両手を広げて(1)

2018-03-26 21:19:11 | 童話
『お母さん、僕ね、夢の中で空を飛んでいたんだよ。』
『あらっ、すごいわね。』
『両手を広げて、ビューンと飛んでいたんだよ。』
お父さんは
『夢は何でもできるけれど、本当は飛べないよ。』
だけど、僕は飛べると思う、夢の中で飛んでいたから飛べるんだ。

『お母さん、僕ね、また夢の中で空を飛んでいたよ。今度はね、パラグライダーを付け飛んでいたんだよ。』
『あらっ、すごいわね。』
お父さんは
『少し現実味のある夢になったな。』
と言ったが、すごいねとは言わなかった。
僕はできそうな気がする。

そして、今晩はどのようにして空を飛ぶのか楽しみだ。
『お母さん、僕ね、また夢の中で空を飛んでいたよ。今度はね、ヘリコプターを操縦していたんだよ』
『あらっ、今度はすごいわね。』
お父さんは
『そうだなぁ、努力すれば可能性のある夢だな。』
と言ったが、すごいねとは言わなかった。
僕は大きくなったらヘリコプターに乗ろうと思った。

『お母さん、僕ね、また夢の中で空を飛んでいたよ。今度はね、ジェット旅客機を操縦していたんだよ。』
『あらっ、すごいわね。』
お父さんが
『いっぱい努力しないとなれないよ。』
と言って、ガンバレと言った。
僕は努力してジェット旅客機を操縦しようと思った。

夢のおじさん(6)

2018-03-25 11:38:12 | 童話
広い草原に有る学校の夢を見てからは、僕は夢を見なかった。
いや、夢のおじさんに会っていると思うのだが、夢を見ていないから夢のおじさんのことを覚えていないのです。
そして、何年かしてから夢のおじさんに会いました。
『やあ、しばらくだね。』
『そうですね、おじさん。』
『今日も夢は無いんだけれど、君に会いたくて来てもらったんだよ。』
『僕もおじさんに会いたかったよ。用事はな~に?』
『君はもう大きくなったので、夢は自分で作るんだよ。楽しい夢や悲しい夢や普通の夢をいっぱい作って、楽しい夢だけを友達みんなにあげるんだよ。』
『うん、分かったよ。』

『それでは、これからこの高い階段を一緒に上がって行こうか。』
『この階段の上には何が有るの?』
『何も無いよ。』
『それでは、どうして階段を一緒に上がって行くの?』
『何か夢を見ないと私のことを覚えていないからだよ。こうして階段を一緒に上がっているのを夢で覚えていられるんだよ。』
『そうだね、これは夢だね。そしてこれが、おじさんが作ってくれた最後の夢だね。』
『そうだよ。明日から楽しい夢をたくさん作りなさい。』
『うん、分かった、おじさん元気でね。』
『ああ、ありがとう。君も元気でな。』
『バイバイ。』

僕は次の日、学校へ行った時に夢のおじさんのことを友達に教えてあげました。
『へえ~、夢はおじさんが作っているのか、すごいね。』
『そうよね、すばらしいわよね。』
『僕の夢にも、夢のおじさんが来るかなあ。』
『ああ、おじさんが最後の夢だと言うまで来るんじゃないかな。』
『楽しみだなあ。』
こうして、みんな夢のおじさんが夢の中に来るのを楽しみにして待っています。

        おしまい

夢のおじさん(5)

2018-03-24 10:00:43 | 童話
そして、僕はずっと歩いて学校に着きました。
すると、友達が
『遅かったね。もう勉強が始まっているよ。』と言いました。
『あれっ、今日は日曜日だよ。』
『ちがうよ、月曜日だよ。』
『だって、ここは日曜日の夢の中だよね。』
『ちがうよ、ここは本当の学校で、今日は月曜日だよ。』
『おかしいなあ、僕はまだ夢の中にいるんだよ。』

そこへ夢のおじさんがやって来ました。
『ゴメンゴメン、夢を作るのを間違えてしまったよ。私と一緒に元の場所まで戻る。』
『うん、いいよ。』

そして、僕と夢のおじさんは高い階段を下りて行きました。
『ここで少し待っていてくれるかい。』
『うん、いいよ。』

しばらくして、おじさんが
『もう夢を直したから階段を上がってもいいよ。』
と言ったので、僕はまた階段を上がって行きました。

そして、草原に居るお猿さんが
『また来たの?』
と言ったので
『さっきは間違っていたんだよ。』
と返事をして、遠くある学校へ歩いて行きました。
だけれど、その学校はキラキラと光っていました。中にいる友達が
『やあ、やっと来たね。』
『君も夢のおじさんに教えてもらったの? 同じだね。』
『今日は何曜日なの?』
『日曜日だよ。』
『ここは夢の中の学校なの?』
『そうだよ、夢の中だよ。』

