日本株と投資信託のお役立ちノート

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(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

「ゲノム創薬」前進へ 武田など日米欧13社が連携 がんの新薬 遺伝情報を治験に活用

2015年08月27日 | 先端技術・知財
(日経8/27:企業総合面)
 武田薬品工業など日米欧の医薬品メーカー13社は、ヒトの遺伝情報(ゲノム)を活用して薬を開発する「ゲノム創薬」で共同プロジェクトを立ち上げた。国立がん研究センターとがん患者の遺伝情報を収集し、新薬の臨床試験(治験)に活用する。日本はこれまでゲノム創薬の分野で欧米に後れを取ってきたが、治験しやすい環境が整うことで各社の新薬開発が実用化に向け大きく前進しそうだ。

 

 共同研究プロジェクト「SCRUM―Japan」には武田や国立がん研究センター、アステラス製薬、米ファイザーなどが参加する。肺がんや消化器がんの患者のゲノムを無償で検査し、個人に合った抗がん剤の新薬を試すことができる。すでにがん患者400人の検査を終えた。

 2017年までに4500人のゲノム収集を目指している。集めたゲノムはがんの遺伝子型ごとに分類。製薬会社が特定の遺伝子を標的にした新薬の治験をする場合に、その遺伝子を持つ患者を紹介することで、治験を進めやすくする狙いだ。

 がん治療は手術による切除や放射線療法などがあるが、転移が進むと抗がん剤を使うことが多い。従来の抗がん剤は、がん細胞に共通する特性を狙って攻撃するものが多かった。代表的なのが増殖スピードが速い細胞を攻撃する薬で、毛髪が抜けるなど副作用が強く、薬への耐性ができるという問題もあった。

 ゲノム創薬では、こうした遺伝子の働きを抑えることで鋭い効果を発揮する新薬をつくる。「約150種類の遺伝子について、がんとの関係を明らかにしていく」(がん研究センターの後藤功一氏)方針だ。

 一部でがんの新薬を実用化する動きも出始めた。中外製薬は2月に悪性黒色腫と呼ばれる難治性の皮膚がんの治療薬「ゼルボラフ」を発売した。悪性黒色腫患者の50%は「BRAF」と呼ばれる遺伝子の異常があり、ゼルボラフはこの異常のある患者が対象だ。他にも肺がん治療薬などで遺伝子を標的にした抗がん剤の開発に注力している。エーザイも米子会社のH3バイオメディスンを通じて、遺伝子とがんの関係から新薬を作り出す取り組みを進めている。2月には3万5000人の遺伝情報を持つ米医療ベンチャー、ファンデーションメディスンと提携した。

▼遺伝子解析技術が進歩
 ゲノム創薬は日本でも長らく期待されているが、資金力などで欧米勢に劣る日本の製薬会社は実現できずにきた。遺伝子の解読や病気との因果関係の特定にも時間がかかった。ここにきて実用化が近づいたのは、高速で遺伝情報を解読できる装置「次世代シーケンサー」の普及など技術の進歩によるところも大きい。

 エーザイの大和隆志執行役は「多くの原因遺伝子が分かってきたことで、ゲノム創薬が芽吹き始めた」と話す。

 もう一つの理由が、製薬産業をめぐる状況の変化だ。高血圧や糖尿病といった生活習慣病の大型薬は出尽くし、特許も切れつつある。がんは依然致死率が高く、効果の高い抗がん剤は医療現場で待ち望まれている。

 成長持続へ、ゲノムを活用した抗がん剤の開発に照準を合わせる動きが広がりつつある。今やがん分野は新薬開発の主戦場で、政府も成長戦略のなかでがん分野での創薬支援を明記している。

 難点は高額な医療費だ。特定の遺伝子を標的にするゲノム創薬は対象となる患者数が少ない。開発費を回収するには、患者1人当たりの薬剤費を高くせざるを得ない。例えば中外のゼルボラフは1カ月120万円に上る。患者だけでなく、国の財政にも大きな負担がかかる。今後は研究開発の効率化や薬価の抑制も課題になる。

▼ゲノム創薬とは
 体の設計図に相当するヒトの遺伝情報(ゲノム)の解読結果を活用して医薬品を開発する手法。大量の化学物質の中から効果がありそうな物質をふるいにかける従来の方法に比べ、新薬候補を効率よく見つけ出せるといわれる。

 病気の仕組みを遺伝子やたんぱく質レベルで解明した上で候補を探すため、がんなどの難病の治療効果は大きくなると期待されている。抗がん剤ではがん細胞だけを選んで攻撃するため、副作用も小さくなる。

 研究にはコンピューターを駆使して大量のデータを分析する情報技術も重要になる。


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