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非ミステリ感想-『テスカトリポカ』佐藤究

2024年07月05日 | ミステリ感想
~あらすじ~
メキシコと日本のハーフの少年コシモはネグレクトな環境と裏腹に並外れた体格に恵まれる。
麻薬王のバルミロは対立組織に襲われて一人生き残り虎視眈々と復讐を狙う。
元心臓血管外科医の末永はいつか執刀医に戻る日を夢見ながら臓器密売に携わる。
三人の運命が交差し、テスカトリポカ(煙を吐く鏡)は生贄を求める。

2021年直木賞・山本周五郎賞・このミス2位・文春2位


~感想~
自分にとって1ページたりとも面白い場面がなかった。
バルミロの信奉するアステカ文明の逸話が主題として何度も描かれるが「こんな野蛮なクソ文明は滅ぼされて当然だろ常識的に考えて…」としか思えない世界残酷物語で、読むだに胸が悪くなるばかり。
アステカだけではなく現代の登場人物も揃いも揃ってクソ野郎ばかりでとうてい肩入れできず、いったい何をどう楽しめばいいのかすらわからない。
ミステリ的にも評価されたがミステリ的側面がそもそも存在しない広義のエンタメ=ミステリであり、エンタメだとしてもこの血生臭さはいったいなんなのか。コシモがテスカトリポカの正体(※これもミステリ的なものではなく古代の神の現代的解釈である)に思い当たるやただそれだけであっさり身の振り方を変えてしまうのも自分には意味不明で、末尾に世界残酷物語をまた付け足すのもいったいなんの効果があるか、純文学というものが大嫌いな自分にはこれまた意味がわからない。アステカ文明の胸糞悪くなるだけの設定資料を最後まで延々と読まされて「ともあれアステカ滅ぶべし」という念を強くしただけである。
中盤の少年が絶対知る由もない事実をなぜか知っているというミステリっぽい展開も一切の説明がつかず「なんかそういう勘」で済まされたのも酷かったな…。
総じて「ノックス・マシン」や「独白するユニバーサル横メルカトル」の系譜に連なる「このミス上位につられて手を出した初心者が読書嫌いになること請け合い」の一冊だった。


24.7.5
評価:なし 0
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