小金沢ライブラリー

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2018~2020年のミステリ遍歴

2021年09月20日 | 雑文
2018年
図書館のおかげで依井貴裕を全巻読めた。粗い点も多々あるが、半ば伝説になるのも納得の、他にない個性の光る作品ばかりだった。
月村了衛「機龍警察 暗黒市場」に打ちのめされ大ファンになった。都市伝説のように言われる「あまりの面白さで校正もついつい読んでしまった」のか誤植が山ほどあったのも印象的。
昨年の「NN」に続くメフィスト賞負の遺産の秋保水菓「コンビニなしでは生きられない」、名倉編「異セカイ系」は実に酷かった。酷かったがホームランか三振かの、あの頃のメフィスト賞が戻ってきたようでうれしかった。
旧作では長年、本棚で熟成させておいた浦賀和宏「松浦純菜シリーズ」を読み始めた。ちょうど読み終わった時に作者が急逝してしまい、一層思い出深いものとなった。
あの清涼院流水がミステリを離れ、英語講師やルイス・フロイス「日本史」の全訳をしていると知った。残念ながら続刊は出ていないようだが。
宇佐美まことに本格的にはまったのがこの年。「愚者の毒」で日本推理作家協会賞は取ったものの、ランキングには見向きもされていないが、とにかくエロくてとにかくすごいミステリを次々と放っている。


2019年
「私が殺した少女」ですっかり原尞のファンになってしまった。ハードボイルドとミステリの完璧な融合で、それに加えて驚異的な文章力でただ読むだけでも面白くて仕方ない。
周木律は「大聖堂の殺人」で堂シリーズを完結させた。ツッコミどころの山で非常に楽しく読めたが、本来の楽しみ方ではないだろう。森博嗣になれなかった理由はよくわかった。
数ヶ月前からあらすじと書影を予告され、たった一作で漫画化・映画化と必要以上に持ち上げられた今村昌弘だが、第2作「魔眼の匣の殺人」できっちり前作を超えてきた。周囲は騒がしいものの第3作はさらに2年半後と、作者は落ち着いている様子で安心して見守っていられる。
この年最大のトピックは相沢沙呼「medium」に尽きる。帯を埋め尽くす書店員サマの賛辞に、今やなぜか狙ったようにダメミスを推薦することでおなじみとなってしまった有栖川有栖の名が輝き、読む前から地雷臭がすさまじく、これだけで読む気を失ったという意見もいくつか見たほどだったが、読んでびっくり2019年を代表する傑作だった。
国民的作家への道を着実に歩んでいる米澤穂信は11年ぶりの小市民シリーズ「巴里マカロンの謎」を刊行。ミステリとしては簡単すぎるのにあの小鳩くんや小山内さんが一切真相に気づかないという不自然さで今ひとつだったが、シリーズ再開自体がうれしい。


2020年
浦賀和宏が急逝した。年齢が近いこともありひいきしていたが、ちょうど松浦純菜リーズを読み終えたタイミングで亡くなってしまうとは。本名がシリーズ主人公と同じだったり、「究極の純愛小説を、君に」が作者死去で完成するような内容だったりと驚かされた。近年も若い頃と同じ尖った作品を出し続け、色々な構想もあったそうで残念でならない。
昨年刊行の澤村伊智「予言の島」が個人的にスマッシュヒット。ホラー作家ならではの発想で心底驚かされた。
綾辻行人は「Another2001」をようやく上梓。ここ十年で一番推理が冴えて、真相を完璧に見抜いてしまい十全に楽しめなかった。
旧作では若竹七海「葉村晶シリーズ」を一気に読破。今さら読んでおいて恐縮だが全ミステリファン必読のシリーズである。
またコロナ禍により(?)前年11月~本年10月だったこのミス期間が1ヶ月前倒しとなった。突然の変更で話が違うと思った出版社も多いだろう。この影響は早くも翌2021年に現れ、例年より1ヶ月早い7~8月に話題作が集中することとなる。
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2016~2017年のミステリ遍歴

