子供は大人が「やるな」ということをやるのが好きである。いや実は大人もやっちゃいけないことをやりたいのかもしれないが、仕事や家族、様々な制約でやりたいようにできないだけなのかもしれない。
子供向けのアニメを作るのは容易ではないだろう。あまり反社会的なことを描いたら、「子供が真似をしかねないから教育的に良くない」、「やめてほしい」といったクレームがPTAなどから寄せられるだろう。かといって品行方正な子供や家族を描いて、文部科学省推薦のアニメを作っても当の子供たちは喜ばないだろう。その意味で日曜日の夜放送されている『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』といった番組は、基本的に品行方正な家族を描きながら、しかも高視聴率をとっているのはすごいことなのかもしれない。一方で、『クレヨンしんちゃん』のように本来、大人向けの漫画が子供向けのTVアニメになったものが今日的で子供の人気を得ているのも当然だろう。
1年生向けの基礎演習の時間に、アメリカの人気アニメ『ザ・シンプソンズ』と『キング・オブ・ザ・ヒル』の1エピソードを見せて、そこに描かれている家族像と社会像を日本の場合と比較してもらった。学生から、「日本と違って、大人が子供のような悪いことをしている」「家族団らんでなければならないという規範意識が乏しい」「社会風刺が多い」「描かれている世界が反社会的だ」といった感想が多く寄せられた。この『シンプソンズ』は日本のケーブルテレビでもWOWOWやフォックス・ジャパンなどで放映され、よく知られるようになった。最近出版された橋本二郎『固有名詞を通じて見たアメリカン・イメージ連想事典』(研究社)でも、「90年代反体制文化の象徴としての家族像を、ブラックユーモアをまじえ、社会風刺的に描いたアニメーション」と紹介している。実際、見ていると原子力発電所に勤める、子供顔負けのいたずら好きの父親ホーマー、いたずら好きの息子バート、家族思いの母親マージ、天才児で常識的な妹のリサ、とキャラクターを並べているとどっかで聞いた話だと思い出す。そう、日本の70年代のギャグ漫画『天才バカボン』である。
学生たちはアメリカ・アニメの子供のような父親と反体制的な風刺ストーリーに驚いたようだが、『バカボン』はまさにその世界である。『バカボン』は、レレレのおじさんやうなぎイヌ、といったシュールなキャラクターが出てくるナンセンス・ギャグと思われがちだが、学生運動や当時のウーマン・リブ運動、連合赤軍浅間山荘事件、最後の日本兵・横井庄一さん帰還といったその時代背景を明らかにパロディ化したエピソードが多く、ピストルを不必要に連射する「めんたまつながりのお巡りさん」が「暴力は国の宝です」と言うのに対して、バカボン・パパが「警察は国民がお金を出し合って飼っているのだから、国民にピストルをむけてはいけないのだ」というようなドキリとするような権力批判の台詞吐いたりする、社会風刺色が強い漫画である。4回テレビアニメ化されたが、原作のコミック版と違って、しかも時代が下るごとに風刺色は薄れて、ただバカボン・パパのナンセンスな行動を笑う、比較的無害な子供向けのアニメになってきた。
子供たちもニュースを見るし、世相の影響を受けている。社会派ギャグが子供にとってつまらないものとは限らないし、成長してからそのギャグの意味に気づくこともあるだろう。波平が愛する盆栽のような『サザエさん』の世界を保護していくのもいいが、批判精神を刺激する『ザ・シンプソンズ』、『天才バカボン』的な子供アニメがもっとあってもいいような気がする。ただハチャメチャで、外の世界とは摩擦を起こしているように見えても、いずれの家庭も家族同士はとても暖かいのが救いで印象的だ。(イメージの左はバカボン、右はシンプソンの家族)
子供向けのアニメを作るのは容易ではないだろう。あまり反社会的なことを描いたら、「子供が真似をしかねないから教育的に良くない」、「やめてほしい」といったクレームがPTAなどから寄せられるだろう。かといって品行方正な子供や家族を描いて、文部科学省推薦のアニメを作っても当の子供たちは喜ばないだろう。その意味で日曜日の夜放送されている『サザエさん』や『ちびまる子ちゃん』といった番組は、基本的に品行方正な家族を描きながら、しかも高視聴率をとっているのはすごいことなのかもしれない。一方で、『クレヨンしんちゃん』のように本来、大人向けの漫画が子供向けのTVアニメになったものが今日的で子供の人気を得ているのも当然だろう。
1年生向けの基礎演習の時間に、アメリカの人気アニメ『ザ・シンプソンズ』と『キング・オブ・ザ・ヒル』の1エピソードを見せて、そこに描かれている家族像と社会像を日本の場合と比較してもらった。学生から、「日本と違って、大人が子供のような悪いことをしている」「家族団らんでなければならないという規範意識が乏しい」「社会風刺が多い」「描かれている世界が反社会的だ」といった感想が多く寄せられた。この『シンプソンズ』は日本のケーブルテレビでもWOWOWやフォックス・ジャパンなどで放映され、よく知られるようになった。最近出版された橋本二郎『固有名詞を通じて見たアメリカン・イメージ連想事典』(研究社)でも、「90年代反体制文化の象徴としての家族像を、ブラックユーモアをまじえ、社会風刺的に描いたアニメーション」と紹介している。実際、見ていると原子力発電所に勤める、子供顔負けのいたずら好きの父親ホーマー、いたずら好きの息子バート、家族思いの母親マージ、天才児で常識的な妹のリサ、とキャラクターを並べているとどっかで聞いた話だと思い出す。そう、日本の70年代のギャグ漫画『天才バカボン』である。
学生たちはアメリカ・アニメの子供のような父親と反体制的な風刺ストーリーに驚いたようだが、『バカボン』はまさにその世界である。『バカボン』は、レレレのおじさんやうなぎイヌ、といったシュールなキャラクターが出てくるナンセンス・ギャグと思われがちだが、学生運動や当時のウーマン・リブ運動、連合赤軍浅間山荘事件、最後の日本兵・横井庄一さん帰還といったその時代背景を明らかにパロディ化したエピソードが多く、ピストルを不必要に連射する「めんたまつながりのお巡りさん」が「暴力は国の宝です」と言うのに対して、バカボン・パパが「警察は国民がお金を出し合って飼っているのだから、国民にピストルをむけてはいけないのだ」というようなドキリとするような権力批判の台詞吐いたりする、社会風刺色が強い漫画である。4回テレビアニメ化されたが、原作のコミック版と違って、しかも時代が下るごとに風刺色は薄れて、ただバカボン・パパのナンセンスな行動を笑う、比較的無害な子供向けのアニメになってきた。
子供たちもニュースを見るし、世相の影響を受けている。社会派ギャグが子供にとってつまらないものとは限らないし、成長してからそのギャグの意味に気づくこともあるだろう。波平が愛する盆栽のような『サザエさん』の世界を保護していくのもいいが、批判精神を刺激する『ザ・シンプソンズ』、『天才バカボン』的な子供アニメがもっとあってもいいような気がする。ただハチャメチャで、外の世界とは摩擦を起こしているように見えても、いずれの家庭も家族同士はとても暖かいのが救いで印象的だ。(イメージの左はバカボン、右はシンプソンの家族)