紅旗征戎

政治、経済、社会、文化、教育について思うこと、考えたこと

韓流ドラマとソープオペラ

2005-02-10 16:00:50 | 映画・ドラマ
いまさらだが、韓国ドラマが日本のテレビを席巻している。私が住む関西地区では、土曜日には、真実(読売TV 12時~)、天国への階段(関西TV 14時半~)、美しき日々(NHK 23時10分~)といずれも『冬のソナタ』のヒロインとなった女優のチェジウが主演格をつとめるドラマを放送している。同じ日に同じ女優が出るドラマが放送局が違っても三度も放送されることは日本の人気女優でも極めて稀なのではないだろうか?

衛星放送やケーブルチャンネルで細々と放映されていた頃と違って、韓国ドラマが地上波でこれほど放送されるようになるとは2、3年前までは誰も予想しなかったに違いない。韓流ドラマブームについてはすでに書きつくされているので、素人の私が口を挟むまでもないが、今まで海外ドラマの主流だったアメリカのドラマや日本の(死語になりつつある)トレンディドラマと比べると、「親の因果が子に報い」というような、どちらかという親の過去の過ちに子供たちの運命が左右される点や、日本のように先輩-後輩関係が描かれていること、「すれ違い」が起こりにくい携帯電話時代を反映してか、交通事故で記憶喪失になるというプロットを何故か多用している点などが特に目につく。しかし親子関係と愛憎劇が絡むのは何も韓国ドラマの専売特許ではなく、メロドラマの定番と言えるかもしれない。

アメリカの昼メロはソープオペラと呼ばれている。これは昼のメロドラマのスポンサーをP&Gなどの石鹸メーカーが務めていたからである。日本の昼メロのCMでもやはり洗剤メーカーなど主婦層をターゲットしている事情は同じである。日本の昼メロと違う点は、30年も続く息の長い番組があることだ。NBCで放送されているDays of Our Livesは、なんと1965年から放送されているので、今年で40周年を迎える。驚くべき点は長いということだけでなく、月曜から金曜日まで毎日1時間放送されて、しかもホートン家とブレイディ家という二つの家の間の愛憎劇を執拗に追い続けている点である。

外の世界に目を向けないのだろうか、と素朴な疑問も沸いてくるが、親から子、さらに孫へとひたすら両家の間で恋し、結婚し、憎み、裏切り、対立しているのである。こうしたソープオペラは主婦ばかり見ているのかと思ったが、留学中に大学の学部生に聞いてみると、結構、若いファンも多いことがわかった。話がなかなか進まないのでどこから見ても見出したら話がわかるつくりになっている。私も留学中によく見ていて、What's that supposed to mean?(どういうこと?何が言いたいの?)、That means a lot to me(とても感謝している)、I don't feel the same way(同じ気持ちになれない)などといった、訳すとニュアンスが伝わりにくい口語表現はこういう時に使うのかと納得しながら覚えることができた。メロドラマは、登場人物が始終、話し続けているし、喧嘩もすれば、言い訳もするし、一人で悩んだりもするし、喜怒哀楽の表現がすべて出てくるので、これほど外国語の教材にうってつけのものはないような気がする。しかしネイティブに取っては見るに耐えないほど露骨でくどいものかもしれない。

韓国ドラマも、また日本のドラマもアメリカのTVドラマの影響をうけながら作られているが、日本版になると情緒的になったり、韓国版になると因果応報が強調されたりと文化的な差異が反映される点が興味深い。映画のように磨かれ、作りこんだ作品ではなく、もっと下世話かもしれないが、世界中の人々が異なった国のソープオペラを自由に見られるようになれば、どこの国でも似たようなことで悩んだり、対立したり、喜んだりしていることがわかり、相互理解が深まるのではないかと思う。