このは紅葉のお絵かき日記

トランプ大統領・たつき監督・irodoriの味方だよ

#982 ガラパゴスの怪(9)異形のもの

2009年12月31日 | 夢日記
一昨日(12月29日)に見た夢の内容の続きです…
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「ギーーーーー」
突然ひどく大きな音がして目が覚めました。
しかし、目が覚めてすぐに止んだので何の音かわかりません。

ここに来てからどれほどの時間が経ったかわかりません。
目は少しずつ見えるようになり、体の感覚もわかりつつありました。少なくとも元の体ではない感覚が。

少しずつ床を這いずることは出来ます。しかし、首が重く、頭をもたげることが出来ず、自分の体をよく見ることが出来ません。いや、本当のところは見たくないのかも知れません。
そしてまた突如としてひどい音が。
「ギギギーーーーー」
この音は自分の体から出ている?
もしかしてこれは自分の声?
「いやー!」
そう叫んだつもりでしたが、出てくるのはトタン板を鋸で切り裂くような鋭い音。
「ギギーー!」
もはや、自分の体が完全に異形の物と成り果てているのは疑いようもありませんでした。

スピーカーからレイチェルの声。
「しばらく栄養剤を投与していないのでお腹が空いたでしょう? 食事をあげるから召し上がりなさい、ミス・コノハ」


上から何か大きな物が落とされました。鈍い音を立てて床に落ちたのは一頭の牛でした。呼吸が荒く苦しそうな様子で、今にも死にそう。

レイチェル「遠慮することはないのよ。お腹いっぱい召し上がれ」
「ギギギギギー」
こんな物が食べられるわけがない!
わたしは言いようのない恐怖から逃れるように、牛から出来るだけ遠ざかろうとしました。


必死に動くうちに、自分の体の一部が目に入りました。
手と思われる部分にはかぎ爪がある。皮膚は爬虫類のような鱗(うろこ)状。
泣きたいのに涙も出ません。
「ギギ…」
目を閉じたまま部屋の隅にうずくまり、そしていつしか眠っていました。

目が覚めたとき、あたりは血に染まり、肉や骨の欠片が散乱していました。

所長「すばらしい。大成功だな」
レイチェル「はい。龍人の脳の発達は目標レベルに達したようです。このままコノハの精神が壊れても生存可能な状態と思われます。厳密には精密検査をしてみた後の判断が必要ですが」
所長「これで龍人兵開発への道がひらけた。我々は栄光の道を見つけたのだ」

次回につづく…


#981 ガラパゴスの怪(8)鳥瞰~ちょうかん~

2009年12月31日 | 夢日記
一昨日(12月29日)に見た夢の内容の続きです…
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所長「ほかの奴は暴れたりして酷かったが、こいつはおとなしいな。今のところは落ち着いているようだ」

レイチェル「これまでの失敗からやり方を改善してきましたから、今回はうまくいきそうです。それに元々、彼女が内向的で我慢する性格であるのが幸いしているのかも知れません」

所長「すでに五体を無駄にしてしまったからな。せめて最後の一体はなんとか生き延びてもらわなければ、また開発が遅れてしまう。猿人化計画の失敗もあるから、これで挽回できなければクビだな」

レイ「あとは彼女の精神力次第です。人間としての精神が破壊されると、彼女の元々の脳が急速に崩壊します。新しい脳が十分に成長する前にそうなってしまうと、生命を維持する最低限の機能まで失われて死んでしまいます」

所長「そのことなんだが…彼女を眠らせたままで新しい脳を成長させることは出来ないのかね? 眠らせておけば精神が破壊されることもないだろう」

レイ「現時点で入手可能な人工脳は学習能力が低すぎて、人間の脳が手助けしなくては成長できません。それができなければ、兵士として必要な知能どころか体を動かすことすら憶えられません」

所長「そこが最大の問題か。しかし、現在我々に与えられている任務は強靱な器(肉体)を作ることだけだ。知能や精神のコントロールといった中身の問題はよそでやっているはずだ」

