高知の自然・環境

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三嶺の森をまもるみんなの会の活動内容と成果・・・その4

2009-03-18 | 野生の動物
これまでの「みんなの会」の活動内容と成果
                      三嶺の森をまもるみんなの会 代表 依光良三



3.シンポジウムと報告会―普及啓発と情報の公開・共有 (分割1)

どう守る危機に立つ三嶺の森―深刻化するニホンジカ食害(08.1.19)


 短期間に急激に進行する自然林のシカ食害、県民の宝、流域の源「三嶺の森」の

危機を多くの人びとに知ってもらおうと、普及啓発のために計画したのがこのシンポジウムであり、

そして、これを契機に対策のあり方を探ろうとするものでもあった。

三嶺の森が所在している地元香美市において約150人の方々の参加のもとに開催した。


 内容はみんなの会メンバー4人と門脇香美市長を加えた現状の「報告」5点、そして、神奈川県の

丹沢でシカ問題に直面し、対策を行ってきた先行事例に関する「講演」が行われ、引き続き活発な

質疑討論が行われた。

 報告1 金城芳典 「四国東部におけるニホンジカの動態」
 報告2 門脇槇夫 「拡大する被害 香美市の農林業被害から自然林被害へ」
 報告3 公文 照 「急速に進む被害の実態(1)―長年の経験から
 報告4 坂本 彰 「急速に進む被害の実態(2)―調査を通じて」
 報告5 依光良三 「林床の砂漠化と土砂流出問題―危機に陥った物部川の生態環境」
 講演  永田幸志 「丹沢山系のニホンジカ問題と保護管理計画」



蝕まれる三嶺の森と山々―三嶺・剣山地区シカ被害状況公開報告会(08.6.29)


 2007年に林野庁と環境省は、それぞれシカ食害に関する調査の実施を開始した。

われわれ「みんなの会」もグループ単位で調査を行っており、それぞれの調査内容を持ち寄って

共通認識を深めようと、みんなの会が主催者となって呼びかけて、林野庁四国森林管理局、

環境省中国四国地方環境事務所、そして高知県が共催するという形で四国森林管理局において

110名の参加のもと報告会を実施した。


 報告内容は次の4つであった。


 報告1 四国森林管理局
      「緑の回廊剣山(三嶺)地区におけるニホンジカ被害の実態」
 報告2 環境省中国四国地方環境事務所
      「国指定剣山山系鳥獣保護区(三嶺地区)におけるシカの樹皮食い等の実態」 
 報告3 坂本 彰(みんなの会・三嶺を守る会)
      「三嶺周辺のササ植生の変化」
 報告4 石川慎吾(みんなの会・高知大グループ)
      「植生保護柵設置による希少植物種保護・再生効果」



報告会の様子 ▲


 報告会の後、活発な質疑討論が行われた。

全体的には、

(1)さおりが原での糞粒調査の結果、

シカ生息密度がキロ平方メートル当たり約80頭と異常に高かったこと、

(2)2006年からスズタケの衰退が顕著に進行したこと、

(3)三嶺から石立山にかけての稜線部でミヤマクマザサの枯死が目立ち、とくにカヤハゲ、韮生越、中東山等で顕著であり、

これらの稜線部では同時に樹木皮剥ぎ被害も深刻であったこと、

(4)樹種別ではリョウブ、ヒメシャラ、シオジ、ウラジロモミ、キハダ、

コハウチワカエデ、モミ、マユミ等が被害を多く受けていること、

(5)さおりが原の希少種保護を目的とした植生保護柵内では

マネキグサとムカゴツヅリが出現し、保護柵の効果が高いことが

確認されたこと、などが共通認識としてえられた。






三嶺の森をまもるみんなの会のホームページより分割転載



三嶺の森をまもるみんなの会のホームページより

今、県下最大の貴重な自然林、「三嶺」の森は、シカの食害によって、傷つき痛んでいます。特に、稜線部の笹と樹木の7割までが被害に遭い、枯死する樹木も増加の一途をたどっています。このまま放置しておけば、貴重な自然植生がますます失われるばかりではなく、山林崩壊、土砂流出等の危険性が高まります。
 そこで、危機感を抱き、保護と再生を目指すNGO、NPOが結集して、2007年8月に「三嶺の森をまもるみんなの会」を設立しました。県民のみなさまにこの問題をできるだけ広く知っていただくために、行政とも協力して、シンポジウムや樹木へのネット巻き等を行い、少しでもこの大切な自然を守りたいと活動しています。



