爛漫日記

インターネット古書店 独楽知の、春爛漫ではなくて、秋爛漫?の日記です。

中井久夫『世に棲む患者』

2011-05-25 10:13:26 | 私の本
本屋さんで何げなく見つけた本。
中井久夫氏の本だし、タイトルにも惹かれて、文庫なので東京からの帰りの新幹線で読もうと思って買ってみた。
そうしたら、とても興味深くおもしろい本でした。

中井久夫氏の後輩の医者の岩井圭司氏の解説によると、ここに収められているのは、中井久夫氏が1980年代に執筆された文章だそうです。

<21世紀に本書を手にする読者諸氏におかれては、ぜひご自分の目で、中井久夫の未来予測を検証していただきたいと思います。>

<その意味で本書に収められた文章は、私にとっては「懐かしい年」からの手紙です。そして、今回久々に再読してみて、中井先生の文章は、”手紙の隅のインクのしみにいたるまで”まったく色褪せていないものであることに、今さらながら驚いているような次第です。>



精神科医である中井久夫氏の書かれていることは、どれもとても示唆とヒントに富んでいて、何回も読み返したい文章の数々でした。
下記に本文から2ヶ所ほど引用させていただきました。


<精神科医は「治療者」という言葉で呼ばれるけれども、実は、一種の触媒に過ぎず、よい反応もよくない反応もその上で起こるであろうが、触媒自体は、反応について多くを知ることはできず、また、その必要もないどころか、触媒の分際で局面のすべてを知ろうとすれば、反応自体が失われるだろう。つまり、「いまここ」で起こっている、より大きな事態、より大きな文脈の中の一部である。>


<治療を含め、一般に人間関係は、行き詰まりにならぬように、修復ができる範囲に留まるようにと「石を打って」ゆくのが基本である。「非常に目ざましいことが起こるが決裂の可能性もはらんでいる」というアプローチをとらないことを勧めたい。>



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