このは紅葉のお絵かき日記

トランプ大統領・たつき監督・irodoriの味方だよ

#509 太平洋ひとりぼっち(4)

2007年09月15日 | 夢日記
#508「太平洋ひとりぼっち(3)」の続きです…

少尉>ここが司令本部です。
分隊長>こぢんまりとしているな。
少尉>この建物は玄関のような物で、本体は岩山の中です。

少尉>本部前の畑でイモが採れます。
食べた後の茎を土に挿しておくとまた増えます。
食料の備蓄がほとんどありませんが、このイモと近くの木の実があれば何とかなるはずです。すぐそこにわき水もあります。
ただし、絶対に森の中に入らないで下さい。罠や爆弾などを無数に仕掛けてあります。

少尉>ここが通信室です。
発電機の燃料が残り少ないので、通信機を使うときだけ回して下さい。

分隊長>おお、これが例の物だな!
少尉>はい、脱出用の飛行機です。
分隊長>おまえは飛行訓練も受けていたから大丈夫だな。
このは紅葉>不合格でしたが…
分隊長>一度でも飛べたなら大丈夫だ。

少尉>かなりの旧型機で性能があまり良くありません。
速度と航続距離を稼ぐために機銃や計器類などを可能な限り取り外して重量を軽くしてあります。
分隊長>初心者に難しいことを言っても始まらん、まっすぐ飛べりゃぁ良い。

少尉>この天井から下がっている紐を強く引くと、始動機が回って飛行機の発動機を動かします。
発動機が動いたら、いったん紐をゆるめて、もう一度引いて下さい。
始動機が外れ、車止めが外れて、機体が前に滑り、水の上に浮かびます。
分隊長>そりゃ、すごい仕掛けだな。
少尉>整備兵の全面的協力のおかげです。
分隊長>そうか、君がここにいてくれて良かった。
この、和田少尉は親友の息子でな…この飛行機のこともわしが個人的に頼んだ物なんだ。
このは紅葉>え?
分隊長>上の連中はお前を単なる捨て石のように考えているようだが、そんなことで命を粗末にすることはない。最後まで生き抜くことをあきらめるな!
そのためにこの飛行機を用意したのだ。
このは紅葉>はい。

このは紅葉>水上飛行機は初めてですが…
分隊長>陸上機と大して変わらん、気にするな。
少尉>着水したら、この洞窟を抜けて海に出て下さい。

少尉>海に出たら、そのまままっすぐ飛んで下さい。
分隊長>そう。何も考えずに、ただひたすらまっすぐ飛べ。この方角に日本本土がある。
たとえ日本本土までたどり着けなくても、途中に日本の基地がいくらでもある。
このは紅葉>敵機が来たら?
分隊長>どのみち、おまえは敵をかわすなど器用なことが出来ないのだから、何も考えるな。とにかくまっすぐだ。


もう時間です、最終便が出ます!
分隊長>わかった、すぐに行く!

少尉>この道も地雷で封鎖します。
海へ出られるのはあの洞窟だけです。
分隊長>ぎりぎりまで粘って、いよいよ最後というときに脱出しろ。
出来ないことをしろとは言わん。
出来ることを精いっぱいやれ。
決してあきらめるな!

分隊長>おまえは日本に帰れる!
絶対に出来る!
意地でも帰るんだぞ!

少尉>大尉、あの飛行機の航続距離では一番近い友軍基地にすら届きません…。
分隊長>うむ…わかっておる。
しかし、ここにはあの飛行機しか無かったのだから仕方ない。
我々は最善を尽くした。あとはあの子が自力で道を切り開くしかない。
少尉>しかし、いくらがんばったところで道が開けるとは…。
分隊長>人が生きてゆくには某かの「希望の光」が必要だ。
たとえ、それがどんなに小さくかすかなものであってもだ…。
敵の攻撃を受けたら助からんが、もしかしたらオンボロ機を哀れに思って見逃してくれるかも知れない。
燃料が切れて海上に不時着すれば、漂流している間にどこかの島に流れ着くかも知れないし、あるいは通りがかった船に救助されるかも知れない。
どんなに小さな可能性であってもゼロではない。
だが、玉砕しろと言ったなら、あの子は死ぬことしか考えなくなるだろう。絶望して、任務の遂行すら危うくなる。
同じ死ぬにしても、任務を全うした上で、少しでも祖国日本に近づいて死ぬ方が良いじゃないか。

後は祈るだけだ…
                                    次回へつづく…