内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

コロナ禍が誘因と考えられる書籍購入熱

2021-12-29 23:59:59 | 読游摘録

 今年も今日を含めてあと三日を残すばかりとなりましたね。今年もコロナ禍に明け暮れた一年となってしまいました。職場では、新学年度が始まった九月一日以降、建物内でのマスク着用義務以外には特段の制約もなく、前期の授業はすべて滞りなく行われましたし、日常生活においても、オミクロン株のここ数日の爆発的な感染拡大以前は比較的平穏な日々が続いていました。しかし、現在の世界的な感染状況からして、年明けからしばらくはまたしても予断を許さない日々が続くのでしょうね。
 日課のジョギングと週に二、三回の買い物を除けば、ほぼ「引きこもり」状態を満喫しているこの冬休みです。それでも、読みたい本がありすぎて、時間が足りないくらいで困っております。これは青年時に罹患して以来の根治不能な慢性疾患のようなものですが、あれこれの異なった分野の本が同時に気になったり、ある本の一節に言及されている他の本がすぐに読みたくなったりして、一冊の本を集中して読むことができません。この呪わしくもある病的傾向に電子書籍が拍車をかけています。なにしろ気になる本がそれこそ数秒で入手できてしまうのですから、この便利さに抗うことは私のように精神が病弱な者にはとてもむずかしいことなのです。
 例えば、「症状」はこんな具合です。今日、角川ソフィア文庫今月新刊の一冊『三酔人経綸問答』の現代語訳者先崎彰容氏による見事な「解説」を感嘆しつつ読んでいたら、その終わりの方に高坂正堯の『国際政治』(中公新書 改版再版2018年 初版1966年)からの引用が出てくる。その引用箇所を確認すべく、同書の電子書籍版を即購入する。すぐに当該箇所は見つかったが、同書の終章最終節の「絶望と希望」が気になり、そこを読む。その節にチェーホフの『往診中の一事件』という短編が引用されている。これも確認せねばと、『かわいい女・犬を連れた奥さん』(新潮文庫 小笠原豊樹訳 1970年)の電子書籍版(2016年)を購入。ついでに(これが曲者なのです)、チェーホフ短編集の仏訳を数冊まとめて買う。高坂書の同箇所には、アメリカの外交官・政治学者・歴史家のジョージ・ケナンはチェーホフを深く愛し、特に上掲の短編を好んだとある。そのケナンの『外交五十年』(American Diplomacy, The University of Chicago, 1951, 1979)も参照すべく、電子書籍版を購入。確かにチェーホフへの言及が一箇所あり、上掲の短編を念頭に置いて書かれていることがわかる。これでようやく一段落です。やれやれ。
 これらの熱に浮かされたかのような連鎖購入は一時間足らずの間の出来事なのです。ちょっと、いや、かなり、症状が深刻化しているなあという自覚はあります。ひょっとすると、これもコロナ禍が誘因になっているのかも知れませんね。


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