2021年09月19日 | 雑文
2016年
刊行前からアニメ化決定という異例のスタートを飾った青崎有吾「アンデッドガール・マーダーファルス」が登場。マンガ化はしたもののいまだアニメ化はしていないが、続編も期待通りの面白さで続いて行く。
早坂吝は「誰も僕を裁けない」で社会派・エロ・ミステリの三身悪魔合体に成功。デビュー作の頃のエロさは据え置きでこちらもシリーズは順調に続いている。
旧作では宮部みゆき「ソロモンの偽証」のぶっちぎりの面白さに魅せられた。個人的には「模倣犯」に軍配を上げるが、歴史的傑作であることに違いはなく、通勤のお供に文庫版5冊を読んだ1ヶ月は至福の時間だった。
倉阪鬼一郎の小林幸子シリーズは昨年秋に刊行できず「桜と富士と星の迷宮」を今年刊行し閉幕となった。ミステリもその後書いていないような…。
昨年話題をさらった「その可能性はすでに考えた」の続編「聖女の毒杯」は、前作をはるかに上回る素晴らしい出来だった。やはり量産できる作風ではなく、第3作は5年経った今も出ていない。
個人的には一度手放した森博嗣「Gシリーズ」・「Xシリーズ」の読破を開始。質の低下は否めないが、なんだかんだで楽しく読めた。
最強ミステリ漫画「Q.E.D.証明終了」の加藤元浩が初のミステリ小説をリリース。正直、可もなく不可もない出来だったが、第2作は見違えるほど面白かった。まず漫画家が小説も普通に書けるのがすごいと思う。
鮎川賞に輝いた市川憂人「ジェリーフィッシュは凍らない」がこのミス・文春・本ミスでベスト10入り。「現代の十角館の殺人」とまで呼ばれた。犯人はモロバレだったが。
また中古市場で数万円で取引されている飛鳥部勝則「堕天使拷問刑」をブックオフでゲット。噂に違わぬ怪作で家宝にした。


2017年
国内では今村昌弘「屍人荘の殺人」の年として記憶されるだろう。ミステリとアレを悪魔合体させたイロモノというだけではない、大型新人の華々しいデビューだった。
そして海外では陳浩基「13・67」の年である。海外ミステリへアンテナを張っていない自分にも超絶傑作の声が届き、比較的苦手ではない中国語圏の作品なので読んでみたら噂と寸分たがわぬ空恐ろしいほどの歴史的傑作だった。
この年に読んだ旧作では山田風太郎「妖異金瓶梅」に尽きる。噂に聞いていた以上の驚愕の作品で、いろいろ語りたくなるが何を言ってもネタバレになる。よくぞこれをネタバレを踏まずに読めたものだ。
通勤圏内の気軽に寄れる位置に図書館の出張所が出来たため、梶龍雄「龍神池の小さな死体」、飛鳥部勝則「誰のための綾織」、門前典之「屍の命題」も読めた。どれも最高だった。
井上真偽は「探偵が早すぎる」をリリース。「その可能性はすでに考えた」のような瞬殺ぶりは本家には及ばなかったが、これはこれで良かった。ただ上下巻なのに下巻の帯で「大好評シリーズの続巻」とうたった講談社は叩かれて欲しいし、これが中学生の読書感想で人気というニュースには笑った。感想文の参考にしようと思ってうちに来た中学生はざまあみろ。
綾辻行人「十角館の殺人」から30年を記念し、講談社は「7人の名探偵」を企画。新本格オリジナル・セブンというパワーワードとその人選や、オリジナル・セブンの一部の空気読めなさはアレだった。
マイナスの方のトピックでは柾木政宗「NO推理、NO探偵?」が出色。内容の壮絶さもさることながら読んだ人の多くが名前を呼ぶ気すら無くし「、?」や「NN」と様々な隠語で呼び始めたのも笑った。
マイナスといえば(マイナスといえば?)宿野かほる「ルビンの壺が割れた」も忘れてはいけない。「すごい小説ができたからキャッチコピーを書いて欲しい」という企画で、無料だから読んだがマジでもう駄目すぎてすごかった。2作目以降は話題にもなっていない炎上商法で、これを名刺代わりの10選に入れている人がいて震えた。もっとこう…あるだろう!
また蘇部健一はルビンのナントカを早々に丸パクリ……インスピレーションを得た「小説X」を企画。タイトルを付けて採用されれば5万円という生々しさに笑った。
余談だが自分は早ミスをもともと評価しておらず、記録にも含めていなかったが、「13・67」をランキングから消し去ったことで完全に見放した。
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2014~2015年のミステリ遍歴

2021年09月18日 | 雑文
2014年
ブログへのコメントでおすすめいただいた北山猛邦「『ギロチン城』殺人事件」が空前の面白さだった。今思い返してみてもあれはミステリ史に残っていい作品だったと思う。もっと知られてくれ。
倉阪鬼一郎が毎年秋に刊行していたバカミスはこの年の「波上館の犯罪」で頂点を極めた。すさまじく労力がかかってるけど数ページ読んだら気づく仕掛けで読者の度肝を抜いた。
麻耶雄嵩は「さよなら神様」で神様が一行目に犯人を公開するという神業を披露。やっぱり麻耶は頭おかしい。
「ゴールデンスランバー」は絶賛したものの、「陽気なギャングが地球を回す」が全く口に合わず数十ページで挫折した伊坂幸太郎に再挑戦。この後は読むたびに好きな作家になっていたが「陽気な~」にはまだ挑んでいない。
乱歩賞が久々に輩出した有望新人の下村敦史が「闇に香る嘘」でデビュー。これも語り手が全盲の中国残留孤児の老人という、題材が面倒すぎて誰も手出ししないものだが、今後も誰も書かない未知の鉱脈を延々と探し続ける稀有の作家となっていく。
メフィスト賞からは早坂吝が「◯◯◯◯◯◯◯◯殺人事件」で衝撃のデビュー。エロと本格ミステリを融合させた作品をこの後も出し続けるし、エロを離れても優れた、本格ミステリの新たな旗手になるとはこの時点ではまだ思わなかった。
さらに大型新人としては白井智之のデビューもこの年。グロとSFと本格ミステリの悪魔合体で、その卓抜した発想はSF界隈でも話題になっていく。自分は正直ここ十年の新人の中で最も評価している。
年末ランキングは米澤穂信がノンシリーズ短編集で制した。
個人的には全然話題にならなかった(と思うが)歌野晶午「ずっとあなたが好きでした」は新たな代表作になっていいと思う。
島田荘司御大は「幻肢」で初の映画化された。なぜ「幻肢」でと疑問しか湧かない出来事だった。
余談だが2ちゃんで昨日読んだ本の感想と十数年前の感想を一緒くたにされ「あいつの主張は一貫してない」と無茶な叩かれ方をしたのもこの年だった。あれは笑った。


