伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

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上毛新聞 ウラを取ったのか

2012-10-25 20:37:01 | 事業仕分け 住民協議会 構想日本


(国直轄の3国道『仕分け』で除草が手薄)

本日の上毛(ジョウモウ)新聞(群馬県の地方新聞)の一面トップは、
「国直轄の3国道『仕分け』で除草が手薄」という記事です。
購読されている方は、本紙をご確認ください。

記事の概要は次のとおり。

  国が直轄で管理する国道の中央分離帯や歩道の除草回数が、
  国の事業仕分けの影響で減り、景観の悪化や、視界が悪くなる
  ことによる安全上の問題が指摘されている。

  発端は行政刷新会議の事業仕分け。
  2009年11月、国道の維持管理費の縮減が求められ、
  国交省は10年度に除草を原則年1回にとどめる基準を設けた。
  その後、全国各地で反発の声が上がり、翌11年度には
  回数の基準をなくしたが、抑制傾向は維持。

  除草回数の減少は、自治体が払う直轄事業負担金の
  廃止が影響していると見る向きもあるが、
  国土交通省高崎河川国道事務所は
  「除草の回数が減ったのは事業仕分けによる影響で、
  直轄負担金の廃止とは関係ない」と説明。

ネットにも短い記事が掲載されています。



(ウラを取る)

元、世界的通信社ロイターの記者だった方の言葉です。

 ウラを取るのは記事を書く上での基本中の基本だ。
 事実を報道する際、ウラが取れなければ記事にしないのが鉄則だが、
 最近のマスコミをみると、ウラを取ってないとは言わないまでも、
 甘い例が多いと感じる。
 (中略)
 当事者から事実を聞くことができれば、それが一番・・・
 聞けない場合は周辺取材を重ねて事実を掘り起こしていくが、
 それは慎重に行わなければならない。
 私が属したロイターでは、あらゆる事象に関して、
 コメントは複数のニュースソースから取るルールが徹底され、
 少しでも類推となる余地がある時は記事にしなかった。

記事の大見出しは
「国直轄の3国道『仕分け』で除草が手薄」ですので、
まるで「事業仕分け」が国道の除草が年1回でよいと
決めたかのような印象を受けました。

記事を注意深く読みますと、
「発端は行政刷新会議の事業仕分け。
 2009年11月、国道の維持管理費の縮減が求められ、
 国交省は10年度に除草を原則年1回にとどめる基準を設けた。」
と書かれています。

除草を原則年1回にとどめる基準を作ったのは、
事業仕分けの場ではなく国交省です。

では、仕分けの議論では、
除草が年1回で良いという議論が行われたのでしょうか?
内閣府の行政刷新会議が行う事業仕分けは、
私も傍聴しましたが、
専門家が集まって論理的に議論する場です。

その人たちが、国道の除草が年1回で十分だと
言うはずが無いと思いましたので、
行政刷新会議の記録(コメントと議事録)を確認してみました。



直轄国道の維持管理 事業仕分けの評価コメント

1 WGの評価結果   
 予算要求の縮減(10~20%)

 (多田コメント)
 直轄国道の維持管理事業の事業仕分けを行ったワーキンググループの
 評価結果では、事業費総額の10~20%縮減を求めているだけですね。
 

2 とりまとめコメント 
 本事業については、発注・入札方法の見直し、公益法人の問題、
 管理水準・基準の見直しをしっかりと行うべき。
 当ワーキングとしては、これにより、少なくとも10~20%程度の
 予算要求の縮減を行うことを結論とする。

 (多田コメント)
 事業費を縮減できる根拠として、
 「発注・入札方法の見直し、公益法人の問題、
  管理水準・基準の見直しをしっかりと行うべき。
  (中略)これにより、少なくとも~」と述べており、
 「除草回数を減らすことにより縮減せよ」とは言っていません。 


