〔15.3.18.日経新聞:企業1面〕
修理体制を批判した中国のテレビ番組
日産自動車が主力市場の中国で思わぬ試練に直面している。消費者に絶大な影響力を持つ国営中央テレビ(CCTV)の特別番組で「日産の修理対応には問題がある」とやり玉に挙げられ、販売店にはクレームが相次いだ。中国事業を取り仕切っていた合弁幹部が「反腐敗」で摘発され、競争激化で中国販売苦戦が続く中での新たな逆風。日産の苦悩が続く。
「おたくもやってるんだろ」。CCTV特番が放映されたのは15日夜。日産は即座に謝罪したが、安徽省合肥市の日産販売店では2日たった17日までに、十数件のクレームが入った。営業担当者がつぶやく。「ただでさえ売れ行きが鈍いのに今後どうなるのか……」
CCTVは毎年「世界消費者権利デー」にあわせて「3.15晩会」を放送している。年間視聴率で1、2位を争う人気で米アップルなどの品質問題を暴いて海外でも知られるようになった。今年の目玉になったのが日産や独フォルクスワーゲン(VW)の「修理費水増し請求」問題だ。
「人間と一緒で風邪をひいたまま仕事をすれば肺炎になるんですよ。分かります?」。日産販売店の担当者が答える。番組取材班がプラグを外して持ち込んだところ、法外な修理費を請求された様子を隠し撮りした映像だった。番組は他の外資販売店も批判したが、真っ先に映り一番長く映っていたのが「NISSAN」のロゴ。「だますなんて最低」。17日になってもネット上で怒りの声が止まらない。
日産にとって中国は世界販売の2割を占める主戦場だが、逆風にさらされている。昨年12月。合弁の東風日産乗用車に衝撃が走った。カルロス・ゴーン社長の信頼も厚かった中国人幹部、任勇副総経理が突然当局に摘発されたのだ。任氏は日産の中国事業を仕切っていたとされ大混乱が続く。中国販売も主力の「ティーダ」や「サニー」が振るわず、2014年は0.5%の増加にとどまった。まさに特番は「弱り目にたたり目」だ。
CCTV関係者は明かす。「今年は中型車『サギター』などで車軸断裂事故が相次ぎ大規模リコールを実施したVWの品質問題を本命視していた」。なぜ日産は狙われたのか。
「VWは中国の新エネ車普及をけん引し、技術革新で大きな役割を果たすことを約束します」。16日、ドイツのVW本社。見学に訪れた中国の馬凱副首相と握手を交わすマルティン・ヴィンターコーン社長の姿があった。VWが中国側に働きかけて実現した「見学会」。VWは中国での生産能力を1.4倍に増やすほか、中国が技術移転を求める新型エコカーを投入する。「『3.15晩会』対策の一環だったのでは」との臆測も漏れる。
翻って日産。ゴーン社長は久しく訪中しておらず、頼みの合弁相手の東風汽車も仏プジョーシトロエングループと資本提携したことで日産・ルノーと距離を置き始めたとの指摘もある。最終的に分かりやすい標的として俎上(そじょう)に載ってしまった――。そんな構図が浮かび上がる。
今のところ追随する中国メディアは少ない。昨年の中国シェアは4位を保った日産だが今年1~2月は米フォード・モーターに販売台数で抜かれた。ゴーン社長は今年の上海自動車ショーで久しぶりに訪中するというが、どこまで挽回できるか。 (北京=阿部哲也)
※ブログ主補記:さすがChina qualityというか、そんなことでバッシングの矛先が決まるとは…呆気にとられますね。
修理体制を批判した中国のテレビ番組
日産自動車が主力市場の中国で思わぬ試練に直面している。消費者に絶大な影響力を持つ国営中央テレビ(CCTV)の特別番組で「日産の修理対応には問題がある」とやり玉に挙げられ、販売店にはクレームが相次いだ。中国事業を取り仕切っていた合弁幹部が「反腐敗」で摘発され、競争激化で中国販売苦戦が続く中での新たな逆風。日産の苦悩が続く。
「おたくもやってるんだろ」。CCTV特番が放映されたのは15日夜。日産は即座に謝罪したが、安徽省合肥市の日産販売店では2日たった17日までに、十数件のクレームが入った。営業担当者がつぶやく。「ただでさえ売れ行きが鈍いのに今後どうなるのか……」
CCTVは毎年「世界消費者権利デー」にあわせて「3.15晩会」を放送している。年間視聴率で1、2位を争う人気で米アップルなどの品質問題を暴いて海外でも知られるようになった。今年の目玉になったのが日産や独フォルクスワーゲン(VW)の「修理費水増し請求」問題だ。
「人間と一緒で風邪をひいたまま仕事をすれば肺炎になるんですよ。分かります?」。日産販売店の担当者が答える。番組取材班がプラグを外して持ち込んだところ、法外な修理費を請求された様子を隠し撮りした映像だった。番組は他の外資販売店も批判したが、真っ先に映り一番長く映っていたのが「NISSAN」のロゴ。「だますなんて最低」。17日になってもネット上で怒りの声が止まらない。
日産にとって中国は世界販売の2割を占める主戦場だが、逆風にさらされている。昨年12月。合弁の東風日産乗用車に衝撃が走った。カルロス・ゴーン社長の信頼も厚かった中国人幹部、任勇副総経理が突然当局に摘発されたのだ。任氏は日産の中国事業を仕切っていたとされ大混乱が続く。中国販売も主力の「ティーダ」や「サニー」が振るわず、2014年は0.5%の増加にとどまった。まさに特番は「弱り目にたたり目」だ。
CCTV関係者は明かす。「今年は中型車『サギター』などで車軸断裂事故が相次ぎ大規模リコールを実施したVWの品質問題を本命視していた」。なぜ日産は狙われたのか。
「VWは中国の新エネ車普及をけん引し、技術革新で大きな役割を果たすことを約束します」。16日、ドイツのVW本社。見学に訪れた中国の馬凱副首相と握手を交わすマルティン・ヴィンターコーン社長の姿があった。VWが中国側に働きかけて実現した「見学会」。VWは中国での生産能力を1.4倍に増やすほか、中国が技術移転を求める新型エコカーを投入する。「『3.15晩会』対策の一環だったのでは」との臆測も漏れる。
翻って日産。ゴーン社長は久しく訪中しておらず、頼みの合弁相手の東風汽車も仏プジョーシトロエングループと資本提携したことで日産・ルノーと距離を置き始めたとの指摘もある。最終的に分かりやすい標的として俎上(そじょう)に載ってしまった――。そんな構図が浮かび上がる。
今のところ追随する中国メディアは少ない。昨年の中国シェアは4位を保った日産だが今年1~2月は米フォード・モーターに販売台数で抜かれた。ゴーン社長は今年の上海自動車ショーで久しぶりに訪中するというが、どこまで挽回できるか。 (北京=阿部哲也)
※ブログ主補記:さすがChina qualityというか、そんなことでバッシングの矛先が決まるとは…呆気にとられますね。