内的自己対話-川の畔のささめごと

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揺るぎなき祖国愛と論理的徹底性の起源として父性 ― カヴァイエス伝から

2013-12-25 23:30:23 | 読游摘録

 昨日の続きで、カヴァイエス家のトゥールーズ時代。当時、ジャン・カヴァイエスの父親は、部隊の指揮官としての任務に全力を尽くしていた。以下、ガブリエルの『カヴァイエス伝』の和訳(一部省略・簡略化)である。時はなお1909年、ガブリエル9歳、ジャン6歳。

 母は、あなたたちの父親は自分の部隊の厳しい演習の帰路、部隊と行を共にしながら、冷たい雨が肩を濡らしているのも忘れて、隊員たち全員の気持ちを気遣っているのよと、私たち子こどもによく語って聞かせた。その頃、輝かしい前途を約束された父はとても陽気で、そのことが家族全員を幸福にしていた。とても柔軟な体を持った父は、まるでネコのように、両足を揃えたまま、床から子どもたちの勉強部屋の机の上に飛び乗って見せ、私たちを大喜びさせたものであった。子どもたちと遊ぶのに時を惜しむことなく、私たちが大人たちの会食に同席することを許された晩は、決まって父が微睡みかけた私たちを肩に乗せ、ベッドまで運んでくれた。

 ジャンがまず祖国を愛することを学んだのは父のもとでだった。私は今もなお、革命記念日の7月14日の閲兵式で、父が愛馬ファキールに跨がり、自分の部隊の先頭に毅然と立つ姿を見つめている小さな私たちをまざまざと思い出す。父は私たちの誇りであり、私たちがそれほどまでに愛しているのが、父なのかフランスなのか、まだよくわからなかった。

Gabrielle Ferrières, Jean Cavaillès Un philosophe dans la guerre 1903-1944, p. 34.

 この一節を読みながら、ジャン・カヴァイエスにおいて、若き数理哲学者として徹底して論理的に考え抜く堅忍不抜さと、祖国フランスのために命を賭して戦うことを自明のこととして一瞬も躊躇うことがなかった雄々しさとが、なぜ矛盾することなく生きられたかの、少なくともその大きな理由の一つが、この幼少期に刻印された父親像にあるのではないかと思った。


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