ばぶちの仕事しながら司法試験を突破し弁護士になりました

仕事をしながら司法試験に合格したばぶち(babuchi)の試験勉強記録+その後です。

勝手な問題:インターネット上の掲示板の発言の匿名性を不可とする立法

2006年09月07日 00時58分09秒 | 憲法
勝手な問題
インターネット上の掲示板の発言の匿名性を不可とする立法は憲法に違反しないか?


 インターネット上の掲示板での発言は表現の自由の一環として21条1項で
保障される。
 ここで、表現の自由は、自己表明をして自己の人格を形成する(自己実現)、
また、民主政の基礎となる政治的意思形成(自己統治)に資する重要な権利で
ある。
 また、インターネット上の掲示板における発言は、近年のマスメディアの
発達により受け手が大多数となった国民にとって重要な数少ない自己発言、
自己表明の場であり、かかる自由に対する制約は必要最小限度でなければな
らない。

 もっとも、発言の自由も絶対無制約ではなく、人権相互の矛盾・衝突を調
整する実質的公平の原理たる「公共の福祉」(12、13条)による制約は許容さ
れるべきである。

 しかし、上記表現の自由は、自己統治の価値を図る重要な権利であり、い
ったん破壊・侵害されれば民主政の過程で回復困難であるため、かかる自由
への制約の合憲性の判断は、厳格にすべきである。具体的には、目的が必要
不可欠であり、手段が必要最小限度でなければならないというべきである。

 これを上記立法について検討すると、立法目的は発言の匿名性により誹謗、
中傷が後を絶たず、これに対する躊躇、特定に資するという、他者の人権(
名誉権)侵害の防止目的であり、安全・安心なネットワーク社会を構築する
上で必要不可欠であるといえる。

 では、手段についてはどうか。
 安全・安心なネットワーク社会構築のため、匿名性を不可とするのではな
く、特定することが主要目的であり、プロバイダ、掲示板提供者等のログの
保存を強制することで、何らかの人権侵害が発生した場合にログ等の資料提
供を義務付けることで特定することは可能である。また、特定の可能性から
人権侵害足りえる発言を控えようとする心理は働くため、匿名性を義務付け
るという手段は必要最小限度とはいえない。

 よって、本立法は違憲である。

 なお、現在プロバイダ責任法があるため、掲示板への書き込みの特定はあ
る程度は可能である。