日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

G20、米中が確執 人民元安を攻撃・利上げ批判で対抗 市場の混乱巡り応酬

2015年09月06日 | 米国
(日経9/6:総合・経済面)
 【アンカラ=矢沢俊樹】20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は5日、金融市場安定に向けた協調を柱にすえた共同声明を採択し、閉幕した。世界的な株安の引き金を引いた中国に各国が集中砲火を浴びせる異例の展開となったが、市場不安の根源ともいえる米国の利上げ問題にも水面下では非難が集中した。世界経済の減速懸念が深まる中、米中両大国が激しく確執を演じ、痛み分けとなった。(1面参照)
  

 4日夕の世界経済を巡る全体会合。トップバッターに指名された中国の楼継偉財政相が演説を始めると、会場の大ホールは静まりかえった。元切り下げについて「修正は一度限りで、累積した元安圧力は解消された」などと楼氏は説明した。

 G20の演説は慣例で国際機関に始まり米、ユーロ圏と流れる。今回は日米などが「最も関心の高い」(同行筋)中国を1番手に押し上げた。

 日米やドイツの当局者は入念に「包囲網」を構築した。ルー米財務長官が「輸出でなく消費主導成長への移行が肝心」と踏み込むと、日独に続きカナダや欧州勢も次々と構造改革に注文をつけた。2時間以上に及ぶ討議をじっと聞いていた楼氏。終了後、中国の代表団はぶぜんとした表情で会場を立ち去った。

新興国も米批判
 「中国を巡る誤った臆測で世界中の投資家がおびえている。徹底した事実解明が必要だ」(ホッキー豪財務相)。中国に割いた討議時間に比べ、もう一つの焦点だった米連邦準備理事会(FRB)による米利上げを巡っては「直接(意見が)出なかった」(麻生氏)。だが実際には各国代理級の声明案協議では、1カ月以上にわたり米中による「なぐり合い」(G20当局者)の対立が続いた。

 「米が焦って利上げしようとするからだ」。G20当局筋によると、中国側は利上げが世界的なマネー変調と株安の引き金だと主張。ブラジル、インドネシアなど通貨安と株安に見舞われる主要新興国も米批判に同調した。一部の新興国側は声明でFRBの名指しを迫り、米側が猛反発した。「4日発表の米雇用統計も踏まえ経済データ次第で決める」。欠席したイエレンFRB議長に代わり、フィッシャー副議長は安全運転に終始した。

 オーストラリアなどアジア太平洋地域でも広範囲に成長減速や景気後退の兆候が見られる――。G20関係者は5日、焦りの表情を浮かべた。世界同時株安の根底は、米英などが空前の金融緩和からの出口に動き、新興国ブームを支えてきた投資マネーが逆流し始めたことがある。

中国に3つの壁
 新興国市場が苦境に陥り、「競争的な通貨切り下げの事態を招いている」とG20に参加したインド準備銀行(中央銀行)のラグラム・ラジャン総裁は明言した。特に中国人民銀は為替自由化と景気刺激、元相場安定という3つの壁に直面し「八方ふさがり」(日本の当局者)ともいえる状況だ。この点から新興国の米批判には「一理ある」(G20当局者)と同情の声も少なくない。

 米雇用が今のところ堅調なFRBも、利上げとなれば世界的な混乱を広げかねないジレンマを抱える。日本は「消費や設備投資が増加し、景気は緩やかに回復する」(麻生氏)と説明したが、難航する財政健全化や成長戦略などにはG20の厳しい視線が注がれている。

 4日午前。「世界の経済危機は続いている」。議長国トルコのダウトオール首相はG20各国に金融市場の変動増幅、新興国減速など「新たな脅威」への対応を呼びかけた。フランス銀行(中央銀行)のノワイエ総裁も講演で「金融政策ですべての問題は解決できない」とし、各国の若年失業や生産性低下、成長戦略といった難題に政治が腰を据えるのが「本筋」だと語った。だが、中国と世界株安問題を前に構造改革を巡る討議は、「脇役」に押しやられた。

