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ミステリ感想-『彼女のため生まれた』浦賀和宏

2013年11月16日 | ミステリ感想
~あらすじ~
ライターの桑原銀次郎は高校の同級生だった渡部に母を殺された。
犯行後すぐに自殺した渡部の遺書には、高校時代に銀次郎がある少女を暴行した復讐だと記されていた。
身に覚えのない銀次郎は、母の死の真相を探り濡れ衣を晴らすため調査を進めるうち、衝撃の事実にたどり着く。

~感想~
今年の佳作「彼女の血が溶けてゆく」にまさかの続編。前作のネタバレも多数あるので必ず先に読んでおくべし。
SF絡みの作品を多くものしている作者だが、このシリーズではそういった特殊設定は封印し、地に足の着いた地道な調査が描かれる。
だが次から次へと浮かび上がる意外な事実と、丹念に紡がれた銀次郎の心理描写が物語を牽引し、最後まで読者を離さない。
二転三転した末に終着したと思われた事件は、ほんの些細な気づきから崩れ去り、思いも寄らない真相と常軌を逸しすぎな気もする最悪の黒幕を導き出す。

てっきり再登場すると思っていた前作のある人物が全く関わってこなかったり、結末にいたって銀次郎が安藤直樹にすり替わってしまったりと、やや拍子抜けな面もあるにはあるが、その程度は瑕疵とも言えないごく小さな引っ掛かりに過ぎない。
一作きりと思っていた銀次郎の物語に続編が出てしまったからには、もちろん第三作も待ち望みたくなる。ありえないとは思うが、この重厚さで安藤直樹シリーズくらい長くなったら恐ろしいシリーズになりえるのだが。


13.11.15
評価:★★★☆ 7
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