伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

行政経営、地方政治、そのほか人生にプラスの楽しいこと eメールアドレスkucctada@mail.goo.ne.jp

事業仕分けの評価

2012-12-26 17:07:22 | 事業仕分け 住民協議会 構想日本

(事業仕分け)

慶応大学上山教授は「公共経営の再構築」(2012.9)で、
民主主義の限界、資本主義の転換点、地域主権、
行政改革、新しい公共経営などについて述べています。

その中に「事業仕分け」を評価する、
という項目がありました。

私自身は、民主党政権になる以前に、
群馬県庁に勤めながら事業仕分けの仕分け人となり、
地方自治体の仕分けを行ってきました。

その後、県庁を早期退職し、現在は市議会議員ですが、
構想日本の「仕分け人」は継続しています。

事業仕分けは民主党政権になって
国の省庁を対象に行われるようになってから、
マスコミや国民に広く認知されました。

しかし、実はそれよりもずっと以前から、
政策シンクタンク「構想日本」が、
全国の自治体から依頼を受けて行っていました。

上山氏は「公共経営の再構築」の中で、
革新的な手法と評価しつつも、
事業仕分けの問題点を2つ指摘しています。

 1 事業仕分けを予算編成作業に直結させたことに由来する問題。
 2 政策の妥当性は評価できない。



(仕分けと予算の問題)

上山氏は先ほどの著書の中で、
「あらかじめ予算削減の目標額を設定すべきでない」
「(財務省の)主計局主導はおかしい」などの批判は、
年内の予算編成に向けて余裕の無いスケジュールで
事業仕分けを行ったことから生じたと指摘しています。

事業仕分けはそもそも論で考えます。
事業の必要性を審査し、
次に実施すべき主体を考え、やり方を考えた後に、
ようやく予算の見直し方針が出てくる手順です。

しかし、民主党が行った事業仕分けでは、
いきなり削減目標3兆円を掲げて、次年度予算の査定に使われたと
上山教授は本の中で述べています。

予算と事業仕分けの関係については、
事業仕分けを行ってきた構想日本の代表で、
内閣府の行政刷新会議の事務局長を兼ねている加藤秀樹さんは
次のように述べています。(朝日新聞2009年12月10日オピニオン
  いつの間にか国の仕分けは予算査定の手段のようになってしまった。
  事業仕分けは本来「決算審査」なのだ。
  実施された事業の妥当性、効果の有無の評価に限ったもので、
  政策評価をしているわけではない。
  今後国の事業仕分けを続けるとすれば、予算と切り離したい。
  政策の仕分けは政治サイドでやる。
  我々は現場でのお金の使われ方を徹底してやる。
  事業にとどまらず、制度そのものに切り込みたい。

加藤さんの言葉によれば、
事業仕分けとは本来「決算審査」であり、
予算とは切り離すべき性質です。
その点は上山教授のお見込みの通りです。

では、あらかじめ3兆円の削減目標は示されていたのでしょうか?



(削減目標は示されていない)

2009年12月9日の朝日新聞によれば、
国の事業仕分け第1ワーキンググループのコーディネーターを務めた
井澤幸雄さんは次のようにコメントしています。

 そもそも事業仕分けの目的は、予算削減ではない。
 予算編成過程を公開することで、なぜその事業が必要なのか、
 執行に無駄がないのか、みんなを納得させる論理が必要と
 担当者に気づかせることが目標。
 3兆円削減が目標のように言われていたが、
 事務局から削減目標は示されていない。

国の事業仕分けの責任者だった枝野さんは
次のようにコメントしました。(2009年12月9日朝日オピニオン)

  仕分け対象は、私(枝野)の責任で選びました。
  財務省主導ではありません。政治はちまちました仕分けにかかわらず、
  大局を語るべきだという意見あるが、
  その発想こそが放漫財政を作った。

井澤さんのコメントによれば、
3兆円の削減目標は、示されていませんでした。
財務省主導のようにも報道されましたが、
対象事業は国会議員である枝野氏が選定したのでした。



(事業仕分けは政策の妥当性は評価できない)

上山教授の二つ目の指摘は、
「事業仕分けでは政策評価はできない」という問題です。

事業仕分けを発明した構想日本の加藤氏も先ほど引用しましたが
次のように述べています。
  いつの間にか国の仕分けは予算査定の手段のようになってしまった。
  事業仕分けは本来「決算審査」なのだ。
  実施された事業の妥当性、効果の有無の評価に限ったもので、
  政策評価をしているわけではない。

上山教授と、加藤氏も述べているとおり、
以前の事業仕分けでは、
政策そのものの評価はできませんでした。
私も同様な認識でした。

現在の内閣府行政刷新会議のホームページを見ますと、
事業仕分けの対象外とされてきた
「政策評価」についても、「提言型政策仕分け
という取り組みが昨年から始まっていました。

「提言型政策仕分け」のポイント(主な視点等)を見てみますと、
<原子力・エネルギー予算のあり方等>という項目があり、
次のようなポイントが挙げられていました。
 ●原子力関係の研究開発予算はどのくらいの額があって、
  それを使って何をしているのか。
 ●原発の立地対策とは何か。予算は何に使われてきたのか。
 ●原子力発電所での使用済核燃料の再処理や最終処分はどうなっているのか。
 ●省エネ、再生可能エネルギー利用、CO2削減を
  もっと促進するためには、どうすればよいのか。
 ●省エネ、再生可能エネルギー利用、CO2削減を
  もっと促進するためには、どうすればよいのか。etc.
どのように議論されたのか興味深いです。


(多田の考える事業仕分けの限界)

私は今年10月のブログで次のように整理しました。
行政改革のツールとして、「事業仕分け」は万能ではありません。
特定の条件下で威力を発揮します。

仕分けは自治体から審査を依頼された事業について
その政策目的に対して、事業が効果的・効率的に
成果を上げているか否かを審査するだけのものです。

したがって、次のような制約があります。
 ・依頼されない事業は審査対象外。
 ・政策目的の良し悪しは判断しない。
 ・政策目的達成のために、もっと良い事業が他にあっても提案できない。
  (仕分け人として、可能な範囲で情報提供は行っています)
 ・個々の事業の適否は判断できるが、各事業を体系化した
  総合的な評価はできない。

この項目の1番目と3番目及び4番目は、
2番目にあげた「政策目的の良し悪しは判断しない」に
付随した現象とも考えられます。

私が1番目に挙げた制約の
「依頼されない事業は審査対象外」という問題については、
現在では次のような対応がなされています。

国の各省庁は「行政事業レビュー」として
国で実施されている、5,000を超える事業全てを点検し公表しています

各府省は、ムダの削減と効率的・効果的な事業の実現を目指し、
副大臣や職員、外部有識者で構成する「予算監視効率化チーム」を中心に、
自らの事業を点検しています。
点検結果をどのように予算要求へ反映させたのか、
どのように改善の取組を行う予定かを事業毎に公開しています。

このように『事業仕分け』は万能ではありませんが、
 「国民の前で公開討議することの効用は全ての欠陥をしのいで余りある」
と上山教授は本の中で総括しています。

事業仕分けが、ムダ削減のアリバイ作りとならないために、
そして「行政事業レビュー」がお役所のお手盛り評価にならないためには、
「外部の視点」と「公開性」が大事だと私は考えます。

さて、
自民党政権となりましたが、
事業仕分けを所管している「行政刷新会議」の運命や如何。





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 尿結石のご報告 | トップ | 経済成長率を考える »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

事業仕分け 住民協議会 構想日本」カテゴリの最新記事