内的自己対話-川の畔のささめごと

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『集と断片 類聚と編纂の日本文化』

2014-09-27 18:26:55 | 読游摘録

 今日、国文学研究資料館・コレージュ・ド・フランス日本学高等研究所編『集と断片 類聚と編纂の日本文化』(勉誠出版、二〇一四年)が同研究所から届いた。これは二〇一〇年年から二〇一二年までに、それぞれ早稲田大学、コレージュ・ド・フランス、慶応大学で開催された三回のシンポジウムの際の発表原稿をまとめた論文集である。数日前に、同研究所から、二〇一一年のコレージュ・ド・フランスでのシンポジウムにディスカッサントとして参加してくれたお礼として一本献上したいから住所を教えてくれと連絡があった。
 随分立派な装丁の本で、頁数は四百頁あまり。値段も八千円とお高い。一般の読者が購入するとはあまり思えないが、中身はなかなか多様かつ興味深い。計二十一の論文が収録されており、古代から近代まで、さまざまな時代の作品が〈集〉と〈断片〉という一貫したテーマの下に取り上げられている。帯のコピーは「連環する日本文化のかたち」、紹介文は以下の通り。

『萬葉集』をはじめ、日本の古典籍には「――集」という標題をもつ書物が大量にある。短い作品や断片(Fragment)を集成し、一つの著作や集(Collection)にまとめる手法は、日本文化の特筆すべき編成原理であるといえる。この類聚・編纂という行為は、一方では知を切り出し断片化していくことと表裏を為す。すなわち「断片」と「集」の相互連関が新たな知の体系を不断に創り出していくのである。古代から近代にわたる知の再生産の営みに着目し、日本文化の特質を炙り出す。

 私は木戸雄一氏の「百科思想の翻訳と転換 ― 西周『百学連環』における専門化と体系化 ―」というご発表のディスカッサントを務めさせていただいた。西周の言葉によれば「普通学」という、いわばすべての学問にかかわる基礎的方法の学として、「歴史」「地理学」「文学(文章学)」「数学」が挙げられており、その語の使用法が今日の一般的な用法とは大きく異なっているのが特に印象に残った。当日は時間の制約もあり、三つ質問してそれについて簡単なやりとりをしただけだったが、発表者とは事前に送っていただいた原稿についてメールでのやりとりである程度意見交換はしてあったので、それなりに発表者の意図をさらに明確にするような役割は果たせたのではないかと思う。
 シンポジウム初日の発表後の立食パーティーがコレージュ・ド・フランスの最上階ホールで開かれたのであるが、そこからのパリの眺めは絶景であった。












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