「世に痴者二つあり その一は神を祈らざる人なり その一は事を行わざる人なり」。
これは、江戸末期の国学者・鈴木重胤のことばです。
神があって自分があることを知れば、神のありがたさを知らないとは言えないはずです。
ここでいう神とは、神道でいう人を生かし成す力です。
天の光、地の恵み、人々の「おかげ」等々、神道では、ありがたい存在を「神さま」として崇めます。
自然の神であり、祖先の神といえましょう。
神さまの「ありがたさ」を知れば、自然に神に祈り、感謝の心をささげるようになるのです。
重胤は、それをしない人間は一番の「愚者」と説いています。
さらに、為すべき義務を、それを知っていながら行わないのは、第二の「愚者」であるとも説いています、
人には自己の立場、社会的地位というものがあります。
自分はそれらのどこに立っており、何を為すべき立場に立たされているかを、事あるごとに自分に問い掛ける――。
そんな自覚を、促したことばといえましょう。