小金沢ライブラリー

ミステリ感想以外はサイトへ移行しました

ミステリ感想-『13人目の探偵士』山口雅也

1999年06月29日 | ミステリ感想
~あらすじ~
舞台は、フィクションの名探偵たちが実在する“パラレル英国”。
名探偵ばかりを狙う殺人鬼“猫”が人々を恐怖に陥れていた。
密室・ダイイング・メッセージ・アリバイ破り・ハードボイルド・サスペンス・パロディなどなど
ミステリのあらゆる要素が大集結!
とどめにパンクス刑事まで登場して事件は混迷を極め……。

このミス11位


~感想~
史上初(?)空前絶後(?)のゲームブック型本格ミステリ。
ゲームブックとしての特性を余すところなく活かしきった、3つの解決と3つの破綻。
トリックの巧みさと展開のうまさ。なにより、それほど長くはない物語をここまで豪勢に飾りたてた手腕に脱帽。
これまた傑作。


99.6.29
評価:★★★★☆ 9
コメント

ミステリ感想-『空飛ぶ馬』北村薫

1999年06月25日 | ミステリ感想
~収録作品~
織部の霊
砂糖合戦
胡桃の中の鳥
赤頭巾
空飛ぶ馬

本格ミステリ・ベスト100 9位
このミス 2位


~感想~
衒学趣味には閉口するしかない。比喩の巧みさ、展開の鋭さは見事だが、読了後に嫌な気分になる作品ばかり。
人の暖かさではなく冷たさ、愚かさ、醜さを突きつけてくれる。
俗に言う「北村信者」が生まれるのは解るが、僕はどうしても好きになれない。
絶賛するほどすごいトリックかなあ……。あったかくてやさしいかなあ……。


99.6.25
評価:★☆ 3
コメント

ミステリ感想-『展望塔の殺人』島田荘司

1999年06月23日 | ミステリ感想
~収録作品~
緑色の死
都市の声
発狂する重役
展望塔の殺人
死聴率
D坂の密室殺人


~感想~
『緑色の死』
トリックは陳腐(失礼)だが設定のおぞましさが光る。

『都市の声』
無理はあるがこんな話に整合性をよくぞ付けた。

『発狂する重役』
氏のベスト短編? 2人の出会いも見逃せない。

『展望塔の殺人』
モダンホラー。霊だの超能力だの抜きでも怪談は書ける。

『死聴率』
現実の事件をなぞったおそるべき短編。

『D坂の密室殺人』
あのD坂を島田荘司が描くと……。


~総括~
ミステリというよりも社会派怪談集。余分に「いやらしい」描写が多々あるのが減点も、傑作ぞろいの名短編集。


99.6.23
評価:★★★☆ 7
コメント

ミステリ感想-『バラ迷宮』二階堂黎人

1999年06月21日 | ミステリ感想
~収録作品~
サーカスの怪人
変装の家
喰顔鬼
ある蒐集家の死
火炎の魔
薔薇の家の殺人


~感想~
『サーカスの怪人』
氏がときどきやる悪いクセとして、事件に本当になんの関わりもないことをさも重要そうにほのめかす、というものがある。ミス・ディレクションだと言われたら言葉に詰まるが、あれはあれでいいのだろうか。

『変装の家』
このタイトルって……台無しにしてません? 素朴な疑問。

『喰顔鬼』
ページ数の問題で窮屈だが、怪奇味ある展開は好み。

『ある蒐集家の死』
矛盾点がいくつか。
1:田中のアリバイの有無を容疑者たちが知っていたり知らなかったりと二転三転していません?
2:川口きららのあの発言が全く意味不明
3:ダイイング・メッセージの基本中の基本を忘れてませんか?

