小金沢ライブラリー

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ゲーム感想-『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』

2024年07月17日 | ゲーム
~あらすじ~
本所七不思議の呪いを受けた、どうしても蘇らせたい人がいる9人の男女。
呪殺で魂を集め、蘇りの秘術を果たすため壮絶な騙し合いが始まる。


~感想~
高評価と友人からのイチオシを受けてようやくクリア。これはとんでもないものを見せてもらった。
TL上に何度も流れてきた本作を象徴する呪殺バトルこそ序盤だけで終わってしまったが、本題はそこから先。終始ほのめかされるある趣向が肝で、今までに類例の少ない、ゲームならではの大仕掛けが現れる。何もかもネタバレなので詳しく言えないがあまりの完成度に感心したことだけは付記する。
また見どころはそれだけではなく、実在する本所七不思議を完璧なまでに物語の中に取り込んでしかも昇華させているのがとんでもない。これだけでも大いに称賛されるべきなのに、脇を固めるキャラや会話も軽妙で楽しく、ゲームとしての面白さにも化けさせているのだからすさまじい手腕である。

欲を言えば最高に楽しかった呪殺バトルをもっとやりたかったし、何度かある設問を一発回答すればなんらかの報奨があっても良かった。(※ただの自慢だが最後の根付の問題以外は全問正解した)
プレイ時間は自分調べで8時間弱と決して長くないが、セール中で1180円と単行本より安く、いわゆるコスパも十分。
ミステリ・ホラー・七不思議・サウンドノベルといったジャンルに興味があればぜひやって欲しい傑作である。


24.6.29
評価:★★★★☆ 9
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ミステリ感想-『恋都の狐さん』北夏輝

2024年07月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
恋愛経験ゼロの私が古都奈良で出会った狐面の男。
彼に会ったその日から古都は恋都に変わってしまった。

2012年メフィスト賞

~感想~
自分にとって1ページたりとも面白い場面がなかった。直近2/3でこんなの引き当ててしまって悲しい。
何が面白くないってマジで何も起きないのだ。奈良の観光案内を除けば内容は完全なる無である。
何も起きないと言っても何かしら起こっているでしょうと思うだろうがマッジで何も起きないまま一冊が終わる。いやいやいくらなんでもメフィスト賞を取ってるんだからそんなわけがないと思われるだろうが、物語にマッッジで一切の起伏がない。平面である。尖ってないという意味では球体である。この世に存在しないはずの真球はここにあった。
もちろん仮にも一冊の本なので何も起きないわけではなく、「底が見えないほど深い池に数分沈んでしまい酒をお供えしたらぷかぷか浮いてきたけど膝にかすり傷を負っただけ」とかいう一切の理解を拒絶する事件が起こったりはする。起こるなそんな意味不明の事件。
会話も全く面白くなく、狐の理屈っぽい話は全部が全部どこかで聞いたことある内容に過ぎず、ヒロインのツッコミもいたって普通。そして狐が常に狐面を着けている理由、恋人ではない女が狐の世話を焼く理由などは作中で解かれるものの、試しに2~3考えてみるといいが、必ずその中に正解があると断言できるほどありきたりだった。
最後のヒロインの選択だけはちょっと珍しいがそれも「まず人の話を聞けコノヤロー!!」と罵りたくなる選択で、しかも続編が2冊出ていることからもやんぬるかなである。
メフィスト賞は編集者が一人でも気に入れば出版できると言われているが、きっとその該当作なんだろうなというのが偽らざる本音である。


24.7.13
評価:なし 0
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ミステリ感想-『明智恭介の奔走』今村昌弘

2024年07月09日 | ミステリ感想
~あらすじ~
もう一人の泥棒に襲われたと主張する泥棒。オンボロビルを高値で買い取った謎の男。二日酔いから目覚めると密室の自宅で引き裂かれていた自分の下着。全く無意味だが不可能状況の試験問題漏洩事件。一見無差別にばらまかれるストーカーの手紙。
それは「屍人荘の殺人」で剣崎比留子に出会う前、葉村譲と明智恭介の事件。


