば、一緒に力を合わせていくことは、日本の有機農業のことを考えてもプラスになるのではないか」

(宮崎亜巳 編集:田巻一彦)


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