2015年
伝説的な噂だけ聞いていた依井貴裕「夜想曲」をゲット。噂に違わぬ良作だった。
旧作では高野和明「ジェノサイド」を読んだ。作者が日本人でなければとっくにハリウッド映画化されていただろう歴史的傑作である。
赤川次郎も初体験。デビュー作「幽霊列車」は奇想揃いの珠玉短編集だった。
メフィスト賞でデビューした井上真偽が「その可能性はすでに考えた」で飛躍を遂げた。ノベルス版で30ページ程度の問題編から無理くりひねり出されたバカトリックを、全ての可能性を検討済みの名探偵がタイトル通りに瞬殺するという驚異の作品で、続編はより出来が良かった。
深水黎一郎は「ミステリー・アリーナ」で多重推理ジャンルの限界に挑戦。最高の褒め言葉のつもりなのだが、まさに全力の悪ふざけだった。
北山猛邦は「オルゴーリェンヌ」であるジャンルの最高到達点を叩き出した。そのジャンルがなんなのか口にするだけで即ネタバレとなるため今後も語られることはないだろうが、間違いなく一つの頂点である。
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2011~2013年のミステリ遍歴

2021年09月17日 | 雑文
2011年
先日「3.11の時なにを読んでいたか」という話題になって見返したら水田美意子「殺人ピエロの孤島同窓会」を首をひねりながら読み返していたのを思い出した。作者は12歳というただそれだけでデビューした代物で、何を言っても大人げなくなるから言及しづらいが、うん、まあ、12歳であんな量の文章を書けたのはすごいと思う。
その2週後には日本一のダメミスと自信を持って推薦できる森山赳志「黙過の代償」も読んだ。これはもう本当にすごいので逆に読んで欲しい。
乱歩賞でデビューした遠藤武文「プリズン・トリック」もダメミス界を賑わせた。その後なんと市議会議員になってしまったのも面白すぎた。
1998年のデビュー作「名探偵に薔薇を」をネタ被りと理不尽に批判され、以来マンガ原作等で活動していた城平京が「虚構推理」で13年ぶりにカムバック。4年後にマンガ化、9年後にアニメ化とやや遅咲きの花を咲かせた。
麻耶雄嵩は「メルカトルかく語りき」で本格ミステリの極北に挑んだ。
面白く読んでいた海堂尊「チーム・バチスタの栄光シリーズ」はこの年に読んだ「イノセント・ゲリラの祝祭」で見限った。
オールタイム・ベスト10に入る宮部みゆき「模倣犯」をこの年に読んだ。あの解決編は歴代1位くらい好き。
本格ミステリ界のトピックとして、米澤穂信「折れた竜骨」が「特殊設定ミステリ」と呼ばれ、この手の作品の総称として定着していくこととなった。


2012年
綾辻行人の待望の館シリーズ第9弾「奇面館の殺人」がリリース。法月綸太郎も久々の長編「キングを探せ」を出した。
個人的に猛プッシュしている似鳥鶏は「楓ヶ丘動物園シリーズ」を開始。色々と映像化しづらい「市立シリーズ」とは異なり、容易にアニメ化もできるし門戸の広い気軽に楽しめる作品なのでいつかブレイクしてくれ。
個人的には思い出したくもない事情により一時的に小説家全般に嫌気が差して10冊程度しか読めなかった年だった。


