小金沢ライブラリー

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コガトナ2022目安箱

2022年07月31日 | お笑い
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コメント (6)

ミステリ感想-『月灯館殺人事件』北山猛邦

2022年07月28日 | ミステリ感想
~あらすじ~
本格ミステリの神と呼ばれる天神人が住まう月灯館。
そこは携帯もネットも通じず雪で脱出不能の館で、スランプに陥ったミステリ作家らが文字通りの缶詰にされるため越冬していた。
その7人のミステリ作家が「本格ミステリ七つの大罪」と名指しされ犯行予告をされる。彼らはなぜ殺されるのか?


~感想~
「令和の新本格ミステリカーニバル」という触れ込みに正面切って答えつつ「全ての本格ミステリを終わらせる本格ミステリ」を名乗るやべえ作品。シン・本格ミステリなの?
本格ミステリの神とか、1月に1冊書く今は本格から離れた作家とか、本格でデビューして一般文芸に移った女流とか、色んな顔が思い浮かんでしまうが実在の人物・団体とは一切関係ないのでそこは安心して欲しい。
いきなりメイントリックの話をすると、アンフェアじゃないけどそれは卑怯だろ! やりたい放題じゃねえか! なトリックではあるが、講談社ノベルスで出してた初期作品群を読んでると「あんなに粗かった北山猛邦がこんなに立派になって…」と感無量。あの頃にやりたかったし実際やってみたが力不足で十全には描けなかった作品が、完成品として出された風格である。
それに加えてダンガンロンパのスピンオフとトリックに絡んだおかげと思いたくなる、どうしようもない黒い悪意と説得力の付け方には笑ってしまう。
なんなら適当で良い密室トリックが「物理の北山」の名に恥じない程度にいちいちちゃんと良く出来てるのもいい。ディテールをしっかりした上ではっちゃけてるからメインの破壊力が増すのだ。
本格ミステリを心から愛し憎んだ人間にしか発想できない動機と、明らかにアレを意識したラスト一行も最高で、偏愛できる作品である。

もっとも10点付けたのは初期作品も読んでいたし、ダンガンロンパ1~3もクリア済のファンだからという側面が強く、ある意味でアンチミステリでもあるので、ミステリ初心者は手出し無用。相当ミステリを読み慣れた人のほうが楽しめるし、そっちはそっちで何かしらのダメージを負うだろう。
初心者の方は北山作品なら素直に「少年検閲官」~「オルゴーリェンヌ」を読んでいただきたい。あっちは普通に傑作なので。

まだまだ語り足りないので完全ネタバレ感想も書いた。興味があればどうぞ。 → 完全ネタバレ感想


22.7.26
評価:★★★★★ 10
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ミステリ感想-『死びとの座』鮎川哲也

2022年07月27日 | ミステリ感想
~あらすじ~
照明のいたずらで座った人が死人のように青ざめて見えることから「死びとの座」と名付けられた公園のベンチ。
そのベンチに座ったまま撃たれたと思われる死体が発見され、鬼貫警部らが捜査に当たる。

1984年文春7位

~感想~
鬼貫警部シリーズだが、鬼貫は随所に鋭い推理を見せるものの端緒と解決に関わるだけで、主人公は本作限りの登場となるある人物であり、彼が足を使って捜査し、関係者の女と良い雰囲気になったりと大活躍するので、シリーズ物を期待していた読者は少し注意。
被害者は今で言うものまねタレントなのだが、1984年の出版当時は珍しい存在で、その説明だけで数ページがあてられたりと、昭和ミステリならではの楽しみがあちこちにある。
もちろんそれだけではなく流石は鮎川御大で、解決したかと思われた事件が些細な手掛かりから崩れ、きっちりと意外な真相を現し、意味ありげながら「ただの公園のベンチかよ」とずっこけたタイトルが再び脚光を浴びる、堅実かつ丁寧な仕事ぶりで、古さを感じさせない不変のものがある。シンプルかつわりと力ずくのトリックも笑った。
2冊続けて読んだ久々の鮎川哲也は文章自体も面白く、やはり出色の存在だと思った次第である。


22.7.23
評価:★★★ 6
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ミステリ感想-『朱の絶筆』鮎川哲也

2022年07月26日 | ミステリ感想
~あらすじ~
文壇の巨匠・篠崎豪輔は軽井沢の別荘に作家や編集者らを招きひと夏を過ごすのを習慣としていた。
だが頑固で偏屈な篠崎はほうぼうで恨みを買い、この夏に集まった面子もそれぞれの理由で彼を憎んでおり、予想通りについに事件が起こった。