レイ「一定程度以上の脳を使わなければ、肉体も作れません。人工脳の開発もこの研究所で出来れば良いのですが」

所長「それはそうだが、遠い話だ。今の計画が成功すれば、我々は昇進し権限が強化され、予算も大幅に増額されることは間違いない。そうなれば、ここに脳の開発部門を設置できる可能性もあるが…まずは当面の結果を出すことだ」

次回につづく…

#980 ガラパゴスの怪(7)目覚め

2009年12月31日 | 夢日記
一昨日(12月29日)に見た夢の内容の続きです…
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次に目が覚めたとき、そこは薄暗い場所でした。

体全体の感覚がおかしく動かせません。単に麻痺しているのは違うよう。
まぶたすら思うように動かせず、薄目が開いてかすかに前方が見えるが、焦点が合わず良く見えない。呼吸が苦しい。

やや寒いのも感じるし、自分の体の重みも感じることが出来る。
しかし、今確かにここにあるはずの自分の体の所在がはっきりわからない。全身をバラバラに切り離され、あちこちに捨てられたような感じがする。
手を動かそうと思っても、それが遠く離れたところにあって、自分の意志を伝えられないかのよう。

時間をかけて必死に体を動かそうとしていると、どこか体の一部が動いた感覚があり、同時に何かの音が響きました。耳だけは相変わらず良く聞こえます。

しばらくもがいているとどこからか声がしました。

「目が覚めたようね、ミス・コノハ。気分はいかが?」

レイチェルの声です。直に話しかけられているのではなく、どこか離れたところのスピーカーから音が出ているようです。反響音がするので、この場所が広いがらんどうになっているのかも知れません。

「今あなたは不安でいっぱいでしょうけれど、落ち着いてわたしの話を聞いて理解すれば、すぐに安心できるでしょう。

我がアメリカ合衆国が世界平和実現のために多くの活動を行っているのはご存じのはずね。今は主にイラクやアフガニスタンで活動していますが、そこが治まればまた別の地域での活動が待っているわ。世界には平和ではない地域が数多くあり、我が国の援助を待ちこがれています。
もっと強力な軍隊があれば、世界の平和をさらに効率よく構築できるのです。

ここで研究開発しているのは、強力なボディースーツよ。日本で言えば『着ぐるみ』みたいなものね。防弾性に優れ、さらに翼による飛行で機動力も格段に向上する、画期的な防具。あなたは今それを装着している状態。
これが完成すれば全世界の平和が実現する。世界を変える偉大な実験にあなたは参加しているのです。あなたの勇気ある行動が地球の未来を救うのです。
あなたは輝ける人類の歴史に、永遠に名前を残すことになるでしょう。

我々の指示に素直に従ってさえいれば、あなたに危険なことはなにもないし、すべての実験が終われば、すぐにその着ぐるみを脱がせてあげるわ。
それに報奨として一生豪遊してもあまるほどのお金を支給します。
これらのことはすべてアメリカ合衆国政府によって保証されていることです」

わたしはほとんど目も見えず、身動もきできず、声も出せず、ただレイチェルの話を聞くしかありませんでした。

次回につづく…

#979 ガラパゴスの怪(6)昏睡

2009年12月30日 | 夢日記
昨日(12月29日)に見た夢の内容の続きです…
これまでの内容はこちら…[][][][][]
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意識がもどりました。どれほど眠っていたのかわかりません。
そして自分が今どういう状態であるのかわかりません。
全身が麻痺しているようで、感覚もないし当然動かせません。
目もほとんど見えません。ただ、耳だけが聞こえる状態です。

「脳波レベル上昇、覚醒したようです」
「ずいぶんと早い目覚めだな」
「瞳孔が開ききったままだ。目はまだ使える状態ではない」
「神経ネットワークが完成するまでは、しばらく時間がかかる」

言葉ははっきり聞こえます。聞き覚えのある声です。わたしはまだあの研究所内にいるのでしょう。
しかし、話している内容はあまり理解できません。意識はまだ完全には戻っていないようです。