2013年
島田荘司御大が「アルカトラズ幻想」で豪腕の健在ぶりを示し、信者としてもうれしくなりミステリ愛を取り戻した。
御大は7年ぶりの御手洗潔シリーズ「星籠の海」も出したが…映画化もされたけど…もっと面白いシリーズはいくらでもあったわけで…一般層の目に触れる島田作品は微妙なものばかりで悲しい。
受賞者の打率が極めて低い日本ミステリー文学大賞新人賞を獲得した葉真中顕が「ロスト・ケア」でデビューし、以降も様々なジャンルで活躍する。
浦賀和宏は「彼女の血が溶けてゆく」で桑原銀次郎シリーズを開始。SFやぶっ飛んだ設定を好む作者だが、地に足のついた堅実な、しかし途方もない超展開を見せる良作揃いで、もう少し話題になってもよかった。
メフィスト賞からは周木律が「眼球堂の殺人」でデビュー。本格ミステリの良いところと駄目なところを凝縮したような、何かと粗い作品ばかりだが、あの頃の館ミステリをまた見せてくれたことには感謝している。
さらに横溝正史ミステリ大賞からは河合莞爾も「デッドマン」でデビュー。隠す気がさらさら無い島田荘司愛にあふれた作品で、正統後継者の貫禄を以後の作品でも見せつける。
寡作で知られる倉知淳はまさかの2ヶ月連続で新作を出したが、以降毎年のように新作を出し続け、単に刊行してくれる出版社が見つからなかっただけなのでは?と思わせたし、何かをこじらせたようで質がガクンと落ちたのはファンとして残念な限りである。
年末のランキングでは、後にまさかのキムタク主演でドラマ化された長岡弘樹「教場」がこのミス2位、文春1位と上位を賑わせた。
連城三紀彦が逝去した。著作は後年は恋愛物ばかりだったが、恋愛小説でありながらミステリでもあり続け、三津田信三に「あれほどのミステリ作品を書いた作家が、そう安々と己がミステリスピリットを捨てるわけがない。いや、仮に本人が捨てようと思っても、それは自然と滲み出してくるのではないか――。実際、その期待は裏切られませんでした」と言わしめた。
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2009~2010年のミステリ遍歴

2021年09月16日 | 雑文
2009年
講談社BOXとはなんだったのか。島田荘司「Classical Fantasy Within」を見るたびに思い出す。
まず講談社BOXはうっすい本を化粧箱に入れることで飛躍的に価格を高騰させただけの装幀で、西尾維新「化物語」のおかげでたぶん爆発的に売れたが、本棚のスペースは取るわ高さが合わなくてそもそも本棚にしまいづらいわで値段以外も良いところがなかった。
そして島田荘司「Classical Fantasy Within」は12ヶ月連続刊行で太平洋戦争→中世ファンタジー→未来都市がストーリーに一見して繋がりがなく描かれるが、終わってみれば本格ミステリとしてまとまるという触れ込みで出たものの、あっさり12ヶ月連続刊行が頓挫するだけならまだしも、8作目で完全に停止してしまい今に至るという有様で、つまり全然本格ミステリとしてまとまっていない。士郎正宗の美麗なイラストと、8作目が単品で優れた本格ミステリだから信者はわりと許してるけどな。
メフィスト賞では望月守宮が「無貌伝シリーズ」でデビュー。自分にはスマッシュヒットしたが世間的には一切話題にならなかったし、シリーズ完結後には音沙汰なく、後のメフィスト賞作家に望月姓を使われたりとたぶん抹殺された。異能力バトルと本格ミステリを融合させ、名探偵にスポットライトを当てた面白い本なので一人でもいいから読んで欲しい。
望月守宮に限らず、この頃に受賞した二郎遊真、赤星香一郎、丸山天寿はあっという間にいなくなってしまった。
清涼院流水(現在)最後のミステリとなった「コズミック・ゼロ」が出たのもこの年か。「コズミックのような作品を」と依頼されてタイトルにコズミックを入れてしまうのは流石である。内容もこれがダメミスだ!と見せつけるようなすごいものだった。
講談社は島田荘司御大に選んでもらいアジアの本格ミステリを何冊か刊行した。2冊読んで「このミス海外版のランキング上位を読んだほうがいいのでは?」と気づいたため追わなかったが、これもあっという間に終わったっけ。
エジプト旅行の懸賞付きミステリの触れ込みで、ふじしろやまと「Rの刻印」が出版されたがこれも酷かった。何が酷いって小説としてミステリとしてつまらなすぎた。ただつまらないだけではなく文章も酷かった。第二弾も無かった。今見たら綾辻・有栖川が推薦してて笑った。
2020年に「medium」で斯界を震撼させた相沢沙呼が鮎川賞を獲得してデビュー。新人潰しとしか思えない難癖つけてるだけの北村薫・山田正紀・笠井潔の選評は今見ても酷い。「この作品はあまりに達者すぎるし、完成されすぎていて、ここに探偵小説の未来を託すのは難しいかもしれない」ってマジでなんだったの山田センセ? 宮部みゆきや京極夏彦はもっと達者だったろ……。
また綾辻行人の新作というだけではないホラーとミステリの融合の大傑作「Another」が話題を呼んだ。