本格ミステリベスト99位

~感想~
絶対話にオチのつくミステリ最高や! 純文学なんていらんかったんや!
直前に読んだオチなし「残虐記」も文春ミステリランキングに入ってたけどな。

冒頭で名を伏せられた登場人物たちの、それぞれの篠崎を恨むに至った経緯が描かれ、そのエピソードが多彩でまず面白い。
その覆面キャラと来客の誰が同一人物なのか次第に明かされていき、この経緯のおかげでそれぞれの背景と思惑がすっきりと理解でき、キャラ立ちと各人の把握にも一役買って実に上手い趣向である。
内容は古色蒼然たる山荘の連続殺人で、警察は普通に介入するもののなすすべもなく凶行を許し続け、最後には安楽椅子探偵が謎を一刀両断するのだが、400ページにわたり丹念に連続殺人を描いておいて、解決は星影龍三のRTAで30ページで解かれてて笑った。
この推理の手法がRTA過ぎる。

星影龍三「まず本筋に関係ない謎を解いて信頼度を上げます。第1の殺人のトリックを解けば犯人のアリバイが崩れ動機も明らかになるのでここは丁寧に解いていきます。
第3~4の殺人の伏線は後出しですが第1の解決で犯人は詰んでますし信頼度が最低ラインに達してるのでクリアできます。まだ抵抗された時の為に犯人の自白も先に取っておきます。これで最速です」

結末も「推理して解決するけど後は知らん」というRTAらしく星影探偵らしい投げっぱなしで、伏線の後出しや詰み切れていない推理の粗もあるのだが、解決に必要なフラグだけはきっちり立てられていて、必要最低限にして十分。
オーソドックスな昭和の本格ミステリが読みたい時にはうってつけの佳作である。


22.7.16
評価:★★★☆ 7
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今週のキン肉マン #388 便利屋の大男との絆!!

2022年07月11日 | 今週のキン肉マン
・見たかった技なので避けずに受けるバーザーカー
・挑発されたアシュラマン六本腕を活かせないチャランボに切り替える
・そういうとこだぞ
・追い詰められて連撃竜巻地獄って追い詰められたベジータのちっちゃい連続エネルギー波と一緒
・カラスマンの必殺技級を被弾
・喉貫かれてるのに意外とダメージ浅い
・テンパったアシュラマン六本腕を束ねて捕まえやすくする
・ダメだこいつ早くなんとかしないと
・サンシャインがいなくなったら手も足も出てない
・生きててそして早く来てくれサンシャイン
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ゲーム感想-『神獄塔メアリスケルターFinale』

2022年07月09日 | ゲーム
~あらすじ~
ついに地下監獄から脱獄を果たした血式少女たち。だが地上は無数の屍が折り重なり、空を飛ぶ悪食の艦隊塔と死刑台少女(ジェノサイド・ピンク)が支配する地獄さながらの世界だった。
敗れた血式少女たちは散り散りとなり、新たな監獄塔へと飛ばされるが、そこで出会った新たな仲間とともに、絶望の戦いへと挑む。


~感想~
前作の感想はこちら → ゲーム感想-『神獄塔メアリスケルター2』

おなじみコンパイルハートのあらびきRPGもシリーズ三作目ともなれば遊びやすく改良できるんだと驚かされた。
やることは基本的に同じダンジョンRPGなのだが、3チームに分かれ、協力し合いながら1つのダンジョンを攻略していくシステムが秀逸で、3分割のおかげでマップは広すぎず多すぎず飽きが来る前にギリギリでクリアできる良い塩梅。
システム的に理不尽な面もだいぶ減らされた。たとえば前作と比較すると、

・ドアを開いても急にボスキャラが出てこない
・ちゃんと説明されるステータス
・急に出てくるけど1.5倍くらいの強さに収まった雑魚
・マップ上で上りか下りかわかるようになった階段
・一度に全部受注できるクエスト
・モンスターを数匹倒してくるだけのクエストなのに異常に低い出現率で、エンカウント率をむちゃくちゃ上げても40分掛かったりする
・そのクエスト報酬はゴミ
・強スキルを使っても次の行動順が遅れない
・読み込みが間に合うようになり戦闘スキルの位置がちょくちょく変わらない
・隠し通路が無いので最大HPの4倍ダメージの全体攻撃をしてくる雑魚に遭わない