「各数値はすべて安定している。現在までの状態は良好。あとは動けるようになるまでしばらく放置だ。栄養剤の量に注意しろ。ほかの個体より小さいから、少なめにしておけ。やりすぎはむしろ危険だ」

次第に意識が薄れてきて、ふたたび深い眠りに入りました。

次回につづく…

#978 ガラパゴスの怪(5)研究所五日目

2009年12月30日 | 夢日記
昨日(12月29日)見た夢の内容「#977 ガラパゴスの怪(4)研究所四日目」の続きです…
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研究所五日目の朝。
この日は、わたしは体調が悪く、起床時間になっても寝床から起きられませんでした。
レイチェルが来て、わたしは医務室に連れて行かれました。
「今度はわたしが隔離される番か」
そう思いましたが抵抗する気力はありませんでした。
医者に言われるままに服を脱ぎ「診察」を受けました。

医師「変だな、皮膚の変異が少ない。ウイルスの働きが悪いみたいだ。ほかの者と体質が大きく違うのだろうか。報告では薬はすべて飲んでいると書いてあるが…」

この医者は何を言っているの? 変異? ウイルス?
何か言わなくては…。しかし、声が出ない。


わたしの体は寝台の上に載せられ、点滴注射のチューブをつながれた。
医師「ウイルスと活性剤を注入して様子を見よう。この検体は今の状態では使い物にならない」
わたしは意識がもうろうとしてしまい、何も出来ない。後のことはすべて神様にゆだねるしかありません。


レイチェル「所長、CIAからコノハに関する情報が届きました」
所長「たしか、日本当局の資料では『何の役にも立たない、ぐずでのろまな素人絵描き』ということだったが、何か異なる点でもあったかね」
レイ「日本の報告も誤りではありませんが、重大な事実が抜けています。性格は内気で、無口。何を考えているか誰にも理解できない。もとは科学者で専門は○○○学。移り気な性格で、あらゆる事に中途半端な興味を持ち、知識は無駄に広く、きわめて浅い。そのため専門研究者としての資質は皆無。病弱で体力が著しく劣るため、研究職を続けられなかった。病院の入退院を繰り返すとともに職を転々として現在に至る」
所長「科学者だと!? そういう類の者は外すように条件を付けていたはずだ。日本の情報能力は酷いな。それにやはりこの女は最悪だ。この世に必要なのは知識の深い専門家か、さもなくば無知で命知らずの兵隊だ。広く浅い知識など何の役にも立たない。むしろ邪魔だ、とくに我々にとってはな…。彼女を泳がせておくのはそろそろやめた方が良さそうだ。この手の人間は扱いが難しい。これ以上は危険すぎる」
レイ「彼女は遺伝子の変異が予定より遅いので、今は眠らせて投薬しています」
所長「そうか、なら面倒が無くていい。もう最終段階まで眠らせておけ」

所長「それで、コノハと猿のコミュニケーション映像の解析は進んでいるのかね?」
レイ「残念ながら進んでおりません。ここには暗号に詳しい者はいないので、やはり本国の専門家に分析してもらうしかなさそうです」
所長「ああ、そうしてくれ。あの女に解けて、我々に解けないというのは癪に障るが、それよりも結果が重要だからな」
レイ「それともう一つ報告します。さほど重要なことではないのですが。コノハが猿に物を与えました。すぐに取り上げて回収したので何の問題も発生していません」
所長「ほう、与えた物とは何かね?」
レイ「落語の本です」
所長「ラクゴ? なんだそれは?」
レイ「日本の古典的な大衆芸能です。その本は今解析中ですが、後でご覧になりますか?」
所長「くだらん!」