2010年
なぜか清涼院流水「トップラン」シリーズを読んでしまったが感想は控えておく。
道尾秀介が「光媒の花」で地の文で書いた事実を後からあっさり否定して「ミステリを離れて書くことはこんなに自由なのかと感じた」「自分の作品のミステリという側面ばかり取り上げられるのが嫌」とかのたもうたため見限った。自分、道尾を見限った速さには自信あります!
湊かなえも「告白」後はいまいちでこのあたりで切った。以後もランクインはしていない。
麻耶雄嵩は後の月9原作「貴族探偵」を刊行。いや今かえりみても麻耶が月9!? 収録された短編「こうもり」は2000年代最高傑作の一つに数えられるだろう。
西尾維新は完全にラノベに舵を切った「零崎人識の人間関係」を一気に4冊刊行。
七河迦南「アルバトロスは羽ばたかない」が知名度の低さを乗り越えてランクインしたが、そういえばこの人もすっかり見なくなってしまったな…。
東川篤哉「謎解きはディナーのあとで」がありえないほど馬鹿売れして、本格ミステリが大衆に受け入れられ始めたのもこの辺からだったと思う。ぶっちゃけそこまで出来の良くない本作が大ヒットするのだからわからないものだ。
個人的には島田荘司が写楽の正体を突き止めた「写楽 閉じた国の幻」も面白かった。これも続編を匂わせたけど出ていない。続編でそれ以上に何か書くことがあったとも思えないが。
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2006~2008年のミステリ遍歴

2021年09月15日 | 雑文
2006年
ほうぼうで大傑作という評判を聞いていた連城三紀彦「戻り川心中」に魅了され、連城作品を読み始めた。どこまでも恋愛小説でありながら本格ミステリでもあるという特異な作風に夢中になっていく。
また年間ランキングを意識したことで、新刊を中心に買い、独自のランキング予想を楽しみだした。
2004年に出版された乾くるみ「イニシエーション・ラブ」を読んだのもこの年。10年後にテレビで有田哲平に採り上げられ再ブレイクしたのも記憶に新しい。
その他、竹本健治に「所有者の1割しか読んでない(うろ覚え)」と言われた笠井潔「哲学者の密室」も読んだ。
この頃からネット人口が爆発的に増え始め、新刊の評判が手に入りやすくなったように思う。その一環で道尾秀介と米澤穂信を読んだはず。
綾辻行人は講談社ミステリーランドからまさかの館シリーズ最新作「びっくり館の殺人」をリリースしたが、ぶっちゃけると半分は黒歴史である。


2007年
正月早々にこのミス1位に輝いたがさっぱりミステリじゃない平山夢明「独白するユニバーサル横メルカトル」を読んでトラウマになった。
ネットの評判から柳広司の偉人物を買い、そのまんま東「ビートたけし殺人事件」をブックオフで調達。
スマッシュヒットは三津田信三の「厭魅の如き憑くもの」で、刀城言耶シリーズは全ミステリファン必読。
何よりも横山秀夫を読みだしたのが大きい。当時よく見ていた書評サイト(※現在は消滅)がさんざんにこき下ろしていたので出遅れたが、読んでびっくり最高の作家だった。評論家か誰かが「ここ十年で一番の発掘は横山秀夫」と京極夏彦もいるのに言っていたが、心から同意できる。
横山秀夫がこんだけ面白かったならと刑事小説にも手を出し始め、大沢在昌「新宿鮫」や佐々木譲「制服捜査」も読んだ。
この年、宝島社が「バカミスじゃない!?」を刊行し、一層バカミスが広く認知された。前からバカミスに分類されていた霞流一、鳥飼否宇も当然ながら寄稿し、実力をまざまざと見せつけた。
後押ししたのが倉阪鬼一郎で、ここから数年にわたり講談社ノベルスでバカミス新作を書き下ろす。いずれ劣らぬ狂気の沙汰なのでぜひ一読を。
また数年前から名前と高評価だけ聞いていた伝説的作品の中西智明「消失!」も講談社ノベルスから復刊された。これもすごかった。


