小金沢ライブラリー

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ミステリ感想-『ひらけ!勝鬨橋 新装版』島田荘司

2003年07月31日 | ミステリ感想
~あらすじ~
老人ホーム「竹の子寮」の住人たちは脳天気な老人ばかり。
そこに地上げ屋が土地を明け渡せと迫ってきた!
チンピラたちとゲートボール勝負をやることになった最中、成金趣味の老人が殺害され、
さらには「勝鬨橋は今でも開く」と口走っていた老人が失踪。
事態は混迷をきわめる中、はたして「竹の子寮」の運命は……?


~感想~
いやあ面白かった。03年度話題の某作品からつづけて読んだので、なおさら感慨深かった。
ジャンル付けするなら「アクション小説」か。これぞエンタテインメントの鑑。島田荘司の裏ベストワン小説。


03.7.31
評価:★★★★★ 10
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ミステリ感想-『闇匣』黒田研二

2003年07月28日 | ミステリ感想
~あらすじ~
すべてが不自然だ。すべてがフィクションに思えてならない。すべてが作り物めいている。
しかし……。男は、闇で満たされた部屋の中、体を縛られ身動きひとつできずにいた。
男を尋問するのは、これまで男が蔑み続けてきた友の声。妹の死、元恋人の死。
闇の中で静かにうごめく真相とは?


~感想~
密室本。
端正な、という言葉がよく似合うミステリ。切れ味よりもむしろ、その結晶体のような流麗さを愛でるべき。
ただ、あまりに整いすぎてインパクトには乏しい。


03.7.28
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『笑殺魔』黒田研二

2003年07月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「私の笑顔は呪われているんです」
過去の悲劇にとらわれたまま、笑顔を封印した保母。
子供たちに笑みを見せられない彼女にまたしても事件が……。
園児を誘拐され犯人から現金運搬役に指名された彼女は、
仲間の助けを借りて、すべての悲しみの源に挑む。


~感想~
なんだか痛々しさすら感じる(失礼千万)無理に絞り出したような軽妙さは……。似合わない。
描いていない人物たちの魅力も薄く、シリーズ物ということで、トリックとからまない様々な謎も放り出されたまま。
論理も淡泊さを感じ、正直退屈でした。


03.7.27
評価:☆ 1
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ミステリ感想-『硝子細工のマトリョーシカ』黒田研二

2003年07月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
生放送のテレビドラマ本番中に、スタジオ内で次々と起きる事故。
毒は本物にすり替えられ、脅迫電話は真実となり、そしてついに……。
「完全なる虚構」と「不完全な虚構」という二つの世界が交錯する、入れ子トリックの博覧会。

本格ミステリ・ベスト10 5位


~感想~
史上最高記録(?)の(ネタバレ→)作中作中作中作 にはただ呆れるばかり。一言で言うならば“でったらめなミステリ”。こんな仕掛け、たとえ考えついたとしても、実際に書いてしまうのは氏くらいでは? 膨大な伏線、きわめて複雑な構成、周到な細工(再度ネタバレ→たとえば、犬に話しかける形式にすることで、やたらと多い独り言(=セリフ)を自然に見せたり、過去と現在の双方に同じ人物(安藤)を登場させ、現実とドラマの継ぎ目を隠したり、などなど
……なんじゃこりゃ。全くもって、よくぞこんなモノを書いたものだと呆れて呆れて呆れるばかり。
いや恐れ入った。まさに辣腕。“トリックメーカー”の面目躍如。


03.7.26
評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『ペルソナ探偵』黒田研二

2003年07月23日 | ミステリ感想
~あらすじ~
作家をこころざす六人の男女が集う「星の海チャットルーム」。
星の名前をHNに同人誌を作る彼らに面識はなく、プライベートは伏せることを約束としていた。
しかしそのことが、すべての事件の伏線となり、真の悲劇を招き寄せてしまう。


~感想~
(ネタバレ→)結局のところ、この真犯人はなにがしたかったのか? バレるに決まってるし、なにが目的で現れたのかさっぱり解らない。終盤の強引すぎる展開には難色を示したいが、構成はそのへんの連作短編集よりもはるかに連作短編集らしい(長編なのに)。ともあれ面目は保った。


03.7.23
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『サイコロジカル』西尾維新

2003年07月22日 | ミステリ感想
  



~あらすじ~
「きみは玖渚友のことが本当は嫌いなんじゃないのかな?」
玖渚友のかつての仲間、兎吊木垓輔を救出に
『堕落三昧斜道卿壱郎』の研究所を訪れた「ぼく」。
眼前に広げられる戦慄の情景は、「終わり」の「始まり」に過ぎなかった―。