次回につづく…

#977 ガラパゴスの怪(4)研究所四日目

2009年12月30日 | 夢日記
昨日(12月29日)見た夢の内容「#976 ガラパゴスの怪(3)研究所三日目」の続きです…
     *
研究所四日目の朝。
また一人、「発病して隔離」という理由でいなくなり、一緒に朝食を摂ったのは三人だけ。
参加者「いったいどういうことなんだ。ツアーを中止して日本に帰してくれないか」
レイチェル「病気の感染者を外に出すわけにはいきません。あなたたちもすでに感染している可能性があります。あなたたちの安全を守るためにもここに留まっていただきます」

落ち着いて慎重に事を運ばなければなりませんが、もう時間がありません。
わたしは「猿」の飼育室前に行きました。
「猿」は棒で叩く動作をします。しかし、ただでたらめに叩く「猿」もいれば、興奮して暴れ回る「猿」もいます。
叩くのを邪魔をしようとする「猿」を制止する「猿」もいます。行動様式や知能の程度は個体差が大きいようです。


以前見た、規則正しく叩く「猿」がわたしの近くに来て、例の「暗号」を始めました。
わたしからは叩いて返信は出来ません。すぐに係員が来てしまうでしょう。
わたしは声に出さずに口を大きく動かして答えました。
「わ・か・る」
すると「猿」の叩く信号が変わりました。わたしが何か言おうとしているのに気がついたのでしょう。
「1-1、1-1、1-3」(ア・ア・ウ)
わたしは首を横に振って、「わ」と口を開けた。
「1-1」首を横に振る「2-1」…「10-1」頷く
時間はかなりかかりましたが、最終的には言葉が通じました。
「10-1、2-1、9-3」(ワ・カ・ル)
そうその通り。


続けて「猿」が信号を送ってきます。
「4-5、1-3、2-3、6-5、3-2、1-2」(トウクホシイ=道具欲しい)
「どんな?」(口の動きで)
「5-1、10-5、4-4、7-5」(ナンテモ=何でも)
「7-2、2-2、5-2、6-5、3-3、4-5、1-1、9-2」(ミキニホストアリ=右にポスト有り)
なるほど、通路の先に郵便物を入れるような投入口らしきものがある。


レイチェル「ミス・コノハ、猿たちに無用な刺激を与えないで下さい。今後あなたがここに近づくのを禁止します」

一体どうしたら良いのか?
どんな道具が有れば良いのか?

自分の荷物を調べても使えそうな物はみつかりません。


持ち物の中で一番マシなのは、携帯用の簡易裁縫セットかな。なぜかこれは持ち込みを規制されませんでした。大した役に立ちそうもないからかな。
昔、お母さんからもらった物で、二つに折りたためば薄っぺらの手帳の様になってかさばらないのが便利です。いつも鞄に入れて持ち歩いているけれど、あまり使ったことはありません。(写真はその実物)
これが「猿」の求めている「道具」として役に立つかどうかわかりませんが、これしかないのですから考える余地はありません。


就寝時間中にトイレに行くついでに飼育室の方へ行ってみました。監視員はあくびをしていてわたしに気づくのが遅れ、通りがかりに「お裁縫セット」を投入することに成功しました。
監視員「おい、おまえ何をしている? ここには来るなと言ったはずだ」
紅葉「ちょっとおトイレに」
監視員「トイレットはあっちの反対側だ」
紅葉「ごめんなさい、寝ぼけていて…」
これでうまくいったのだろうか?

自室に戻り、現在わかっていることを整理してみる。
「猿」たちは顔つきや体毛を覗けばほとんど人間そっくりであること。さらにそのうちの何頭かは、日本語を解する。
「猿」が棒を叩いて合図を送っていることは研究員もわかっているはず。あちこちに監視カメラもついているのですから、知らないわけはありません。
ただ、研究員らは暗号の意味を理解できていないかも知れません。日本語にも暗号にも詳しくなければ、わからない方が自然です。
わたしが暗号を理解したことを、研究員に知られただろうか?
「お裁縫セット」が渡ったことが知られただろうか?
そして、わたしの体に異変が起こっていること。基地到着時に注射を打たれ、食事時に薬を飲まされ、あるいは食べ物や飲料水にも何か入っているかも知れない。