三嶺の森をまもるみんなの会 代表 依光良三  さんの記事

三嶺の森をまもるみんなの会の活動内容と成果・・・その3

2009-03-18 | 野生の動物
これまでの「みんなの会」の活動内容と成果
                      三嶺の森をまもるみんなの会 代表 依光良三


2.ラス巻き~普及啓発と稜線部重視へ
樹木の剥皮被害も深刻になったため、それを防ぐため樹に防護ネットを巻く「ラス巻き」もたびたび実施してきた。2007年11月、四国森林管理局からの申し出により、共催によってさおりが原で実施したのが最初である(参加者86名)。以降、2008年には5回にわたり実施した。

ネットワークに加えて一般公募のボランティアはもとより、小・中学生、高校生を対象とした環境教育を付加したもの、そして、護るべき樹林帯や特定の樹木(オオヤマレンゲ等)を対象とした保護活動を展開してきた。資材は四国森林管理局・高知中部森林管理署が準備し、企画・計画と作業の多くをみんなの会・ボランティアが担った。



▲白髪山山頂~白髪分岐の稜線部でのラス巻き(08.10.15)
 
白髪山(標高1770m)の南麓のササは未だ被害があまり広がっていな いが、頂上から白髪分岐に至る稜線部で樹皮剥ぎ被害が進行していることから、ボランティアの手で資材を運び上げ、ウラジロモミを中心とする樹木にラス巻きを実施した。

この稜線部は、枯死した場合、崩壊・土石流の起点になりかねないところであり、流域環境保全の視点からも重要なところである。



自然観察とラス巻き体験を組み合わせた環境教育的行事

 さおりが原ならびに交通アクセスに恵まれる白髪山登山口駐車場からみやびの丘にかけての地域で児童、生徒対象の行事を実施した。

駐車場南面の森林は06年にはほとんど被害が見られなかったが、07年に至って林内のササとナナカマドを中心とする樹木被害が急速に広がってきたところである。



▲被害木の観察・体験をする児童
(左:さおりが原)/(右:みやびの丘)



▲ 被害状況と問題点の説明を受ける高校生
(みやびの丘 08.10.4)

みやびの丘に至る道中では「ネイチャーゲーム」を行い、丘ではシカの食害と森・川・海のつながりにおいて、流域に与える影響等について写真を交えて解説が行われた。参加者は高知農業高校の生徒と地元の大栃小学校の児童で、午後からはラス巻き体験が行われた。ここではナナカマドの被害が特にひどく、大半の樹皮が剥がれていた。
 

この他、ネットワークメンバーの「(社)高知県森と緑の会」の主催で大栃中学校と徳島県の木頭中学校の生徒を対象に高知-徳島交流「阿佐っ子水源の森シカの食害対策活動」が同地で行われ、みんなの会のスタッフが全面的に協力を行った(08.11.11)。

(次回に続く)



三嶺の森をまもるみんなの会のホームページより分割転載



三嶺の森をまもるみんなの会のホームページより

今、県下最大の貴重な自然林、「三嶺」の森は、シカの食害によって、傷つき痛んでいます。特に、稜線部の笹と樹木の7割までが被害に遭い、枯死する樹木も増加の一途をたどっています。このまま放置しておけば、貴重な自然植生がますます失われるばかりではなく、山林崩壊、土砂流出等の危険性が高まります。
 そこで、危機感を抱き、保護と再生を目指すNGO、NPOが結集して、2007年8月に「三嶺の森をまもるみんなの会」を設立しました。県民のみなさまにこの問題をできるだけ広く知っていただくために、行政とも協力して、シンポジウムや樹木へのネット巻き等を行い、少しでもこの大切な自然を守りたいと活動しています。



三嶺の森をまもるみんなの会 代表 依光良三  さんの記事