R45演劇海道

文化の力で岩手沿岸の復興を願う。
演劇で国道45号線沿いの各街をつないでいきたいという願いを込めたブログ。

ドラマのように眠りたい(Vol.10)

2010-08-19 21:04:00 | インポート

SCENE 11 もういちど

 男3と、女1は、メインステージの方へやって来る。そこは、もうすでに、川原公園。とっぷりと日が暮れ夕やみが町に迫ってきている。

            

男3     ここだ。…ここで、合言葉を言えば、奴は出てくる事になっている。

女1     合言葉。

男3     そう。

女1     何て言えばいいの。

男3     『ナスがママならら、パパは誰?』これだ。

女1     間違いないわ。そのギャグ、彼が最近思いついて、頻繁に使ってた

       わ。

男3     じゃぁ、俺は行くよ。

女1     えっ。

男3     二人の会話を立ち聞きするような野暮な男じゃないよ。…じゃぁ。い

       い思い出つくれよ。

女1     ありがとう。あの…。

男3     …何だ。

女1     ぶしつけですいませんが、私たちの結婚式に出席してくれますか。

男3     あんた、本気で、あいつを人に戻そうとしてんのか。

女1     はい。

男3     パンダのままでもか。

女1     それが彼だってわかるんだったら、みみずだって構いません。

男3     借金はどうするんだ。

女1     私が全て返済します。

男3     ……………。                     

女1     日取りは、次の日曜日で大安の日です。場所は、これから彼に訊きま

       す。

男3     …呼んでくれるんだったら、喜んで出席してやるよ。自分たちの人生

       だ。            

       後悔しないような結論を出すんだな。

女1     はい。

            

 女1が、深々と礼をする中、男3去る。女1、少しの間、目を閉じ気持ちを落ち着かせる。その後、思いっきり深呼吸をして大声で叫ぶ。

            

女1     『ナスがママならら、パパは誰?』そのギャグ、つまんないって言っ

       たでしょ!

 男1、ぴょこっと顔を出す。女1は、まだ目を開けない。

            

男1     さすらいの武闘家さんは、やっぱり嘘つきじゃない。

女1     あの人結婚式に呼んだわよ、場所はちゃんと押さえてるの?

            

 女1振り替えるが、そこにはやっぱり本当にパンダがいたので、愕然として膝を折る。            

女1     そんな余裕ないわよね。

            

 男1、うなずく。女1、大きくひとつ深呼吸して話し出す。

            

女1     何よ、その格好。

男1     そんな言い方は無いんじゃない。これでも意外と気に入ってるんだけ

       どな。


最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
へー、さすがだなあという感じで読み終わりました... (T.T.Ⅱ)
2010-08-19 22:53:09
へー、さすがだなあという感じで読み終わりました。2010久慈版はどんな料理ができあがるのか、楽しみですね。
ところで、このタイトル、間もなくアラ50突入のオヤジは80年代の某傑作(怪作?)モノクロ邦画を思い出します。オマージュもあるのかな。それから笹薮のパンダはあの竹林の虎…。そんな隠し味も面白かったです。と、勝手に思っています。
返信する
 山月記のオマージュがあるというのはあるかもし... (.kom)
2010-08-20 23:26:47
 山月記のオマージュがあるというのはあるかもしれません。ただ、あらすじしか読んだことが無いので、どっぷりというわけではなさそうですね。
 80年代のモノクロ傑作とは、何でしょう。もしかして、私も意識していないままに、影響を受けていたかもしれませんので教えてください。
 ちなみに、80年代といえば、フットルースと、マイケルのPV、しか今の時点で映像が浮かんできません。
 自分は、BOOWYのコピーバンドとかしてましたしね。
返信する
林海象監督の「夢見るように眠りたい」です。若き... (T.T.Ⅱ)
2010-08-21 21:49:42
林海象監督の「夢見るように眠りたい」です。若き日の佐野史郎氏主演です。タイトルのインパクトから連想しましたが、ストーリーは関係ないようですね。ただ、今思い返すとテーマ的には通じるところはあるかも。
山月記は設定として面白いと思います。あえてキャラクター設定はまったくリセットして使ってるのもよかった。山月記の虎は数年前に架空の劇団の書き下ろし公演「月下の一群震旦篇」でも使われていました。そこでは虎になった男を理解する狼になろうとする男だった気がしますが。
因みに私がやっていたのははコミックバンドでしたね。
返信する

コメントを投稿