…整理しようと思っても、わからないことが多すぎます。そして疲労感がわたしの思考を停止させ眠りの世界へと導いてゆきました。

次回につづく…

#976 ガラパゴスの怪(3)研究所三日目

2009年12月29日 | 夢日記
今朝方(12月29日)見た夢の内容「#975 ガラパゴスの怪(2)研究所二日目」の続きです…
     *
研究所に来て三日目の朝。
例の田中さんがいなくなりました。発病して隔離されたと、レイチェルからの説明。
「ああ言っていた本人が真っ先に居なくなってんだから世話ねぇな」
「しかし、またこの薬かね」
「飲まないと発病すると言うことですし仕方ないでしょう」
「いや、田中さんはこれを飲んでも発病したんだがね」
どうもこの薬は怪しいです。飲まない方が良さそうです。きちんと飲んだかレイチェルに確認されますが、なんとか口に含んだ振りをして袖口に隠し、ごまかしました。
錠剤を部屋のゴミ箱に捨てればすぐにばれるでしょうから、トイレに流しました。


そして今日も「猿」の観察。
行動範囲が限られていて、それ以外に敵情視察もできません。
わたしの姿を見て一頭の「猿」が棒状のもので叩く動作をしました。ガラス越しで音は良く聞こえません。しかし、はっきりとわたしに見せるための行動をしているようです。
等間隔で何度が叩き、叩くのをやめ、また等間隔で何度か叩く動作をします。
叩き方に規則性がありそうです。何か意味があるとすれば、叩く回数以外に無いでしょう。
筆記具でメモを取ることが出来ないので、本のページに折り目を付けて回数を記録しました。


部屋に戻って折り目を確認。
なんどか繰り返し観察しましたが、いつも間違いなく同じパターンです。
2-2=2-4=10-5=5-2=2-4=9-5
(「-」は短い休み、「=」は長い休み)
確実に何らかの意味を込めています。
ぱっと見てわかるのは、ほとんどの数は5以下、二つの例外は10と9。
短い休みを挟んで並んだ二つの数で一組と考えるのが妥当そう。
2-2、2-4、10-5、5-2、2-4、9-5
わたしにはこの数字から一つの可能性しか思い浮かびませんでした。


五十音表を数字に置き換えるのは、昔からよくある暗号遊びの一つです。
頭の中に変換表を思い浮かべました。
「キケヲニケロ」
あれ意味がわからない。違うかな? ああ、そうかこういう場合は正しい五十音表ではなく、世間一般に流布している誤った五十音表を使わないといけないのか!
ワ行の「ワヰウヱヲ」を誤った「ワ○ヲ○ン」にすると
「キケンニケロ」=「危険逃げろ」
意味が通りました!
しかし、たとえ、これが正しい解釈だとしても、「危険」が一体どういうもので、どうすれば「逃げられる」のかわかりません。
決してあわててはいけない。あくまで冷静に…。

そう言い聞かせて自分を落ち着かせるだけで、その日は精いっぱいでした。

次回につづく…

#975 ガラパゴスの怪(2)研究所二日目

2009年12月29日 | 夢日記
今朝方(12月29日)見た夢の内容「#974 ガラパゴスの怪(1)」の続きです…
     *

研究所に来て二日目の朝。
みな食堂に集まりましたが、ひとりの参加者の姿がありませんでした。
レイチェル「ミスター・キムラは体調を崩し、医療部門に隔離されました。伝染病の疑いがあるからです」
紅葉「……(昨日、いちばんはしゃいで、大騒ぎしていた人だ…)」
レイチェル「皆さんには念のために、薬を服用してもらいます。予防効果があります」
参加者「なに? 十錠も飲まなくちゃならんのか?」