(1面)
▼G20、通貨安競争を回避  共同声明、米利上げ慎重に 元安けん制、改革促す
 【アンカラ=飛田臨太郎】日米欧に中国などの新興国を含めた主要20カ国・地域(G20=総合・経済面きょうのことば)財務相・中央銀行総裁会議は5日、共同声明を採択して閉幕した。金融市場安定に向け、「通貨の競争的な切り下げを回避」する方針を明記した。焦点の米利上げを巡っては、米連邦準備理事会(FRB)の名指しを避けつつも、各国への波及を踏まえ慎重な検討を求めるよう事実上促した。(関連記事総合・経済面に)

 米利上げ観測などを背景に、資本流出に苦慮する新興国の間で自国通貨切り下げの動きが広がるとの懸念が広がっているためだ。共同声明は原則として「市場で決定される為替レート制度」への移行を改めて促す一方、競争的切り下げをけん制する表現を盛り込み、通貨安競争を阻止する構えを示した。

 声明には世界的な株安の引き金となった、8月中旬の中国人民銀行(中央銀行)による人民元切り下げを念頭に置いた文章も新たに設けた。具体的には「負の波及効果を最小化し、不確実性を緩和し、透明性を向上させる」とした。

 一方、米景気回復を背景に米FRBが年内の利上げを探っていることに関しても、「いくつかの先進国で金融引き締めの可能性がより高まっていることに留意する」と表現。米を直接特定するのは避けながらも、国際金融市場に大きな影響を及ぼしかねない利上げのタイミングを慎重にはかるよう促した。マネーの流出を懸念する新興国の米に対する不満に一定程度、配慮した格好だ。

 今回の会議は上海など中国市場の株安が世界に波及するなかで開かれた。各国の財務相・中銀総裁は市場に動揺が広がっているとの認識を共有した。声明には「信認と金融の安定を促進するため、動向を監視する」と盛り込んだ。2008年秋のリーマン・ショック時の「危機」のような表現は避けるものの、G20が協調姿勢を示すことで、市場のさらなる混乱を避ける狙いだ。

 声明はさらなる国際金融市場の混乱に備え、「新たなリスクに対処」すると協調姿勢を打ち出した。ただ、為替、金融政策を巡る調整は困難で、G20としてどこまで実効性のある施策を打ち出せるかは不透明だ。

 麻生太郎財務相は5日夕の閉幕後の記者会見で、同日の討議の合間に中国人民銀の周小川総裁と「立ち話」をしたと明らかにした。

▼きょうのことば「G20」 会議の注目度、G7より高く


▽…日米欧などの先進国に中国やインド、韓国など新興国を加えた20カ国・地域。議長は各国が持ち回りで務めており、今年はトルコが議長国に当たる。世界経済において中国など新興国の存在感が強まったことから、近年は金融市場の注目度も先進7カ国(G7)の会議よりG20の方が高い。1999年にG7の財務相・中央銀行総裁会議に中印やロシアなど13カ国・地域が参加したのを機に財務相・中銀総裁会議が始まった。

▽…首脳会議(サミット)は2008年秋のリーマン・ショック後にジョージ・ブッシュ前米大統領の呼びかけで始まった。世界経済の落ち込みへの対応策を話しあうためだった。サミットの定例化は09年のピッツバーグ・サミットで決まった。今年は11月にトルコのアンタルヤで開く。



▽…リーマン・ショック後は欧州債務危機など世界経済の問題はG20で協調して対応してきた。G20の財務相・中央銀行総裁会議では金融危機の対応や財政健全化だけでなく、途上国の開発援助や地球温暖化など幅広いテーマを話し合う。ただ参加国が多いため先進国と新興国の間で利害が対立するなど、合意形成が難しいという課題も抱えている。


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