
たまたま古本屋(オヲヲ書林せせらぎ店)で買った本。出張の電車の中で一気に読んだ。大林監督については、もはや説明不要ですよね。
「そうか 人が変わる 変化する 成長するって こういうことなのか」と納得しました。それは、映画「ふたり」について監督が語るくだり・・・。
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主人公の石田ひかりは、いつも学生カバンを持って歩いているのですが、これが重たいのです。普通の映画ではできるだけ軽くしようと 空のカバンに新聞紙など丸めていれておきます。
ところが僕の映画では、学校の授業はなくても、映画には映らなくても、助監督がその日の時間割をつくって、教科書やノートを入れます。
それだけでなく、ノートはちゃんと予習も復習もしてあります。助監督が一生懸命やるのです。お弁当も入っています。お弁当のおかずは富司純子さんが自分で作っていれてあります。石田ひかりさんは「あれ、ここの現場のカバンはすごく重いなあ。開けるシーンもないのに」とびっくりします。
そう言いながら開けると、教科書とお弁当が出てきます。ハッと気がつくと、今日の時間割です。ノートもたくさん書いてあります。よく見ると北尾実加と、自分の役の名のノートです。
夜中に撮影している横で 助監督さんが書いていたのは、私の宿題だったのだ。食べるシーンもないのに、お弁当にはちゃんとごはんとおかずが入っている。富司純子さんが夜中に、ソーセージと卵をジュージューやっていて「富司さん こんな夜中に食べるのですか」とからかっていたら、それは私のお弁当だったのだ。
そういうことがわかって、背筋がすっと伸びるのです。するとセリフ回しも演技もきれいになるのです。
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役者だけじゃなく、人は皆、こういう体験を通じて、変化し成長するんだね。僕も、若い後輩たちに、そのような経験をさせてあげているだろうか。背筋が自然にすっと伸びるような経験をさせてあげているだろうか?? 自省させられます。
人間っていいなあ・・・ そう思わせてくれる本でした。
もうひとつ感動的なくだり。映画「さびしんぼう」を見た明治生まれのおばあちゃんの話・・
これはまた後日にね。
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