昨日は明るかった参加者達の表情が今日は冴えない。
「見学可能なところは昨日のうちに全部見てしまって、ほかの場所は立ち入り禁止。一週間ここでどうやって過ごせば良いんだ?」
「遊び道具でも持ってくるんだったな」
「チェス盤はあるようだが…」
「いや、チェスは知りません。将棋ならできるんですが…」
参加者の一人・田中「それにしても、なんだか監禁状態のような感じがしませんか?」
「まあ、ぶっちゃけそんな感じだけどな。どこでもお役所仕事は融通が利かないものさ」
田中「それに参加者六人で一週間というのも引っかかってるんです」
「なにが?」
田中「アガサ・クリスティーのアレですよ」
「あれって、何? 『そして誰もいなくなった』くらいしか知らんが」
田中「それですよ」
「あれは死んだの六人だったか?」
田中「そこまでは憶えてませんが、今回のツアーの場合、一日で一人ずつ消えてゆけば最終日にはちょうど誰もいなくなる計算です」
「うむ、現に今朝一人いなくなってるしな」
「よせよ、縁起でもねえ」
「このはさん、でしたかな? あなたはどう思いますか?」
紅葉「さあ、頭の鈍いわたしには皆目見当はつきませんわ」
「こりゃ失礼、あなたにはふさわしくないお話でしたか(笑)」

陰謀の臭いはツアーの最初からありました。
そもそも政府が何か強制するというのは、悪いことに決まっています。
もし本当に正しいことなら、強制せずに丁寧に説明すれば相手が納得するはずなのです。

そして、陰謀のただ中に居るときは、冷静沈着に行動し、決してうかつなことを口にしてはいけません。
もし次に消えるとしたら、「監禁状態」とか「アガサ・クリスティー」を引き合いに出したあの人であると、だいたい相場が決まっているのです。


ツアーの規制で、筆記具や写真機も持って来られませんでした。絵描きの道具があれば退屈しないのですが、それもダメでした。
本を少し持ってきたので開いてみましたが、どうも気になって集中できません。
これからどうなるか不安なのに加え、あの奇妙な「猿」のことです。
あの「猿」はどこか違和感がありました。

どんな奇妙な動物でも、生活環境に適合した姿をしているはずです。
動物を観察するには始めに糞と足跡を見つけることだ、という話をどこかで聞いたことがあります。
糞から食性がわかりますし、足跡つまり足の形状がわかれば生息域の環境もある程度わかります。
とくに霊長目はものをつかむ手に大きな特徴が表れているはずです。
わたしは「猿」を見に行きました。


飼育室の前に来ましたが、「猿」は昨日のようには飛びかかってきません。
わたしの顔を覚えて「猿」の方が驚かなくなったからだろうか?
それともわたしを驚かせないように気を利かせているつもりなのだろうか?
とりあえず「猿」をじっと見る。
「猿」はわたしが見ているのを気にしているようだが、敢えて平静を装っているようにも見える。

やはり、違和感があったのは当たっていました。
手の形がほとんど人間そっくりです。五本の指がそれぞれ独立して動かせるようです。そんな動物が人間以外にいたのかな?
足の形もほとんど人間と変わりません。ただ、足の力が弱く立ち続けるのが大変なようです。
この「猿」が、四つんばいで歩くのも、二足歩行も、木に登るのも、いずれも得意でないとすれば、果たして野生の世界で生き残れるだろうか?

レイチェル「ミス・コノハ、熱心に観察しているようですが、なにか面白い発見でもありましたか?」
紅葉「いいえ、何も。退屈なのでなんとなく見ていただけです」
レイ「動物を見るのが好きですか?」
紅葉「とくに好きでもありません」
レイ「あなたはたしか、絵描きさんでしたね」
紅葉「ただのしがない素人絵描きです」
レイ「絵描き道具が持ち込めなくて残念でしたね」
紅葉「はい。でも、規則ですから仕方ありません」
このやたらと親しげに話してくるレイチェルというのも、かなり「食えない人」のよう。
さりげない会話で探りを入れてくるようです。とにかく当たり障りのない会話で済ませた方が無難でしょう。


あとは自室でおとなしく過ごすが、何やら全身がかゆい。
服を脱いでみると皮膚のあちこちにぶつぶつや湿疹やら、かさぶた状になったのやら、ひどいことになっていました。
いつも持ち歩いている軟膏「雪の元」を塗ってみたら、少し症状が和らいだよう。
しかし、これはどうしたことか。

これがレイチェルの言う「伝染病」の症状なのか?
それとも、あの飲まされた薬の影響か?
あるいは、基地に入るときに打たれた注射のせいか?
このことは黙っていて、もう少し様子を見た方が良いのか?