3 評価者個々のコメント
・ 入札方法の見直しと管理水準の見直しで
  最低10%程度は縮減すると思われる。
・ 統一基準をつくり、一社入札をなくす努力をすべき。
・ 公益法人による「中抜き」を全てチェックし、無くすべき。
・ 公益法人は廃止の方向とすべき。
・ ずさんな発注が行われている可能性あり。
  公益法人もだが民間もありうるのではないか。
・ 修繕費のプライオリティづけの基準を
  学問的知見に基づいて明確化する必要あり。
・ 道路整備事業とセットで考えるべき(予算を合わせ適切な配分とすべき)
・ 自治体と共同化し、一体的に維持管理を進めることでコスト削減が可能。
・ 包括的業務委託又は自治体管理を拡大すべき。
・ 道路技術保全センターにかかる第三者委員会の検証については、
  きちんとスケジュールを決めて、早急に行うべきである。

 (多田コメント)
 個々の評価者が書いたコメントにも、除草回数を減らすことを
 取り上げた委員はいません。



(仕分けの議事録)

新聞記事で「事業仕分けで除草が手薄」と報道するからには、
上毛新聞社は、少なくとも事業仕分けの議事録で
仕分けのやり取りを確認していることと思います。
(議事録はコチラ)


議事録は21ページありますので、
おおまかに要約します。



(事業の内容)
進行役から事業内容の説明を求められ、国土交通省の担当者が
事業内容を説明しました。
・直轄国道の維持管理とは、特に日常行っているのは維持工事。
・道路パトロール、清掃、修繕、アセットマネージメントなど。
・事業費は2300億円。維持費は地元と協議して、
 できるだけ清掃その他の頻度を減らして数年前に比べて3割削減している。

 
(多田コメント)
国土交通省によれば、事業仕分けを行う数年前から、
清掃その他の頻度を減らすことにより
経費を3割も削減してきたことを、確認できました。

あとは上毛新聞が指摘するように
事業仕分けでも、更に除草の回数を減らす議論が行われたのか
確認してみましょう。



(国道は自治体より割高)

事実関係を確認しています。
国道20号線と、都が管理する246号線を比較すると
国のほうが2割管理費が高い。
コスト高の背景になっている受注関係を仕分けで議論する。



(天下り団体の受注と丸投げ)

国道の地下の空洞調査を、国土交通省のOBが理事長に
天下っている道路保全技術センターが受注していた。
役員17名のうち3名が国交省OB。
役員の平均年収は1633万円。
受注した業務はほとんど外注していた。
ここは何もしないのにスルーするだけで、
何億もお金が落ちている可能性がある。

維持管理費のコストが高いことについて話しているが、
現場の皆さんはたたかれて安い中でやっている。
その一方、公益法人が間に入って受注し
受けた仕事は丸投げする。ピンはねされている。
そういう構造があるのではないかと問題視している。

津川:委託の何割が公益法人と契約しているのか?
回答:巡回は95%が公益法人と契約。
   除雪、防雪、除草はすべて民間に発注している。
   空洞調査は88%が公益法人。点検は6%。
   道路管理補助は62%が公益法人。   

当時は東京で道路の大陥没事件が起こり、
 空洞調査していた天下り団体が問題となっていました




(国道管理の職員体制)

政野:国土交通省の道路局はどのように職員を配置しているのか?
回答:国道の維持管理は出張所単位でおこなっている。
   出張所は全国230箇所。平均65km管理しているが
   人員は1出張所あたり4人しかいない。100km近い延長を
   4人で管理するのは不可能なので、ほとんど外部委託している。



(国が直接管理する必要性は?)

枝野:管理業務の統一基準はないのか?
回答:清掃などは地元と協議しなければならない。

枝野:地元と相談しなければならないことは地方に任せればよい。
   国が中央集権で一括して行うのは、国の高い基準でやらなければ
   いけないから国がやるのではないですか?その理屈は地方に渡さない
   という話と矛盾する。事務所ごとにやるなら都道府県に移管すべき。
回答:新しい更新や、アセットマネージメントは基準を作って行っている。

枝野:では、それ以外の業務を地方に渡せばいい。
   百歩譲って国が統一的にやるなら地方事務所でやることについても
   本省でちゃんと基準をつくってください。
回答:基準はつくります。

枝野:公益法人以外でも、(相手が1人しかいない)1者入札は
   どれくらい残っていますか?
回答:7割程度残っています。今後は総合評価みたいな
   価格重視で行うので、民間の入札は確実に増えると思う。