などなど「普通のRPGになっただけだろ」と言われたら返す言葉もないが、改善は改善である。
もちろん遊びやすくなったといってもそこはコンパちゃんなので、移動中は6ダメージしか受けないダメージ床の上で敵にエンカウントすると120ダメージを喰らい序盤はあっさり全滅、敵の先制攻撃から3ターンボコられて全滅、倒せないイベントボスに袋小路に追い詰められ全滅、ノーヒントで必中全体即死攻撃を喰らい全滅とあらびきさは健在。もちろん自動セーブなんて洒落たものは無いので手動セーブした地点からやり直しである。最長で70分戻ったぜ。
なおコンパちゃんもさすがにノーヒントで必中全体即死攻撃は理不尽だと気づいたのか、攻撃前に詠唱(時間差攻撃。ダメージを与えるとたまに解除)するようにアップデートしたらしい。
アップデート前はノータイムで撃ってきてたのかよ。

ストーリーは3チームに分かれただけ薄まったものの相変わらず完全フルボイスの熱演が光り、3作分積み重ねた思い出が随所に感じられる。なにげに本格ミステリ的な仕掛けがいくつもあるのもポイント高い。
本作には1と2のストーリーとイベントが全て収録されており(※ただしボイス無し)、少なくとも進化を感じるためにも2はやっておくべきだが(※時系列は2→1→本作)ストーリーに目を通すだけでも理解はできるので、いきなり本作から始めてもいいかもしれない。
個人的にはもっと理不尽な2の洗礼を浴びてからプレイして欲しいが。

不満点としては終盤で急に始まる恒例のガチ推理イベントが薄味になり、犯人の指名すらできないことと、クリア後にできることが何もないこと。二周目の引き継ぎとかクリア後ダンジョンとかエンドコンテンツといったものが一切ないので、トロフィーを回収したらマジで無である。レベルを引き下げて延々と鍛え直せるのにである。何年も前に発売された「フェアリーフェンサー エフ」には引き継ぎもあったのにである。
さすがコンパちゃんだぜ!!(やけくそ)

色々言ってみたものの、シリーズ完結編としてはストーリー的に申し分なく、ゲームとしても確実に進化して楽しくクリアできるので、前作をやったファンは絶対にやるべきだろう。


評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『残虐記』桐野夏生

2022年07月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
作家の小海鳴海は10歳の時、男に1年にわたり監禁された。
その経験を糧に作家となったが、忌まわしい記憶は封印していたものの、仮釈放となった犯人の男から手紙が届く。男は言う。「先生、ほんとにすいませんでした。でも、私のことはゆるしてくれなくてもいいです。私も先生をゆるさないと思います」
彼女は手記を残して失踪し……。

2004年柴田錬三郎賞、文春6位

~感想~
あらすじで記したように、冒頭12ページで「なぜ彼女は失踪し今どこにいるのか」「なぜ生涯未婚を誓いながら結婚したか」「なぜ墓場まで持って行くと決めた秘密を明かす手記を残したか」「彼女をかつて監禁した男の謎の言葉の意味は」と列挙された謎が、全て「不明」のまま終わる話の何をどう楽しめばいいのか?
男の謎めいた「先生、ほんとに~」に至っては作者自身が「なぜかわからないけど思わず書いてしまったもので、自分でも意味がよくわからなかった」とのたもうているらしい。
え? 物語の真相・結末のほぼ全てが読者に丸投げされ、一切の解決が描かれない話が文春6位や柴田錬三郎賞に?(出来らあっ!)

多重解決といえば聞こえはいいが、読者に想像を委ねられるのはあくまで一定の結論が出ているか作者の中で確固たる結論がある場合にのみ認められる話で、投げっぱなしジャーマンはただ真相と結論をぶん投げただけの無責任に過ぎない。
素朴な疑問なのだが純文学ファンはこの話のどこをどう楽しんでいるのか不思議でならない。「想像力を働かせるのが楽しい」以外の理由で教えて欲しいし、そんなに想像だけで楽しめるなら本能寺の変の黒幕とか邪馬台国の場所の考察のほうが絶対楽しいだろ…。


22.7.7
評価:なし 0
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ミステリ感想-『ジャンプ』佐藤正午

2022年07月07日 | ミステリ感想
~あらすじ~
三谷純之輔が苦手な酒で泥酔した夜、恋人の南雲みはるは「朝食のリンゴを買って5分で戻ってくる」と言い残し、姿を消した。
彼女はどこへ、なぜ「ジャンプ」したように消えたのか。三谷は懸命に行方をたどるが…。