ともかく今日はもう寝て、明日に備えなければ体力がもちません。

次回につづく…

#974 ガラパゴスの怪(1)

2009年12月29日 | 夢日記
今朝方(12月29日)見た夢の内容です…

家に電話がかかっていて、突然「おめでとうございます!」と言われたので驚きました。
よくある「当選電話詐欺」かと思ったら、内閣府からの電話でした。
何がめでたいのか、抽選でガラパゴス諸島への旅が当たったというのです。

紅葉「わたし、そんなものに応募したことありませんから」
役人「住基ネットをご利用なさっている方なら自動的に応募されることになっておりますので」
紅葉「いいえ、『住基ネット』などといううさんくさいものは使ったことがありませんが」
役人「日本国民なら全ての方が利用者です。それともあなたは非国民ですか!」
要するに日本政府が参加者を勝手に選んで強制的に参加させられるものらしい…。

ガラパゴス諸島は赤道直下、南米大陸の国エクアドルの西沖にあり、ダーウィンの『進化論』のヒントにもなった奇蹟の楽園として有名です。


しかし、この「国策ツアー」の真の行き先は、そのガラパゴス諸島からさらに沖合にあるアメリカ合衆国の誇る最新鋭の研究所でした。


レイチェル(研究所員)「ここに来られた皆様はとても幸運の持ち主です。世界に類を見ない最先端技術を見学ができるのですから」


参加者「ガラパゴス諸島に来るまでが遠かったですが、これからさらに遠くへ行くのですか?」
レイチェル「もう間もなくです」
参加者たち「一体どんなところでしょうね」「いやあ、楽しみです」

参加者たちは一様に興奮している様子。日本を出発するときから、タダで海外旅行が出来ると喜んでいる人たちでした。
その中で、わたしだけが浮かぬ顔をしていました。ツアーに参加すること自体がイヤだったのです。


レイチェル「これが研究所です」
参加者たち「海上施設ですか」「ずいぶん小さいところですね」
レイチェル「研究所は海底基地にあります。海上に出ている部分は出入り口に過ぎません」
参加者たち「へー、そいつはすごいな」


レイチェル「基地に入る前にワクチン注射を行います」
注射はイヤですが、強制なので仕方ありません。
研究所内には病原菌を扱っている部門もあるため、その感染予防のためだそうです。


レイチェル「研究所は推進100mの海底基地にあり、出入り口はこの水中エレベーターだけです。エレベータが使えない非常時は潜水艦に救助に来てもらうほかありません」
参加者「なんだって、そんな面倒なところに研究所を?」
レイチェル「最高レベルの国家機密ですから、情報漏洩を防止するには当然の処置でしょう」
参加者「しかし、なぜわれわれは、そんな機密を見学できるのですか?」
レイチェル「この研究所には日本政府から多額の『思いやり資金』が寄付されています。そのお礼のために、日本国民の代表者に見学していただくことになっているのです」
参加者「なるほど、当然の権利ですな」
エレベーターの窓から海の中が見える。
紅葉「……」


海底に到着。
レイチェル「荷物は皆さんの部屋に運ばせますので、ここからは手ぶらでどうぞ。
海底にはいくつかの研究施設があり、このようなトンネルでつながっています」
参加者「へ~」「海の底は暗いんだね」
紅葉「……」


