紅旗征戎

政治、経済、社会、文化、教育について思うこと、考えたこと

ルパート・ブルック 「兵士」

2005-02-23 16:21:17 | 
兵士

もし僕が死んだら、僕についてこのことだけ覚えておいてほしい。
異国の片隅に
永久にそこだけは英国だという土地があることを。
豊かな大地の豊かな土が隠されていることを。
その土は英国に生を受け、育まれ、物心をつけ、
かつては花を愛し、闊歩した若者の土なのだ。
英国の空気を吸い、川で身をすすぎ、太陽を浴びた、英国の若者の土なのだ。

そしてもしすべての罪が清められ、永遠の命の鼓動が感じられるならば
英国で育まれた思いを故国のどこかへ戻してくれるであろうことを思ってほしい。
故国の光景や音響、幸福な日々の幸せな夢を
友から学んだ笑いを、そして英国の空の下に、平和のときに宿ったやさしさを。


(Rupert Brooke, "The Soldier" in 1914 and Other Poems, 1915、拙訳)

門外漢の私が詩に勝手に解釈をつける第三弾だが、このルパート・ブルック(1887~1915)は第一次大戦に参戦し、病死したイギリスの詩人である。この詩はイギリス人読者の愛国心を大いに掻き立て、そのため戦後は戦争を美化していると批判もされたようである。しかし言葉を読むと、若者らしい平和な生活を夢みながら、戦場で散るかもしれない、散らざるを得ない無念を偽らずに詠んだ反戦歌とも読むことができるだろう。戦場となって奪われる命も、戦地に出征して命を落とす若者も、ともに平和を願わないわけがない。異国の地に母国の片隅を作るよりも、母国の発展のために若い命を生かしてほしい、そんな思いにとらわれる一篇である。