~感想~
ドラマ原作の「ネメシス」は未読だが、短編でもその切れ味は健在どころかますます研ぎ澄まされ、たった一冊で短編ミステリの名手であることも証明してみせた。
冒頭の「最初でも最後でもない事件」からロジックとストーリー展開の上手さはもちろんのこと、「屍人荘の殺人」では尺と物語の都合でそこまで顕著ではなかった明智恭介のポンコツさが全開で、迷探偵ものとしても読めてしまう懐の広さをいきなり見せつける。

続く「とある日常の謎について」が個人的には白眉で、まさかやり尽くされたと思われたアレがこんな形で現れるとは夢にも思わなかった。アレに挑んだ作家は山ほどいるがこの切り口でやってのけるとは! ミステリマニア垂涎にして必読である。

「泥酔肌着引き裂き事件」はミステリ名物といえばそれまでだがあまりにも都合よくピンポイントで重大な手掛かりを忘れているのはともかくとして、話自体は面白く、「宗教学試験問題漏洩事件」は二転三転しつつひょっこり思いも寄らない大仕掛けが飛び出してくるのが楽しい。

そして末尾の書き下ろし「手紙ばら撒きハイツ事件」は時系列では最も古い、葉村と出会う前の話でちょっとごちゃつきすぎた感はあるものの、前日譚としてはこの上ない仕上がりで、掉尾を飾るに相応しかった。

「屍人荘の殺人」以降のネタバレは無いので、ここから読んでも大丈夫のシリーズ入門編だが、凝った仕掛けや趣向からやはりミステリマニアこそぜひ読んで欲しい一冊である。


24.7.9
評価:★★★★ 8
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非ミステリ感想-『テスカトリポカ』佐藤究

2024年07月05日 | ミステリ感想
~あらすじ~
メキシコと日本のハーフの少年コシモはネグレクトな環境と裏腹に並外れた体格に恵まれる。
麻薬王のバルミロは対立組織に襲われて一人生き残り虎視眈々と復讐を狙う。
元心臓血管外科医の末永はいつか執刀医に戻る日を夢見ながら臓器密売に携わる。
三人の運命が交差し、テスカトリポカ(煙を吐く鏡)は生贄を求める。

2021年直木賞・山本周五郎賞・このミス2位・文春2位


~感想~
自分にとって1ページたりとも面白い場面がなかった。
バルミロの信奉するアステカ文明の逸話が主題として何度も描かれるが「こんな野蛮なクソ文明は滅ぼされて当然だろ常識的に考えて…」としか思えない世界残酷物語で、読むだに胸が悪くなるばかり。
アステカだけではなく現代の登場人物も揃いも揃ってクソ野郎ばかりでとうてい肩入れできず、いったい何をどう楽しめばいいのかすらわからない。
ミステリ的にも評価されたがミステリ的側面がそもそも存在しない広義のエンタメ=ミステリであり、エンタメだとしてもこの血生臭さはいったいなんなのか。コシモがテスカトリポカの正体(※これもミステリ的なものではなく古代の神の現代的解釈である)に思い当たるやただそれだけであっさり身の振り方を変えてしまうのも自分には意味不明で、末尾に世界残酷物語をまた付け足すのもいったいなんの効果があるか、純文学というものが大嫌いな自分にはこれまた意味がわからない。アステカ文明の胸糞悪くなるだけの設定資料を最後まで延々と読まされて「ともあれアステカ滅ぶべし」という念を強くしただけである。
中盤の少年が絶対知る由もない事実をなぜか知っているというミステリっぽい展開も一切の説明がつかず「なんかそういう勘」で済まされたのも酷かったな…。
総じて「ノックス・マシン」や「独白するユニバーサル横メルカトル」の系譜に連なる「このミス上位につられて手を出した初心者が読書嫌いになること請け合い」の一冊だった。


24.7.5
評価:なし 0
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今週のキン肉マン #456 勝手知ったる男!!

