小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『ハサミ男』殊能将之

1999年12月24日 | ミステリ感想
~あらすじ~
連続美少女殺人事件。死体ののどに突き立てられたのは、一本のハサミ。
その残虐性から「ハサミ男」と名づけられた殺人鬼は、
自分の犯行をまねた第三の殺人の真犯人を捜すはめに……。
殺人願望と自殺願望という狂気の狭間で苦悩しつつも“真犯人”を追うハサミ男。
その行く手に待つカタストロフィとは?
第13回メフィスト賞、このミス9位、文春10位、本格ミス2位


~感想~
意図して書き流されたようにした文体は、平易かつ軽妙。どこまでも哲学的、衒学的でありながら、装飾的な描写は廃され、闇色のジョークも面白い。物語全編にわたり綱渡りを続け、読み返すだに周到な伏線に圧倒される。個人的なことだが、これでトリックさえあっさり見抜けていなかったら10点満点間違いなしだったのに……。


99.12.24
評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『歪んだ創世記』積木鏡介

1999年12月20日 | ミステリ感想
~あらすじ~
全てはなんの脈絡もなく唐突に始まった。
過去の記憶を全て奪われ、見知らぬ部屋で覚醒した私と女。
舞台は絶海の孤島。三人の惨殺死体。
生存者は私と女、そして彼女を狙う正体不明の殺人鬼……だけのはずだったのに。
甦る死者、あざ笑う生首、闊歩する化け物。
あらゆる因果関係から排除された世界を冷たく見つめる超越者の正体とは?

第6回メフィスト賞


~感想~
ミステリの枠をブチ壊す異才がまた一人現れた。
メタもここまでメッタメタに(大反省)やってくれれば、いっそ心地よい。おそらく史上最強にして最凶のメタっぷり。
「メタミステリなんてアタシ認めない!」って手合いも、本書は逆に面白く読めてしまうのでは?
メタミステリに興味のある方は必読。


99.12.20
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『QED 百人一首の呪』高田崇史

1999年12月14日 | ミステリ感想
~あらすじ~
天才・藤原定家が残した百人一首。その一枚を握りしめて、会社社長は惨殺された。
残された札はダイイング・メッセージなのか?
関係者のアリバイは証明され、事件は不可能犯罪の様相を見せる。
しかし、百人一首に封印された大いなる謎が解かれたとき、事件は真相をあらわにした。
第9回メフィスト賞


~感想~
すごいねこりゃ。
これが真相としか思えない、百人一首に隠された秘密をあばき、なおかつミステリとしても整っているとは……。
(ネタバレ→)変わった病気を持ちだしてトリックの根幹とするのは安易 だが、この研究成果と併せて、低評価はできない。文章もなかなか。


99.12.14
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『瞬間移動死体』西澤保彦

1999年12月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
俺にとって殺意を実行に移し、完全犯罪とすることは簡単だ。
ロサンジェルスにいる妻を、日本にいる俺が殺したなどとは誰も思わないだろう。
なぜなら俺は「テレポーテーション」が使えるのだ!
だがこの超能力には様々な制約がつきまとい……。


~感想~
もはやヘンテコとしかいえない設定を完璧にあやつる手腕は言わずもがな。
奇抜な設定に振り回されず、ここまで制御してみせるのは本当にすごい。が、今回はやや空回りのきらいがあるか。
そんじょそこらのミステリを寄せ付けないガッチガチの論理性が、逆に足かせとなった感。


99.12.13
評価:★★★ 6
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