日本株と投資信託のお役立ちノート

株や投信の運用に役立つ記事を探します。
(主に日経,ロイター,WSJから引用。賞味期限の短い記事は今後省きます)

ネットフリックス上陸(上)(下)

2015年08月08日 | コンテンツ・商標
(15.8.6.日経)
▼(上)「テレビは無料」習慣変えるか 来月2日スタート、巨額資金で独自番組強み
 動画配信の世界最大手、米ネットフリックスが9月2日に日本でサービスを始める。米国では映画やドラマが低料金で見放題というサービスが受け、4千万人超の加入者を得た。日本でも豊富な資金と独自の番組制作ノウハウを生かす考えだが、「テレビは無料」という感覚が根強い日本の視聴習慣を変える存在になれるか。米国のテレビ業界に旋風を巻き起こした同社を巡る動きを追った。
  
居間のテレビでネットフリックスを楽しむウベール・ヌウェンさん(米サンフランシスコ)

 米サンフランシスコに住むウベール・ヌウェンさん(41)は昨年、加入していたCATV最大手コムキャストのテレビサービスを解約し、ネットフリックスなどの動画配信サービスの利用に切り替えた。

 コムキャストのテレビサービスは月120ドル(約1万5千円)あまりかかるが、ネットフリックスは約12ドル(1500円)。同様の動画配信サービス「フールー」にも加入するが、合わせても20ドル程度で済む。「スポーツ中継には興味がないし、CMも見なくてよくなった。もう以前の生活には戻れないよ」と笑う。

米世帯4分の1加入
 「コード・カッター」。米国ではCATVを解約して動画配信サービスに乗り換える人をこう呼ぶ。ネットフリックスが2007年に始めたストリーミング(逐次再生)型の動画配信サービスは、いつでもどこでも好きな端末で番組を見られることなどから急成長した。同社によると米国での利用者は全世帯の4分の1に達するという。

 日本での料金は明らかにしていないが、米国と同程度で見放題になる見通し。パソコンやスマートフォンのほか、家庭用ゲーム機などインターネットにつながる機器を通じて通常のテレビでも視聴できる。一部の番組は解像度が高い「4K」にも対応する。

 米国で視聴者をひき付けたのは使い勝手や料金の手ごろさだけではない。ネットフリックスは膨大な視聴履歴の分析と豊富な資金を生かした独自番組も大きな強みとなっている。代表作の政治ドラマ「ハウス・オブ・カード」には1億ドル(約124億円)の制作費をかけた。新たな視聴者獲得に貢献し、ネット配信ドラマとしては初めて、米国の放送業界で最も権威があるエミー賞を受賞した。

フジが番組制作
 日本でもすでに独自番組づくりに向けて活発に動いている。日本法人のグレッグ・ピーターズ社長は「テレビ局や映画会社など多くの企業や個人に声を掛けている」と打ち明ける。

 「テレビ離れの懸念はあるが、やらなければさらに廃れる」。シェアハウスで同居する男女の青春模様を描いた人気作「テラスハウス」の続編などの提供を決めたフジテレビジョンの大多亮常務は強調する。吉本興業も独自のバラエティー番組やドラマの制作を決めた。

 ネットフリックスの14年12月期の売上高は55億ドル(約6800億円)で、ほぼNHKの事業収入に匹敵する。潤沢な資金を独自番組作りに投入し、さらに視聴者を集める。テレビ局などにとって自社事業と競合する懸念はあるが、豊富な番組制作資金は大きな魅力だ。今後も提供企業が増える可能性は高い。

 日本のテレビ関係者にはネットフリックスを「黒船」と呼ぶ声がある一方、無料の地上波放送に慣れた日本の視聴者を変えるのは容易ではないとの指摘も多い。そのなかで、ピーターズ氏は「一度体験してもらえれば、日本人も対価を払うことをためらわないだろう」と自信を見せる。

(15.8.8.日経)
▼(下)自由な視聴習慣 じわり 有料配信市場の伸びしろ大きく
 米ネットフリックスが9月2日から日本で動画配信を始めるが、国内にも以前から同様のサービスは存在する。現在のU―NEXTが配信を始めたのは、ネットフリックスが米国で開始したのと同じ2007年。ブロードバンドやスマートフォン(スマホ)の普及を背景に、NTTドコモなど新規参入が相次いだ。


「市民権」まだ
 しかし、日本の動画配信市場は米国などとは異なり“市民権”を得たといえるまでには成長していない。そもそも米国では有料のCATV経由でテレビを見る習慣があり、動画配信はその代替として受け入れられやすかった。

 日本の事情は異なる。メディア事情に詳しい上智大学の碓井広義教授は「広告に支えられた民間放送が充実しており、お金を払ってテレビを見るという文化が定着していなかった」と指摘する。


 変化の兆しはある。「動画配信は私の日常生活には欠かせない」。神奈川県鎌倉市に住む会社員、高橋恵さん(29)は就寝前など時間があれば、スマホで国内外のドラマや映画を楽しむ。視聴時間は1日平均2時間程度。地上波テレビはほとんど見ていない。「自分の好きな時間に好きな場所で見られる」という動画配信が手放せない。

 NHK放送文化研究所が一般視聴者を対象に実施した15年の調査では、1日にテレビを見る時間が1985年の調査開始以来初めて短くなった。逆に動画を含めたインターネットや録画番組を見る人は増加。スマホなど番組を見る手段の多様化もあって、「決まった時間にテレビを見る」という習慣は薄れつつある。

地上波と融合
 日本テレビ放送網は14年4月、ネットフリックスのライバルである米動画配信大手、Hulu(フールー)の日本事業を買収した。フールーは11年から日本でサービスを始め、約60万人の会員を持っていた。日テレは買収後に日本人になじみのあるドラマなどを充実させ、会員数を100万人以上に増やしている。

 6月には俳優の唐沢寿明さんを起用した独自ドラマ「ラストコップ」の第1話だけを日テレの地上波で放送。第2話以降はフールーで配信するなどテレビと動画配信の融合にも力を入れる。

 日本映像ソフト協会などの調べによると、14年の有料の動画配信サービスの市場規模は614億円。DVDなどの販売やレンタルを含めた映像ソフト全体の約1割にとどまる。動画配信の伸びしろは大きいとも言える。

 フールーの日本事業の運営会社、HJホールディングス(東京・港)の船越雅史社長は「日本では動画配信サービスの認知度はまだ低い。市場拡大の余地は大きく、ネットフリックスの参入がきっかけになれば」とライバル登場を歓迎する姿勢を示す。

 日本は世界有数のブロードバンド大国でもあり、動画配信のインフラは整っている。碓井教授は「若者を中心にコンテンツにお金を払うことに抵抗感が薄れている」としたうえで、「動画配信サービスは着実に広がる」と予想する。

 今後の本格的な普及に向けて最も重要なのは番組コンテンツの充実だ。ネットフリックスが有力な独自番組を前面に出して米市場を席巻したように、日本勢を含めた各社の競争が本格化する。

 村松洋兵、細川倫太郎、シリコンバレー=小川義也が担当しました。


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