2024年06月24日 | 今週のキン肉マン
・シルバーマンのパーフェクトディフェンダーに無反応
・ネメシスにとってはサイコマンではなくグリムリパー
・ザ・マンの前で新たな同志とスパーリングを山ほどこなせるのも幸せなのに
・始祖達との日々と比べてしまい癒やされることはなかったのか
・始祖ほど気の良い奴あんまりいないからな無量大数軍
・ロビンとラーメンマンを退けたネメシスの試合巧者ぶり
・スカル・ボーズにそんなテクニシャンの印象ないんだけどww
・あいつ反則大王だったろ
・ここで早くも1億パワーと明かす
・ネメシス6800万もあるからマリポーサほどの差はない
・8000万バッファローマンに1000万グリムリパーがビビった(演技した)時ほどの差はないがどうなるか
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コガトナ2024目安箱

2024年06月23日 | お笑い
コガトナ2024 について何か質問等ありましたらコメントまでどうぞ!
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ミステリ感想-『黒牢城』米澤穂信

2024年06月22日 | ミステリ感想
~あらすじ~
摂津国を治める荒木村重は突如として織田信長に反旗を翻し、説得に来た黒田官兵衛を幽閉すると有岡城に籠城した。
信長の包囲網が迫る中、城内では不審な事件が次々と起こり、対処に困った村重は、官兵衛に推理を求める。

2021年直木賞・本格ミステリ大賞・このミス1位・文春1位・本ミス1位


~感想~
著者初の歴史小説で五冠を制した話題作。飛び抜けた対抗馬の無い年ではあったがそれでもお見事。
まず戦国ファンなら誰でも知ってる黒田官兵衛の幽閉を安楽椅子探偵に仕立て上げてしまったアイデアが秀逸過ぎる。思いつきそうで誰もやらなかった。
短編一つ一つのトリックを取り出して眺めてみれば極めて地味で、これで五冠を制したのはやはり相手に恵まれた感はどうしてもあるのだが、それより歴史小説として見るにつけ、作者の恐ろしいほどの生真面目さが如実に出ているのが際立つ。
ほぼ史実ベースの物語で、登場人物のおそらく全員が実在。使われる用語は並の歴史小説よりも厳密かつ正確に用いられ、むしろこれほど生真面目にちゃんと書かれた歴史小説を他に知らないレベル。恐ろしいことに雑賀下針も千代保も無辺すらも(真偽はともかく)存在していて、しかも作中での描かれ方がほぼ史実ベース。このへん並の作家なら安易にオリキャラを出すところを生真面目すぎる作者はなんと必要なキャラを史実から頑張って探してきてしまう。偉い。すごい。
国民的作家の座に着いたか王手を掛けた米澤穂信と自分ごときを並べて語るのは恐れ多いが、歴史小説の大きな不満として安易にオリキャラを出すことが大嫌いだ。だって探せばいる。絶対いる。三国志で5千人、戦国なら数万人が実在していて、書きたい物語に必要な人間は絶対いる。歴史物にオリキャラは必要ない。それを米澤穂信はわかっているのだ。

本ミス1位を取ってるせいで「本ミス1位取るなら動機はこれで黒幕こいつだろうな」が当たってしまったのと、ラストシーンが戦国ファンならほぼほぼ知ってる事実なのが惜しかったが、文庫版で今さら読んだほうが悪いので些細な瑕疵である。
ただ「黒牢城」の黒田官兵衛と史実で関ヶ原後に長政を叱った官兵衛はたぶん同一線上に存在しないw
しないんだけどこの作者の頭の中にはたぶんそれを繋げる構想がきちんとあるし、いずれ官兵衛主人公でまた書いてくるかもしれないとさえ思えてしまう。
個人的にはミステリとしてそこまで評価はしないものの、歴史小説家としてのあまりにも真摯な姿勢は手放しで称賛したい。ぜひまた書いてくれ。


24.6.22
評価:★★★☆ 7
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今週のキン肉マン #455 サイコマンと瓜二つの男!!