~感想~
気づいちゃった。トリック全部。そうなると、どうしたって驚けない。
これだけの作品、これだけのトリックで驚けないとはもったいない。もったいなさすぎるぞ自分!
哀嘆はともかく、気づいてみればあからさまな伏線、
いつもながらの二重三重の解決には感心・感嘆・感服(五十音順)。
とっくの昔に(自分ならではの形で)円熟している描写力・造形力。
(ある意味)完全無欠の維新に向かうところ敵なし。


03.7.21~22
評価:★★★★ 8
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ミステリ感想-『クビツリハイスクール』西尾維新

2003年07月20日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「紫木一姫って生徒を学園から救い出すのが、今回のあたしのお仕事」
『人類最強の請負人・哀川潤』から舞い込んだ奇妙な依頼に従い
通称『首吊高校』に潜入した「ぼく」は恐るべき殺戮の嵐に巻き込まれる。


~感想~
密室本だからか、維新ならではの韜晦からか、えらくあっさりとした造り。
とはいえ(ネタバレ→)たった7ページでご臨終なさるキャラ、目からウロコの哀川潤のツッコミ、密室の謎を解く彼女など、他の密室本とは一線を画する充実ぶり。
トリックに目を見張るものは(維新にしては)ないが、描写の楽しさを満喫できる。


03.7.20
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『クビシメロマンチスト』西尾維新

2003年07月19日 | ミステリ感想
~あらすじ~
鴉の濡れ羽島で起こった密室殺人事件から二週間。
大学に戻った「ぼく」が級友たちと送る日常は、古都を震撼させる連続殺人鬼
『人間失格・零崎人識』との出会いによってもろくも崩れ去っていく……。
そして待ち受ける急転直下の衝撃。


~感想~
残り50ページの段階で評価は「★☆ 3」。ところが終わってみれば……。
前作のミステリらしいミステリから一転、たくらみに満ちた野心作(たぶん)。
終章で明かされる伏線の山、真犯人(?)の策謀(??)には目をむくこと請け合い。
中盤にかけて展開が深刻になるにつれ、軽妙さが失われていくのはやや残念だが、現時点(04年8月)で氏の最も好きな作品。あの暗号の真相は……あちこちで書かれているのでご自分でお探しあれw


03.7.19
評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『九十九十九』舞城王太郎

2003年07月17日 | ミステリ感想
~あらすじ~
「苦しさを感じるなら、僕なんて愛さなくていいんだ」。
聖書/『創世記』/『ヨハネの黙示録』の見立て連続殺人を主旋律に、
神/「清涼院流水」の喇叭が吹き荒れる舞台で踊りつづける超絶のメタ探偵・九十九十九の魂の旅が圧倒的文圧で語られる。“世紀の傑作”はついに王太郎の手によって書かれてしまった!
「ハァレルゥヤ」。
(表紙見返しより)


~感想~
徒然。題材が九十九十九である必要は全くと言っていいほどなし。流水のJDCとはほんの少しもつながらない。これは完全無比の舞城文学。文学だ。ミステリ……なのか? ところどころに流水に捧ぐ、いや力量差を見せつける流水的細工&仕掛け。トリビュートというよりも「俺の方が断然上なんじゃい!」と力の差を誇示しているような。あいかわらずなんでこんな文章が読みやすく、引きつけられてしまうのか不思議でしかたない。終章の「九十九十九」の名が意味することの解題にはあ然。流水……先を越されてしまったのでは? 結局は愛と家族に回帰するいつもの物語。あの絵がもう……参りました。これで長編書く作家もいるだろうにというトリックやプロットやアイディアが惜しげもなくびしばし詰め込まれているのもいつものこと。これもラストの一文に全てが収束し集束し終息するのだろう。極論すればその一文のためだけに書かれた大作なのだろうか。天才と狂人紙一重。いやその紙こそが舞城王太郎なのか? 天賦の表。狂気の裏。なんでもいい。舞城、ここにあり。


03.7.17
評価:★★★★★ 10?
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ミステリ感想-『葉桜の季節に君を想うということ』歌野晶午

2003年07月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ひょんなことから霊感商法事件に巻き込まれた自称『なんでもやってやろう屋』成瀬将虎。
恋愛あり、活劇ありの物語が行き着く先とは? 03年度クチコミ最強ミステリここに見参!!
日本推理作家協会賞、本格ミステリ大賞、このミス1位、文春2位、本格ミステリ・ベスト10 1位


~感想~
これを待っていた! これぞ才人・歌野晶午の本領発揮・面目躍如!!
ひさびさに頭がくらくらした大仕掛け。巧みな誤導(ミスディレクション)と流麗な展開。
これぞ、これでこそ歌野晶午! 氏の名を一躍世間に広めた、話題作にして大傑作!


03.7.16
評価:★★★★★ 10
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