小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『パズラー』西澤保彦

2008年10月09日 | ミステリ感想
~収録作品~
蓮華の花
卵が割れた後で
時計じかけの小鳥
贋作「退職刑事」
チープ・トリック
アリバイ・ジ・アンビバレンス


~感想~
石持浅海の倫理観とキャラ造型も相当におかしいが、やはり西澤保彦はすごいと再確認。
登場人物が下手に論理的な思考を装っているだけに、その歪んだ倫理観からつむがれる異常論理や、型にはめて押し込んで判を押して説明書を添付して出荷したように極端な人物像は実にきもちわるい。しかもそれが本筋とは特にからまずに執拗に描かれるものだからたまらない。石持キャラには嫌悪を感じるが西澤キャラには殺意を感じるといったところ。
そして論理の切れと飛躍においては完全に西澤保彦に軍配が上がる。不可解な状況を手際よく説明し、論理的にさばきながら、最後は飛躍して意外な地点へと着地。「謎と論理のエンタテインメント」と銘打つだけはある。が、無駄に汚い思考や下品な描写がどうしても足を引っ張ってしまい、後味は悪い。
「エンタテインメント」と名乗り、都筑道夫の看板を背負うのならば、もっと普遍的な線を狙うべきではなかろうか。
などとさんざんけなしてみたが、西澤保彦ならではのどぎつさと論理の冴えは、近年なかなか見られなかった濃さのため、西澤成分が不足している向きにはうってつけの処方箋であろう。ファンには強くおすすめ。


08.10.8
評価:★★ 4

コメント    この記事についてブログを書く
« ミステリ感想-『メドゥサ、... | トップ | ミステリ感想-『十三の呪』... »

コメントを投稿