2024年06月17日 | 今週のキン肉マン
・ニャガリャーンwww
・サイコマンの掛け声としては変
・やはりサイコマンではないのか…?
・イヤデス・ハリスンwwwww
・スカル・ボーズだけでもサプライズなのになんでだよwww
・ファナティックの正体とアメリカ編が関係あるのかと読み返したが全くわからなかった
・他の試合場にもアメリカ編のキャラが行くのかな?
・某所で熱望されていたチャボ・ケロリ再登場が全然ありえることに
・スカル・ボーズとハリスンが一緒にいることであの後もアメリカ超人界が統一されたままだとわかる
・サイコマンと言われたら不機嫌になるのもうサイコマンだよ
・ネメシスに首絞めはこれがあるからもう知ってて掛けてる感が
・次回、ネメシスの攻勢よ、続け……!!
・煽りに祈られたらもう負け確じゃん
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ミステリ感想-『明日という過去に』連城三紀彦

2024年06月13日 | ミステリ感想
~あらすじ~
学生時代から20年に渡り親しくしてきた弓絵と綾子。
弓絵の夫の死をきっかけに二人の間の秘密が明らかとなり、書簡を交わしていく。


~感想~
「嘘です」「嘘と言ったのは嘘です」「嘘と言ったのは嘘と言ったのは嘘です」は連城三紀彦おなじみの展開だが、本作はその過去最高というか過去最悪の部類で延々と嘘の応酬が繰り広げられる。
もうなんでもありの様相でたぶん会って話すか殴り合えば5分で全貌がわかる物語を、異常なほど性格の悪い嘘つき二人が本心を隠して相手を騙しとにかくマウントを取ろうとくんずほぐれつするせいで一向に収拾がつかない。ついには「これから嘘を言います」と来てさすがに笑った。
終盤にはもう「あれは嘘だ」と言われるたびに笑いが込み上げ、いいから本当のことを書けこのカスどもが!と罵りたくなること請け合い。いちおうの真相はあるもののもはやどうでもよくなってしまった。
また文庫版解説では「連城三紀彦をミステリー作家と形容するむきもあるようだが、それはこの作者に対して失礼ではあるまいか。単なる犯人探しや謎解きに終始する通俗ミステリーに対し、連城三紀彦の(以下略)」なる今となっては古式ゆかしい90年代ならではのミステリ全般への偏見と強烈なディスまでちょうだいしもう悪い意味でお腹いっぱいである。
相当の連城ファンでも読まなくていいんじゃないかな……。


24.6.13
評価:★☆ 3
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ミステリ感想-『六色の蛹』櫻田智也

2024年06月08日 | ミステリ感想
~あらすじ~
狩猟のさなかに起こった銃殺事件。25年前の未解決事件と驚くほど状況は似ており、被害者は自ら注意喚起していたはずの白いハンカチを提げていて…白が揺れた
季節外れのポインセチアを欲しがった少女。1年後の再会を約束したが現れず…赤の追憶
工事現場から見つかった土器と遺体。学芸員は現場を荒らす不自然な指示を出し…黒いレプリカ
ピアニストの父が遺した楽譜が一枚消えた。話を聞いた魞沢はあることに気づく…青い音
他2編。


~感想~
「蝉かえる」で日本推理作家協会賞と本格ミステリ大賞の二冠を制したシリーズ待望の3作目。
前作は虫をタイトルに織り込みホワットダニット縛りだったが、本作では色がテーマでホワットダニット限定ではない。しかし期待には十二分に応えてくれた。
主人公の魞沢泉(えりさわ・せん)のとぼけっぷりが数倍になっている気はするが、推理力は健在。どころか本作は魞沢の主人公ぶりがえらいことになっており、身体を張った犯人との対決から古畑任三郎ばりの決め打ち、壮大な勘違いなど八面六臂の活躍。そのうえ書き下ろし2編では●●●の悩みまで吐露して見せるのだからたまらない。
あらすじを描けなかったラス前「黄色い山」は冒頭の「白が揺れた」の正統続編であり、完全決着していたはずの物語が再びクローズアップされるとともに新たな謎となんとも言えない真相が浮かび上がる。
優れたミステリ短編であるのみならず、優れた連作短編集でもあり、さらに優れた人間ドラマで、とどめに優れた探偵譚でもある贅沢な一冊であり、あのただでさえ大傑作の「蝉かえる」に続く作品でここまでのクオリティと、これほどの広がりを見せてくれたのには感嘆するばかりである。
量産が利く作風ではないが、櫻田智也もしかしてゆくゆくはとんでもない所まで行ってしまうのではなかろうか。


24.6.8
評価:★★★★☆ 9
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