〔15.3.19.日経新聞:企業2面〕
ホンダが再び成長できるか、岐路に立っている。2014年度の車の世界販売は当初計画から40万台近く下振れする。品質問題や競争激化で収益回復は滞る。トヨタ自動車などライバルに対抗し「技術のホンダ」は復活できるか。6月に交代する伊東孝紳社長の6年間を振り返りながら再成長への道筋を探る。
「シビック」一新
主戦場の米国でホンダの針路を左右する重要車種の投入が迫る。9月にも発売する小型セダン「シビック」。これを皮切りに「アコード」など北米の主力車種を次々と新型に切り替える。シビックは次世代商品群の競争力を占う試金石となる。
「デザインでも燃費でもすごくいい車に仕上がった」(幹部)。新シビックは車の根幹のプラットホーム(車台)やエンジンから一新し、内装の質も高める。新車販売の2割を占めるシビックが成功すれば米国事業に活気が戻る。
伊東社長の世界戦略のキーワードは「6極経営」だった。日本、北米、アジアなど地域ごとのニーズに即した車を開発し、地域別の事業本部が自立して成長を図るシナリオだ。特に新興国での販売拡大に力を入れ、東南アジアやインドに割安な小型車を相次いで投入、攻勢をかけた。
結果は数字にも表れている。今年度のアジア販売は143万台と金融危機前の07年度からほぼ倍増する見通し。営業利益も2倍の2500億円を超えそうだ。ところが北米が誤算だった。台数は辛うじてほぼ横ばいだが、営業利益は2300億円前後に半減する。
アジアで上乗せした以上の利益を北米で失った。ゼネラル・モーターズ(GM)など米大手が復活し、韓国・現代自動車も台頭。ホンダのドル箱だったセダンや小型SUV(多目的スポーツ車)に攻め込んできた。対抗上ホンダは販促費用が膨らみ、以前のような高収益を出せないでいる。
北米で巻き返せるか。11年の前回のシビック刷新時、ホンダは内装などを有力誌に酷評され、たった1年半で大規模な設計変更を迫られた。次期社長の八郷隆弘常務執行役員は2月の交代会見で「6極の事業運営を進化させる」と強調した。北米で反転できれば連結営業利益で初の1兆円も視界に入る。できなければ停滞が長引く恐れもある。
タカタ問題が影
伊東社長は09年6月の就任後、金融危機対応に奔走。大型エンジンなどの開発をやめ、各地で新工場の稼働を遅らせた。10年度に純利益でトヨタやNTTを抜き初めて国内首位になった。東日本大震災やタイ洪水も克服、黒字を出し続けた。
だが、北米で元気がなくタカタ問題も抱える今のホンダの再成長に株式市場はまだ確信を持てないでいる。足元の時価総額は金融危機前を14%上回る約7兆4800億円。68%増のトヨタや53%増の日産自動車に出遅れている。
ホンダは販売台数で世界8位。「トヨタなどには規模で及ばず、ニッチ(隙間)メーカーにも戻れない」(ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表)。世界的な再編が進む中で、孤高を貫いてきたホンダ。八郷次期社長がホンダをどう染めるか、最初の一手をライバルは注視している。
ホンダが再び成長できるか、岐路に立っている。2014年度の車の世界販売は当初計画から40万台近く下振れする。品質問題や競争激化で収益回復は滞る。トヨタ自動車などライバルに対抗し「技術のホンダ」は復活できるか。6月に交代する伊東孝紳社長の6年間を振り返りながら再成長への道筋を探る。
「シビック」一新
主戦場の米国でホンダの針路を左右する重要車種の投入が迫る。9月にも発売する小型セダン「シビック」。これを皮切りに「アコード」など北米の主力車種を次々と新型に切り替える。シビックは次世代商品群の競争力を占う試金石となる。
「デザインでも燃費でもすごくいい車に仕上がった」(幹部)。新シビックは車の根幹のプラットホーム(車台)やエンジンから一新し、内装の質も高める。新車販売の2割を占めるシビックが成功すれば米国事業に活気が戻る。
伊東社長の世界戦略のキーワードは「6極経営」だった。日本、北米、アジアなど地域ごとのニーズに即した車を開発し、地域別の事業本部が自立して成長を図るシナリオだ。特に新興国での販売拡大に力を入れ、東南アジアやインドに割安な小型車を相次いで投入、攻勢をかけた。
結果は数字にも表れている。今年度のアジア販売は143万台と金融危機前の07年度からほぼ倍増する見通し。営業利益も2倍の2500億円を超えそうだ。ところが北米が誤算だった。台数は辛うじてほぼ横ばいだが、営業利益は2300億円前後に半減する。
アジアで上乗せした以上の利益を北米で失った。ゼネラル・モーターズ(GM)など米大手が復活し、韓国・現代自動車も台頭。ホンダのドル箱だったセダンや小型SUV(多目的スポーツ車)に攻め込んできた。対抗上ホンダは販促費用が膨らみ、以前のような高収益を出せないでいる。
北米で巻き返せるか。11年の前回のシビック刷新時、ホンダは内装などを有力誌に酷評され、たった1年半で大規模な設計変更を迫られた。次期社長の八郷隆弘常務執行役員は2月の交代会見で「6極の事業運営を進化させる」と強調した。北米で反転できれば連結営業利益で初の1兆円も視界に入る。できなければ停滞が長引く恐れもある。
タカタ問題が影
伊東社長は09年6月の就任後、金融危機対応に奔走。大型エンジンなどの開発をやめ、各地で新工場の稼働を遅らせた。10年度に純利益でトヨタやNTTを抜き初めて国内首位になった。東日本大震災やタイ洪水も克服、黒字を出し続けた。
だが、北米で元気がなくタカタ問題も抱える今のホンダの再成長に株式市場はまだ確信を持てないでいる。足元の時価総額は金融危機前を14%上回る約7兆4800億円。68%増のトヨタや53%増の日産自動車に出遅れている。
ホンダは販売台数で世界8位。「トヨタなどには規模で及ばず、ニッチ(隙間)メーカーにも戻れない」(ナカニシ自動車産業リサーチの中西孝樹代表)。世界的な再編が進む中で、孤高を貫いてきたホンダ。八郷次期社長がホンダをどう染めるか、最初の一手をライバルは注視している。