僕は、夢のおじさんが夢を直してくれて安心しました。
『みんな、朝起きるまで一緒に遊ぼうね。』

夢のおじさん(4)

2018-03-23 07:04:10 | 童話
僕は次の日、夢を見る前に夢のおじさんに会いました。
『やあ、また来たね。昨日の学校の夢は楽しかったかい? だけれど、今日は夢が一つも無いんだよ。明日までに作っておくからね。』
『えっ、一つも無いの?』
だから、僕はその日は夢を見ませんでした。

そして、次の次の日に夢のおじさんに会った時に聞きました。
『夢のおじさん、夢は作れたの?』
『ああ、一個だけ作ることができたよ。』
『どんな夢なの?』
『広い草原で、たくさんの動物と遊ぶ夢だよ。』
『夢のおじさん、その夢の中へ行きたいなあ。』
『ああ、いいよ。この階段を上がって行くんだよ。』
『ありがとう、行ってくるね。』
『ああ、気を付けて行きな。』

僕はまた白い霧の中のような階段を上がって行きました。そして、一番高い所に有る草原に着きました。そこにはたくさんの動物がみんなが一緒に暮らしていました。

僕は、ここがどうして平和なのかお猿さんに聞きました。
『ねえお猿さん、どうしてここは平和なの?』
『ここでは、食べる物をみんなで作るんだよ。お米も野菜も、そして卵はたくさんいるニワトリさんにもらうんだよ。だから、ライオンやトラもみんなを食べないんだよ。』
『ふぅ~ん、すごいんだね。』
『ここには君と同じ人間も居るんだよ。』
『どこに居るの?』
『この草原をまっすぐ行くと学校が有って、生徒がたくさん居るよ。』
『僕は、その学校に行ってくるよ。』
『少し遠いけれど頑張ってね。』
『うん、バイバイ。』

夢のおじさん(3)

2018-03-22 06:54:56 | 童話
僕は次の日も、夢を見る前に夢のおじさんに会いました。
『やあ、また来たね。昨日の夢は楽しかったかい? 今日の夢は二つしかないんだよ。一つ目は、お父さんやお母さんと旅行する夢で、もう一つは、学校で勉強する夢だよ。』
『僕の飼っているポチとお話しする夢は、楽しかったよ。だけれど、今日は無いの?』
『残念だけれど、今日はその夢は無いんだよ。』
『それでは、学校で勉強する夢がいいなあ。お父さんとお母さんと一緒に旅行するのは、来月本当に行くんだよ。』
『それでは、二番の階段を上がって行くんだよ。』
『夢のおじさんありがとう、行ってくるね。』
『ああ、気を付けて行きな。』
『バイバイ。』

そして、僕は白い霧みたいな中の階段を上がって行くと学校が見えてきて、たくさんの友達が教室の中で手を振っていました。
『やあ、みんなも夢のおじさんに教えてもらって来たの?』
『そうだよ。』
『ええ、そうよ。夢のおじさんに教えてもらったのよ。』
『あそこに居る先生は、知らない先生だね。』
『あの先生はずっと夢の中にいるんだって。』
『ふぅ~ん、僕達みたいに夢が終わる時に夢から出ないんだ。』
『そうなんだって。』

『だけれど、いつも勉強を教えてくれている先生が誰もいないね。』
『この学校には先生はいないんだよ。』
『どうして先生がいないの?』
『この学校はみんなで考えて、みんなで教えるんだよ。』
『面白い学校だね。だけれど通信簿は誰がつけるの?』
『通信簿は無いよ。』
『それだと成績が上がったのか下がったのか分らないね。』
『みんなで考えて、みんなで教えるから、みんな同じ成績になるんだよ。』
『宿題は有るの?』
『無いよ。学校にいる時にいっぱい勉強をするから、学校が終ったら一生懸命に遊ぶんだよ。』
『楽しそうだね。』
『そうだよ、楽しいよ。だから、次の夢もこの学校で勉強をする夢にするんだ。』
『そうだね、僕もこの学校の夢にするね。』
『そうだね、みんなこの学校の夢にしようよ。』

そして、みんなで何を勉強するのか決めて、その勉強には何を調べないといけないのかを、みんなで話し合い、みんなで決めた勉強を楽しくしました。
『あっ、もう起きないといけない時間になったから帰るね。』
『僕も帰る。』
『私も帰る。』
そして、みんなが帰って、この学校にずっといる先生一人になりました。