2008年
辻真先がなぜか覆面作家の牧薩次名義で「完全恋愛」を刊行し話題に。はなから正体はバラされていて本当にあれはなんだったのか。当時は御年76歳にして最高傑作と驚かれたが、2020年にも88歳でこのミス・文春の二冠を制したのだから恐ろしい。
島田荘司御大の肝いりで「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」が発足。以降も毎年地味ながら優れた本格ミステリ作家を輩出している。
読者=犯人という変化球(というか禁じ手)のイロモノ「ウルチモ・トルッコ」でデビューした深水黎一郎が作風をガラッと変えた「芸術シリーズ」を刊行し始めた。あのデビュー作はなんだったのだろうとこちらも思わせたが、後年の作品では「ウルチモ・トルッコ」どころではない魔球をいくつも放っている。
ミステリ外では理由は忘れたがなぜか直木賞作品の桜庭一樹「私の男」を読んだのだが、これがもう(※個人的には)ゴミ中のゴミで改めて純文学は自分の人生に必要がないという思いを強くした。
いやもう本当に「直木賞という肩書を冠した、実父が幼女にク●ニするという小説」ってなんなの?
同様に筒井康隆「ロートレック荘事件」も筒井ファンの普段はミステリを読まない連中が「空前絶後」「これはミステリではない」裏表紙でも「推理小説史上初のトリック」「前人未到」「メタミステリ」と持ち上げていたが、読んでみたら「例のトリック」で引っくり返った。お前らはもっとミステリを読め。
他に泡坂妻夫「生者と死者」の未使用品をブックオフで発掘。これはページがあちこち糊で閉じられていて、そのまま読むと短編だが、切り開くと長編の一部として取り込まれてしまうという意欲作だった。今でも未使用品を持っている。
私的ベスト1の辻村深月「凍りのくじら」を読んだのもこの年か。ドラえもんファンは必読。
日本一エロいミステリの愛川晶「六月六日生まれの天使」もぜひ。
このミスはなんだかんだでミステリ史に残るだろう伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」、湊かなえ「告白」が上位に入った。
また初野晴が後の「ハルチカシリーズ」第一作「退出ゲーム」を刊行。この一冊だけでアニメ化やヒットを確信し、5年以内に絶対売れると言い続けたものである。今となってはLGBTやらなんやらで続けづらいんだろなあ…。
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2003~2005年のミステリ遍歴

2021年09月14日 | 雑文
2003年
メフィスト賞を最年少の19歳で受賞した浦賀和宏にはまる。デビューしたのは数年前だが、読んだのは前年末から。全作品を読むことになるとは思わなんだ。
しかしこの年最大の衝撃は西尾維新だ。あっという間に時代の寵児になった維新ははじめメフィスト賞でデビューしミステリを書いてたのだ。毎月刊行するような驚異的なペースと、当時はまだ一般に浸透していなかったライトノベルが流行り出したのもこの頃だろう。(MF文庫Jの創刊が2002年7月)
同時期に親父がはまったきっかけで日本最強作家の一人である宮部みゆきにもはまる。維新・宮部のおかげで本格だけではないミステリの面白さを味わえたのかも知れない。
本格ミステリ大賞が設立され前年の倉知淳「壺中の天国」が受賞。もう20年近く続いているが、大賞とノミネート作品は本格ファンなら読んでおいて損のない質を保ち続けている。
また講談社ミステリーランドは「かつて子どもだったあなたと少年少女のための」をコンセプトに、絵本のような装幀と挿絵や子供向けの平易な文章が用いられ、数多くのミステリ作家が普段は書かないジュヴナイルに挑戦した。結局1冊目に出た小野不由美「くらのかみ」が完璧で、それを超えるものは出なかったが、レーベルを逆手に取った麻耶雄嵩「神様ゲーム」などちょくちょく話題作はあった。
この年を代表するのは歌野晶午「葉桜の季節に君を想うということ」だろう。初心者におすすめできる作品を10冊選べと言われれば真っ先に候補に上がる。
昭和ミステリでは都筑道夫「退職刑事シリーズ」を読み始め、良い評判を聞いた大阪圭吉「とむらい機関車」・「銀座幽霊」を読んだ。


2004年
個人的にはこの年に初めてのホームページを作り、これまで書き溜めていたミステリ感想をネットに公開した。
しかしネット大喜利に夢中で、ネットの交友はそちらばかり広がった。
ブログの感想を見るとこの年の8月9日に多数の本を読んだことになっているが、PCを持っていない2000年以前に読んだり、メモの紛失で読了日を把握していないものを、ネットに公開した8月9日にまとめて放り込んだだけである。時系列の矛盾とかではないのであしからず。
綾辻行人は館シリーズ最新作「暗黒館の殺人」をついにリリースした。


2005年
この年はネット大喜利に夢中でろくに本を読んでいない。
西尾維新はあっという間に戯言シリーズを完結させ、この後はラノベ中心へ舵を切っていく。そっちでも「化物語」をすぐ出したのだからとんでもない。
メフィスト賞は後の直木賞作家・辻村深月と、個人的に大好きなダメミス王・矢野龍王を輩出する両極端な年だった。
この頃に中町信の「天啓の殺意」等がタイトルを変えて復刻されて評判を呼び、しかも折原一と同じく絶対に叙述トリックを使うと聞いて読み始めた。
そして2005年といえばあの東野圭吾「容疑者Xの献身」をめぐる騒動だ。
五冠を達成した本作へ某二階堂黎人を中心に「本格ミステリではない」と噛み付いた件である。
あれだけ議論されて結局「本格ミステリとはなにか?」が全く定義されなかったくらい実に不毛な議論だったので、さわりだけ触れておく。
思えばこれかもしくは五冠達成をきっかけに年間ランキングのこのミス、文春、本ミスや本格ミステリ大賞を明確に意識して本を選ぶようになったのだと思う。
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2000~2002年のミステリ遍歴