『火炎の魔』
この一編に限った話ではないが、科学的ウンチクに頼りすぎ。

『薔薇の家の殺人』
表題作(?)の面目を保った良作。


~総括~
全体として小粒でピリリと辛くない。物理トリックに頼りすぎの感。
「トリックはいくらでも作れる」とうそぶかれても、こんなトリックばかりでは正直げんなり。


99.6.21
評価:★★ 4
コメント

ミステリ感想-『完全無欠の名探偵』西澤保彦

1999年06月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
“大がかりな”事件を調べるりんの元へ訪れた青年みはるは、
人の心の奥にわだかまる不審事を当人に推理展開させ、真相をしゃべらせてしまう“超能力者”だった。
みはるの周辺では、浮気、脅迫、殺人と様々な事件に潜む真相が、泉が湧くように顕わにされる。
さて、りんのつかんだ“大がかり”な真相の連鎖とは?


~感想~
短編が10本以上書けそうなアイデアの山はすごい。が、こぢんまりとしたトリックばかりで、インパクトは薄い。
設定のおかしさ・面白さが骨格であり、ご都合主義を徹底的に廃してみた実験作。気楽に読むべし。


99.6.16
評価:★★ 4
コメント

ミステリ感想-『ストレート・チェイサー』西澤保彦

1999年06月11日 | ミステリ感想
~あらすじ~
酒場で意気投合した2人の女性に“トリプル交換殺人”計画に
参加することを約束させられてしまったリンズィ。
翌日、殺害対象に指名した上司の家で他殺体が発見される。
交換殺人計画が実行されたのか? 取り乱すリンズィをしり目に第二の殺人事件が……。


~感想~
これぞ最後の一行まで油断できないミステリ。他にはなにひとつ言えません。


99.6.11
評価:★★★ 6
コメント

ミステリ感想-『人格転移の殺人』西澤保彦

1999年06月06日 | ミステリ感想
~あらすじ~
突然の大地震。6人が逃げ込んだ先は、人格を入れ替える実験施設だった。
法則に沿って6人の人格が入れ替わり、脱出不能の状況下で連続殺人事件が起こる。
私を襲うあなたの人格は誰?

このミス10位、本ミス8位


~感想~
不世出と思われた「七回死んだ男」に再び肉薄してみせた大傑作。
例によってのトンデモな設定を、たくみな構成と周到な伏線で本格ミステリに変えてみせる豪腕に脱帽。


99.6.6
評価:★★★★☆ 9
コメント

ミステリ感想-『人形は遠足で推理する』我孫子武丸

1999年06月04日 | ミステリ感想
~あらすじ~
うららかな春の日。めぐみ幼稚園は、みんなが待ちに待った遠足の日を迎えた。
ところが警察に追われた犯人が拳銃を片手に、幼稚園バスをジャックした!
この絶体絶命のピンチに、乗り合わせた人形探偵・鞠夫が挑む。


~感想~
人形探偵シリーズ第二弾。
手頃な長さのスピード感ある展開に、練られたトリックをうまく放りこんである。気軽にスカッと読める良作。


99.6.4
評価:★★★ 6
コメント

ミステリ感想-『双頭の悪魔』有栖川有栖

1999年06月03日 | ミステリ感想
~あらすじ~
他人を寄せつけず、奥深い山で芸術家たちが創作に没頭する村。
そこに迷い込んだまま戻らないマリアを追い、英都大学推理研の一行は大雨のなか村への潜入を図る。
江神二郎は接触に成功するが、ほどなく橋が濁流に呑まれて交通が途絶。
村の中の江神とマリア。外に残されたアリスたち、内と外、双方が殺人事件に巻き込まれ、各々の真相究明が始まる。 


~感想~
純粋論理の結晶体。たった一つの手がかりから導き出される完璧にして清冽な真相。
しかもそれを徹底したフェアプレイで描く手腕には素直に舌を巻く。
論理ミステリにおける一つの究極の形、到達点であろう。
例によって下手な文章やら、こうるさい衒学味には辟易するが、論理の面白さを求める向きには格好の逸品。
ミステリ史に残る傑作として、長く語られるだろう。


99.6.3
評価:★★★★★ 10
コメント