2000年文春7位

~感想~
ミステリとして物語として完璧な導入で幕を開け、三谷の調査で明らかにされていく彼女の足取り。はじめは妥当に見えた「ジャンプ」の理由は次第に曖昧になり、足跡とともに消えてしまう。そして時が経ち、三谷がある動機に思い当たるまでで大半のページ数が消費され、そこまでの展開も過不足無く、あとは納得の行くオチが着けば傑作になるところだが…。
結末ではそれまで伏せられていた、というかぼかされていた伏線が表に現れ、一つの謎が明かされ、同時に新たな一つの謎が浮上し、それが解かれないまま物語は終わってしまう。
だが本格ミステリではないので謎が全て解かれるとは限らないし、不透明決着ながら結末として不満の残るものでもなく、そこに至るまでの道中が抜群に面白かったので全く問題ない。
恋人命で必死に行方を探し、冷静かつ推理力に優れているようでいて実のところ色々とアレな三谷のアレさも伏線であり、読了後には読者の各々がそこになんらかの裏テーマを見出すことだろう。
普段読んでいる、基本的に全てが説明され尽くす本格ミステリでは味わえない読書体験で、これはこれで非常に良かった。ミステリ馬鹿ではない一般的な本好きならいっそう楽しめることだろう。


22.7.2
評価:★★★☆ 7
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ミステリ感想-『シューマンの指』奥泉光

2022年07月06日 | ミステリ感想
~あらすじ~
指を失ったかつての天才ピアニストがアメリカで復帰した。
音大を辞め医師となった私はかつて、彼―永嶺修人に傾倒しシューマンに魅了された。
目を疑う噂を聞いた私は、真実を探るとともに修人との高校生活を思い出す。

2010年このミス5位、文春5位、本屋大賞候補

~感想~
指を切断した天才ピアニストが指を生やして復帰したというミステリ的な謎は置いといて、シューマン愛に満ち満ちたガチの評論と哲学めいた音楽論が延々と交わされる。
門外漢なのでそれがどこまで正しく、どこまで画期的なのかはわからないものの、流し読みしている範囲でもわりと楽しめるのだが、そのさなかにものすごく唐突に俗物的な殺人事件が発生。
ところがそれも置いといてシューマン論と音楽家の卵同士の確執がまだまだ続き、冒頭から予告された破局を迎える。
その真相はといえば、それを認めればなんでもアリじゃねえかという代物で、トリック面ではがっかりなのだが、それに至るきっかけ、物語が始まった契機はなかなか興味深かった。
それを作中で指摘してくれず、読者の気付きに委ねるあたりはやや不満だったが、文学畑の作者なのでしかたあるまい。

問題はそういったことを一切指摘せず「幼い頃、「影踏み」をして遊んだ」「影法師を踏まれるとおのれは死ぬ。そういう象徴的な意味を影法師が持つということを幼い者の心の奥底まで刷り込んでくれる遊びが、他ならぬ影踏みであった」と完全にラリったポエムを3ページにわたって書き散らす文庫版の解説で(※作中に影踏みは一切出て来ない)、普段ミステリばかり読んでいるから知らなかったが、文学畑の作品だと他人の本の解説で純文学を書き散らすやべえ奴が出てくるのだと驚いた。しかも深刻なネタバレ付きなので速やかに破り捨てることを勧める。


22.6.28
評価:★★☆ 5
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ミステリ感想-『AX』伊坂幸太郎

2022年07月05日 | ミステリ感想
~あらすじ~
兜はフェアプレイを重んじる優れた殺し屋であり、並外れた恐妻家であった。
息子の親子面談の日に殺しの仕事を入れられ、スズメバチと呼ばれる殺し屋に狙われる日にスズメバチの巣を駆除する羽目になる、兜が紡ぐかけがえのない家族との日々。

2017年文春7位、本屋大賞候補

~感想~
「グラスホッパー」「マリアビートル」に続く殺し屋シリーズ三作目。前シリーズの殺し屋の生死が明かされてしまうのでなるべく順番に読んだほうがいい。
これまでの浮世離れした殺し屋とは異なり、兜は妻と息子をこよなく愛する家庭人でもあり、日常と殺しが地続きになっていて、それらを両立させる四苦八苦ぶりや、なろう小説のような殺し屋の日常が実に面白い。
シリーズ初の連作短編集で、多彩な殺し屋との戦いや、意表を突く仕掛けも各編で描かれるが、白眉はもちろん最終章。
一気に時系列が飛び、10年後の現在と10年前の過去が並列に語られ、その時何が起こり、今何が起きつつあるのかが作者得意の伏線の連鎖とともに、殺し屋であり夫であり父である兜の選択とその結末が描かれる。これも作者の得意とする家族小説と殺し屋シリーズの融合は最高の形で結実し、もし映像化されラストシーンで宇多田ヒカルの「One Last Kiss」が流れ出したら絶対泣いてしまうだろう。ラストシーンで「One Last Kiss」流したら大抵の作品は泣けるそれはそう。


22.6.23
評価:★★★☆ 7
コメント (2)