所長「ようこそ、日本のみなさん。わたしが所長のデービットソンです。1週間ほどの滞在ですから、のんびり見学していってください」


レイチェル「日本政府からの資金援助で優秀な人材と機材を惜しみなく集めることが出来ます。ここでは主に細菌の研究を行っています」


バン! バン!
紅葉「うわっ!」
突然、窓を叩く音! そして見たことのないケモノ!
レイチェル「ここでは人類の進化を解明するために
、類人猿の研究を行っています。この猿たちは実験動物です」
紅葉「猿?(こんなお猿さん知らないわ…珍しい種類なのかな?)」
しかし、この「猿」に関する質問は「機密である」として出来ませんでした。


レイチェル「ミス・コノハ、ここがあなたの部屋です。この部屋にあるものは全て自由に使って良いです」
…とは言われたものの、こんなところで1週間も過ごさなければならないのですから、気が重いです…。
ともかく、今日は長旅で疲れたので早く寝ることにしましょう。

次回につづく…


今朝見た夢が強烈だったので急遽描くことにしました。
「古本屋騒動記」は来年描きます。

#971 虎らくがき(6)

2009年12月26日 | 鉛筆
ふつうの虎らくがき…


軍人さん風…


女学生風…


通勤通学風…


小学生風…


時代劇風…


王侯貴族風…


らくがきだけで際限なく遊んでしまうので、肝心の年賀状の図案がまだ決まらないというアホなわたし…

以下、過去の虎らくがきシリーズ
#950 虎
#951 虎らくがき(2)
#952 虎らくがき(3)
#953 虎らくがき(4)
#969 虎らくがき(5)

#970 今日のお昼ころの様子

2009年12月26日 | 写真
今日は陽も差さず、冷え込みが厳しいです。

ストーブの故障から、やぶれかぶれ的に始まった耐寒実験の5日目です。

床のカーペットが冷たくてたいへんなので、室内履きのスリッパを買ってきました。
百円ショップで300円のものを。カーペットに直に足をつけないだけでも、かなり良い具合です。
靴下を重ね履きしても、カーペットの冷たさには耐えられませんでした。
ついでに手袋も買いました。100円の薄っぺらのものを。絵を描いたり、ピアノを弾いたり、パソコンでブログを書いたりといった作業をするには薄っぺらでないといけませんので。

しかし、どんなにたくさん着込んでいても、じっとしていては体が冷える一方でだめです。
ときどき体を動かして体温を上昇させないと低体温症になりそうです。
それと、寒さで体が縮こまっているので肩こりが酷くなりました。ストレッチ体操も強化しなくてはなりません。
長時間じっと絵を描く環境としては最悪です。

水彩の絵の具がなかなか乾きません。
しかし、それならそれで、乾きにくいことを利用した新たな画法を開拓する良い機会かも知れません。

少しでも日差しがあると、部屋の寒さが和らぎます。
お日さまのありがたみがよくわかります。

自分の命の炎が未だ尽きずに一生懸命燃えているのを感じて涙が出ます。

ストーブが壊れたと言っても、悪いことばかりではないようです。
わたしの気持ちが前向きの間はなんとかなるでしょう。

#969 虎らくがき(5)

2009年12月25日 | 動物
虎っぽい水彩らくがきです…

先月のうちに年賀状用図案として虎らくがきを何枚か描いたので、何だか余裕を持っていたのですが、実はまだ図案は決まっていないし年賀状を一枚も書いていなかったり…
いつもより早めの準備が油断を生みました。

明日中には書き終わりたいと思うのですが、絵がまだ決まっていないのです。
また何枚か描いてみます。

以下、過去の虎らくがきシリーズ

番外 まとめページ

2009年12月25日 | そのほか
これまで掲載した「夢日記」のまとめページを作りました。
水面にとらわれた三日月(全7回)…童話風
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冤罪(全9回)…無実の罪を晴らせ!
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太平洋ひとりぼっち(全10回)…挺身隊の過酷な運命
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バス停の夢(全8回)…日常と非日常の狭間
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「花関係記事」
「鳥」関係絵の目次
『紅葉を甲子園につれてって』篇
「思い出話」
北風昏迷録…小学生時代の苦悩と親友
雪ゆかば…小学生時代の雪合戦
高校生日記~高校入試編
…など

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