先日、ある方から、お祭りの露店で安い時計を求めた時のお話を伺いました。
その時計は買った翌日に壊れてしまったので、御店に戻って事情を話したそうです。すると御店の方は丁重に謝罪をし、もちろん新しいものと交換してくれたそうです。
「数日間はここで商売をしているのでまた何かあったら来てください」、という言葉に、露天商に好感をもった、と、その方は仰っていました。
神道では、「陰陽の合するところ物生ず」と説きます。
これは「創造の原理」とも考えられます。
売り手を陽とし、買い手を陰とすれば、両者の思いが合するところに商いは成立する、ということになりましょう。
取引は一見、物であるように見えるが、実は思い乃至は心なのです。
売り手は買い手の心を、買い手は売り手の思いを察知し、その和の上に本当の商いが成り立っていくわけで、相手方から少しでも金銭を巻き上げよう、などという発想では、真の取引はできません。
陰陽の和するところに創造の根源があることは、商いのみではありません。これは、人間生活、社会生活全般に通ずる理でもあるのです。