2021年09月13日 | 雑文
昨年に引き続きメフィスト賞作家を読んでいる。高田崇史や積木鏡介、殊能将之らがデビューした。
創元推理文庫を知ったのもこの頃だろう。なんせ名前に「推理」が入っている。北村薫こそ全くはまらなかったが、このレーベルから出ているだけで一定以上の信頼感があった。
森博嗣はペースこそ3ヶ月おきに落ちたものの「Vシリーズ」を連載している。「S&Mシリーズ」ほど話題にならないが質は全然劣っていない。このへんから犯人に動機が無くなってきたけど。

鮎川哲也の影響で昭和ミステリを読みたいと思い、目をつけたのが泡坂妻夫と天藤真だった。
泡坂はまず「亜愛一郎シリーズ」を、天藤真は「遠きに目ありて」を読んだ。振り返ればこれが大正解で、作者の短編集の最高傑作といえる代物にいきなり出会えたのだから運がいい。昭和ミステリのち力をまざまざと見せつけられた。

ミステリ界のトピックスとして、島田荘司御大が「御手洗パロディ・サイト事件」を出したのにも触れておこう。
これはプロ・アマ混合の御手洗物の同人作品集を御大が御手洗シリーズの一つとして無理くりまとめ上げたもので、これを普通の出版社が商業作品として出してしまったのだからすごい。こんな試みは空前絶後では?
一方で信じられないほど誤植が多く(もしや同人作品は修正しなかったのか?)胡散臭さも半端なかった。

その他、創元推理文庫からの経由で倉知淳や加納朋子も読み、乱歩の傑作選「江戸川乱歩集」も読んだ。


2001年
タイミングよく天藤真の短編全集の刊行が創元推理文庫で始まった。本当に粒ぞろいなのでぜひ読んで欲しい。
昨年から引き続き泡坂妻夫の短編集をブックオフで買い集めたが、驚異的な高打率でどれもこれも面白かった。
創元推理文庫きっかけで折原一にもはまった。絶対に叙述トリックが使われるという情報を得たのも大きい。
短編ばかり読んでいた泡坂妻夫の長編に手を出したのもこの年。長編でも全く切れ味は衰えていない。
一番最初に読んだ綾辻行人が「どんどん橋、落ちた」を出したのもこの年だった。ある意味でいまだにこれを超える短編集は出ていない。


2002年
メフィスト賞に対抗し(?)光文社がカッパワンを開始。すぐ終わったけども石持浅海と東川篤哉を世に送り出した功績は素晴らしい。
対抗するように(?)講談社は袋とじが必ずある密室本を企画。遊び心は買うがただ値段がつり上がっただけで、袋とじを活かせた作家は皆無だった。
メフィスト賞ではダメミス一歩手前の石崎幸二が自分には刺さった。殊能将之が一気に評価を高めたのもこの頃か。すぐ実質的に断筆してしまったが。
後に戦争小説で名を博す古処誠二や黒田研二もデビューしたが、なんといっても舞城王太郎の存在が際立つ。清涼院流水のようなキワモノかと思ったらあれよあれよと文学界を席巻してしまった。
また文藝春秋が高級そうな装丁の本格ミステリ・マスターズを開始。第一弾として島田荘司「魔神の遊戯」が出版された。なんやかやでこのレーベルは優れた本格ミステリを多数輩出したと思う。
この頃に鮎川哲也賞や、このミス・文春ランキングの存在を認識しただろうか。
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1999年のミステリ遍歴

2021年09月12日 | 雑文
森博嗣との出会いが自分の運命を変えたと言ったが、それは2つのキーワードが関わっている。
メフィスト賞と講談社ノベルスだ。
森博嗣のデビュー作「すべてがFになる」は記念すべき第1回メフィスト賞の受賞作で、講談社ノベルスから出版された。森博嗣にがっちり心をつかまれ、メフィスト賞と講談社ノベルス作品にはまっていった。
そして当然アレに出会ってしまう。清涼院流水だ。

第2回メフィスト賞を制した清涼院流水の「コズミック」とシリーズ第二作「ジョーカー」はすごかった。
ネットの普及し始めで数も多くなかった感想でさえ「一枚ずつちぎって便所に流した」とか「一枚ずつ焼いた」とか書かれており、わくわくしながら読んだらそれも普通に納得するとんでもない内容だった。
しかし不思議な魅力も備えていて、自分はますますメフィスト賞及び講談社ノベルスにはまってしまった。ミステリは何をしてもいいという想像を絶する懐の深さが垣間見られ、新たな世界への扉が開いた。