政野:穴ぼこ調査のような、いい加減な仕事をして、
   (経費は)地方よりも2割高いというのは許されない。
馬渕国交相副大臣:今日の話は、
   (空洞調査を受託していた)財団法人道路保全技術センターのみだが、
   独立行政法人の全面見直しを昨日からスタートした。
   公益法人に関しては抜本的に見直し、全省かけて取り組む。



(票決結果及びコメント) 議事録から抜粋。

○ 井澤進行役:お待たせしました。票決結果及びコメントにつきましては、
  枝野議員から発表させていただきます。

○ 枝野衆議院議員:票決の結果、廃止はありません。
  自治体、民間の判断に委ねる、自治体と思われますが、1 名。
  予算計上見送りはありません。要求どおりもございません。
  予算要求の縮減でございますが、20% 縮減が1 名、
  10% 程度の縮減が2 名、その他で40~60 が1 名、
  30 が1 名、20 以上が2 名、それ以外の書き方、
  文字で書いていらっしゃる方が3 名ということでございます。
  これについては、発注、入札の在り方、公益法人の問題、
  水準、基準の設定などのところをしっかりとやっていただければ
  要求額を縮減できるという結論でございまして、
  数字のばらつきが若干ございますが、少なくとも
  10~ 20% 程度の縮減はできるというのがこのワーキング
  グループとしての結論とさせていただきたいと思います。
  以上でございます。
○ 井澤進行役:どうもありがとうございました。
  それでは、「直轄国道の維持管理」につきましては、
  これで終了させていただきます。


(多田コメント)

議事録の全てを確認しましたが、
仕分けの議論の中では、除草の回数は一度も取り上げられていません。
結論は、事業費の10~20%の縮減となりましたが、
その数字の根拠は、上記議事録(抜粋)にあるとおり、
「発注、入札の在り方、公益法人の問題、水準、基準の設定
 などのところをしっかりとやっていただければ要求額を
 縮減できるという結論」とのことです。

けして除草回数を1回にして経費を削減せよなどという
議論は行われていません。
このときの事業仕分けは、天下りの多い公益法人のあり方と、
競争入札ではない1者入札の多さが問題とされました。

また、内閣府行政刷新会議が行った仕分けに対して、
同席していた当時の馬渕国交副大臣は、
「今日の話は、財団法人道路保全技術センターのみだが、
 独立行政法人の全面見直しを昨日からスタートした。
 公益法人に関しては抜本的に見直し、全省かけて取り組む。」
と回答しています。

「国道の除草の回数が減ったのは事業仕分けのせい」と、
国土交通省が正式にコメントするのでしょうか?
高崎工事事務所の方のコメントは、
国土交通省の公式見解とはたして一致しているのか、
上毛新聞はその点は報道前に確認されているのでしょうか。


 
(大きな誤解、2位じゃだめなんでしょうか)

2009年のスーパーコンピュータに関する事業仕分けで、
蓮舫議員が
「世界一になる理由は何があるんでしょうか。2位じゃだめなんでしょうか。」
と発言したことが誤解されました。(議事録15ページ目
文部科学省の担当者に対して、1位を目指すことの必要性について
説明を求めたのですが、発言の一部分だけを繰り返し報道されたので
まるで蓮舫議員が1位になる必要性を認めていないかのような
誤解を世間に広めました。

9日間、事業仕分けのワーキング・グループにはりついた
記者の感想が2009年12月1日の朝日新聞に載りました。

 山口博敬 記者(第3WG)
 官僚の説明は説得力不足。スパコンの議論を目の前で取材した限り、
 仕分け人から科学を軽視する発言はなかった。
 文部科学省の担当者が「厳しい財政の中で巨費を投じ続ける必要があるか」
 という疑問を解消できなかったから。

<多田コメント>
まったく意外な意見でした。これまでの報道では、
「仕分け人たちは科学の重要性がわかっていない」という報道ばかり。
しかし、現場でずっと聞いていた記者の感想は全然違ったのです。



(参考)「国の事業仕分け 総括」
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