新本格派の法月綸太郎、芦辺拓、麻耶雄嵩もこのあたりで読みだした。そしていいタイミングでとある傑作選が出版された。
鮎川哲也「五つの時計」と「下り、はつかり」だ。
島田荘司曰く「江戸川乱歩亡き後に本格ミステリを一人で守った鮎川哲也」である。今見ればオーバー過ぎる表現なのだが、それで名前を知りいつか鮎川哲也も読みたいと思っていたところに傑作選(それもお求めやすい文庫で)の出版である。これがもうすごかった。簡潔な記述とシンプルなトリックで作り出された不可能状況や密室の数々にメロメロになった。
すでに百冊以上のミステリを読んできて「パターンわかってきたよ!」と厚切りジェイソンみたいに思っていたところにこれである。パターンなんて無かった。ミステリの裾野はお前が測り知れるものではないと思い知らされた。こんな傑作がごろごろしているなら昭和ミステリも読まなければと強く感じた。

この頃から通い始めたブックオフで島田荘司の旧作を買いあさる一方、もう一つの出会いがメフィスト賞・講談社ノベルス方面からもたらされた。京極夏彦だ。
あの妖怪が描かれたおどろおどろしいクソ分厚い本はどうやらミステリらしいという情報を得て、思い切って買った。その後はもう説明不要だろう。あの頃、京極夏彦は紛れもなく全作家の頂点に立っていた。

この年は新本格派の作品を中心に読んだ。講談社ノベルスを手当たり次第に読んだので蘇部健一「六枚のとんかつ」や霧舎巧「ドッペルゲンガー宮」とかにもぶつかった。清涼院流水はカーニバルシリーズを完結させた。あれもあれでとんでもないのに、長すぎて(?)コズミック・ジョーカーほど評価も知名度も無いのは残念である。
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ミステリ遍歴 序文

2021年09月11日 | 雑文
昨年、自分が三国志にはまっていった経緯を書いたので、今度は本格ミステリにはまった経緯を書いて行こう。
ミステリ初心者には参考になるかも知れない。またミステリ界のトピックスも覚えているものは記す。

初めて読んだ本格ミステリは、綾辻行人「迷路館の殺人」である。
本屋で初心者向けっぽいものを適当に見繕ったのだが、これが館シリーズ三作目で、しかもシリーズファンに向けたあるトリックが仕掛けられており「シリーズ物は順番に読むべし」という鉄則が心に刻まれたのは、いま振り返れば幸いである。
そして本作のメイントリックがアレだったことで、アレ系トリックが大好物になるきっかけでもあった。ヒヨコが孵化して最初に見たものを親と思い込むのと同じ原理だ。

その後は当然、館シリーズを一作目から読んでいった。(当時は6作目まで出ていた)
そして(たぶん)島田荘司の解説から作者の綾辻行人が「新本格派」と呼ばれるグループに含まれていることを知り、新本格派の作品を読んでいくことになる。
まず読んだのはゲーム「かまいたちの夜」の作者でもある我孫子武丸の「8の殺人」だ。速水三兄妹シリーズ(3作で終了)の他2作も読んだ。
有栖川有栖の国名シリーズも読んだ。初めて触れた短編集はこれだったと思う。4作目まで出ていた。

そして次に出会った作品が運命を変える。森博嗣の「S&Mシリーズ」である。
おしゃれな装丁と理系ミステリという魅力的なワード。これまで読んできたガチガチの本格ミステリとはちょっと違う雰囲気に惹かれ、現在進行系で作品を出し続けている新人作家も読みたいという欲求が噛み合った。
当時の森博嗣は2ヶ月おきに新作を出す超人的ペースで、しかもどれも質が高かった。現代ならキャラ萌えとでも言うのだろう、人物造型の面白さと、何よりまだ評価の定着していない、旬の作品を読んでいるという感覚も楽しかった。
また後年にミステリに素養のない姉に勧めたが見事にはまってくれたし、森博嗣は初心者向けの可能性が高い。

新本格派も読み進める。とっつきやすいシリーズ物から手を出し、歌野晶午の家シリーズ(3作で終了)や二階堂黎人の蘭子シリーズを読んだ。山口雅也の「生ける屍の死」がちょうどこの頃(1997年)に本格ミステリ・ベスト100で1位に選ばれたのを書店で知って読んだのも覚えている。
西澤保彦が革新的なSFミステリを連続で出していたのもこの頃だ。今となってはだいぶ知名度が下がってしまったし、SFミステリ自体を書かなくなってしまったが、あれは必読である。近年「SFとミステリは共存できるか?」とか議論するスレが立つも西澤を読んでる奴が一人もいなくておじさんは悲しい。

島田荘司を読み始めたのもこの頃だ。綾辻ら新本格派の師匠格と聞き、御手洗潔シリーズを中心に読んだ。
ものすごい数の作品がすでに出ていたがどれもこれも面白かった。島田荘司は今や「ゴッド・オブ・ミステリ」とまで呼ばれている。視覚的にわかりやすいトリックも多く、御手洗のキャラも魅力的でとっつきやすいので初心者向けでもあるだろう。

長くなってきたので今後は時系列で書いていく。
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